大崎善生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シリーズ第2巻。
この著者の心の機微を言葉で表現する形が独特で、しかも、たのしいうれしいとかよりも、寂しい、苦しい、辛いっていうのをなんとも言えない言葉で表現しながら進む物語。
ネジを限界までネジあげた後にさらに巻くような、ギリギリとしたこころの感触。そんな言い回しが、主人公の気持ちが痛いほど伝わる。
こう、読んでてこころの奥底が
ぎり、ギリギリ、、ギリ、、、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、
と、ネジを巻かれすぎてしまうようななんとも言えない気持ちにさせられるんだけど、限界の中から気持ちのいい世界が垣間見える、少しの幸せがものすごい幸せに感じる、そんな小さな小さな幸せを一粒一粒丁寧に拾いながら1日を生きる主人公に寄り添いたくなるようなそんな一冊です。
不思議。
ようやくすると、最愛の彼女が病気で死ぬんだけど、なんとも言えない描写で描かれていて、少しづつ少しずつ、読みながら受け入れられるようになって、主人公と一緒に幸せを拾い集めて行くようなそんな本でした!
うまい! -
Posted by ブクログ
「聖の青春」も「将棋の子」も、深く心にしみる哀切な傑作だ。しかしまあ、作者の大崎善生さんがこういう人だったとは知らなかったよ。今頃言うのもなんですが。
先崎学さんのエッセイにチラチラ登場するので、酒飲みであることは知っていた。昨今では世間でも将棋界隈でも珍しくなった、無頼系の方であることも。それにしても、この「昭和のおっさん」ぶりはどうよ。コラコラと思いつつ(主に女性への感覚)、妙な懐かしさがあったりして(濃くて熱い人間関係とか)。
将棋界周辺の人々の話って、どうしてこんなに面白いのだろう。私は何を読んでも全然飽きない。将棋は指さないし、皆目わからないのになあ。アクの固まりみたいで数々の伝説を残した大山康晴や升田幸三、非業の死を遂げた森安秀光など、在りし日の姿が紙上によみがえってくるようだ。
現役棋士では、作者の長年の友人である森信雄七段にまつわる話が、抜群に面白い。作者は森七段を「村山聖九段のパンツを洗った師匠です」と人に紹介するそうだが、他の弟子たちのエピソードにも、笑ったり驚いたりホロッとくるものがいろいろある。好きな棋士の一人である山崎隆之八段が、中学生だった内弟子時代、あまりにつらくて水の入ってない浴槽の中で泣いていたとあって、そうかあ…としみじみしてしまった。 -
Posted by ブクログ
大崎善生のノンフィクション?
と思って、手に取った。
名古屋闇サイト殺人事件の被害者である、磯谷利恵さんの人生が、この中では記されている。
名を遺すという意味で、不思議な感触を持つ一冊だった。
あとがきでは「書かれたくないであろう人の人生を書いてしまったことに、ひきつるような後悔の念がなくはない。しかしそれでもやはり、磯谷利恵さんの人生は書き残しておくべき意義のあるものだという強い思いは変わらない」と述べている。
大崎善生はなぜ、この事件を取り上げたんだろう。
「囲碁」という言葉が契機となったのだと。
そうでなければ、さまざまの残酷な事件と同列に整理されていたかもしれない、ともあった。
そうなのだ。
私が感じた不思議な感触は、どうして、この事件を作品として遺したのだろう、ということだった。
そして、言い方は上手くないかもしれないけれど、大崎善生にとっては「自分だけの物語」になったのかな、と思う。
彼女にどんどんと近付いて、同化していく。
どんどんと生きていき、もう一度終わりを迎える。
ここまでレビューしておいて、まとめの言葉を見つけ出せない。
物語とは違って、結末には何の余白もないから。
ただ、事実があって、亡くなってしまった人と、生きている人がいる今を過ごしている。 -
Posted by ブクログ
途中、先輩のエピソードのところでありきたりな展開にうんざりして読むのを中断していたけど、もったいないので読み続けた。最後は一気に読み進められた。
大崎さんの小説を読んでいると、生活のそこここで感じる小さな輝きを繊細に文字にして集めたような、小さいけど気の利いた贈り物のような趣を感じる。
諦めずに読んでよかった。
「生きることの意味」が穏やかな筆致ながらも結構突き詰めて綴られているので、人生を投げ出したくなっている人が読むとかなりしんどいのでは。
この物語の主人公には、挫折しそうな出来事が何度も起こっているのだけど、その時々の心情が丁寧に描かれているので、感情移入してしまって辛くなる。
でも諦めずに読み続けてよかった。