山本博文のレビュー一覧
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日本史に関する教科書を始めとする資料をどう受け止めるべきか、ということに加え、120ページ程でヤマト朝廷から日露戦争まで、著者の視点での日本史の流れが書かれていた。
新書120ページ程度の分量で日本史の流れが書かれたものを読んだのは初めてで、その全体を一度に読み切ることももちろん初めてで、初めて日本史の全体像が実感を持って頭の中に入ってきた気がする。
著者の記載に当たっての姿勢も、どっちつかずだと言う人もいるかもしれないけれど、自分にとっては好ましい。
ページの制限や狙いにもよるのだろうけれど、もう少し解像度高く説明されていれば、と物足りなく思うところがいくつもあった。
200803 -
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ネタバレ名著。
「日本の学校で宗教教育がない。それでは道徳教育はどうやって授けるのですか」。この質問に答えるべく書かれたのが本書だ。新渡戸稲造は、自分の正邪善悪の観念を形作る様々な要素を分析し、それらの観念は「武士道」に基づくものだと気がついた。
武士道には源泉がある。
・仏教
・神道
・儒学
いわゆる宗教であるとか、孟子・孔子の教えに連なる部分がおおいことが説明される。
そして、武士道を分解していくと、以下の項目に分けられる。
・義
・勇気
・仁
・礼
・信と誠
・名誉
・忠義
生命は主君につかえるための手段として考えられ、理想的ありかたは名誉におかれていた。
また武士において特筆すべきは、切腹と敵討ちだ。これの文化は海外においては説明を要する風習である。
現在、武士道というものは実用性を失っている。しかし、完全に滅びたわけではなく、この後の世界にも残っていくだろう。 -
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山本博文(1957~2020年)氏は、日本近世史専攻の歴史学者。日本エッセイスト・クラブ賞受賞(1992年)を受賞した「江戸お留守居役の日記」ほか、江戸時代の大名や武士をめぐる著書多数。2020年3月に63歳で逝去。
本書はタイトル通り、江戸時代初期から明治時代にかけて綴られた、「武士道」に関わる名著12冊について、紹介したものである。
そもそも「武士道」とは何か。。。それを広く世界に知らしめたのは、本書の最後にも取り上げられている、新渡戸稲造が明治時代に著し、世界的なベストセラーになった『武士道』であり、今日の日本においても、武士道のことを知ろうとすれば、まずこれを手に取る人が多いであろう。そして、新渡戸は、『武士道』を書いた理由の一つとして、ベルギーの著名な法学者であるド・ラブレーから「宗教教育がない日本で、どうやって道徳教育が授けられるのか?」と問われて即答できず、武士道こそが自分に道徳の観念を吹き込んでくれた教育精神であったことを示すためであったと言っている。
武士が発生したのは平安時代中期であるが、武士階級の中には特有の倫理観が育まれ、源平の争乱を経た鎌倉武士に至り、それは概ね完成したという。その後、南北朝の内乱、室町時代、戦国時代にかけては、武士はあくまで武力に優れた者であったが、江戸時代になると、武士は支配階級として政治に関わるようになり、それにふさわしい道徳も必要とされるようになった。それが、武士に求められた厳しい道徳律としての「武士道」である。
本書に取り上げられているのは、①武士の思想的な裏付けを持つ逸話集で、「武士道」という言葉で武士のあるべき行動を規範化した最も早い文献のひとつといわれる、軍学者・小幡景憲の『甲陽軍鑑』、②武士が身に付けるべき技能を解説した兵法書である、徳川秀忠・家光の兵法指南となった柳生宗矩の『兵法花伝書』と、③宮本武蔵の『五輪書』、④儒学の研究に基づいて武士の役割を述べた、儒学者・山鹿素行の『山鹿語類』、➄赤穂浪士のひとり・堀部安兵衛武庸の『堀部武庸筆記』、⑥「武士道と云は、死ぬ事と見付たり」という一文があまりに有名な、佐賀藩士・山本常朝の『葉隠』、➆「正徳の治」を行った新井白石の自叙伝『折たく柴の記』、⑧信州松代藩家老の恩田木工の言行を記録した『日暮硯』、➈儒学的武士道の完成された姿を示す、儒学者・佐藤一斎の『言志四録』、⑩幕末の激動の中で、その思想を書き留めた代表的な書物、吉田松陰の『留魂録』、⑪幕末の政争に勝って倒幕を実現し、明治新政府を樹立した最大の功労者のひとり・西郷隆盛の『西郷南洲遺訓』、⑫世界に「武士道」を伝えた、新渡戸稲造の『武士道』と、幅広い視点から選ばれており、いずれにも「武士たちの内面に刻み込まれ、強い行動規範として彼らを拘束した」思想が感じられる。
新渡戸が「日本の精神教育」といった「武士道」を理解するための一助となる一冊と思う。
(2020年4月了) -
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赤穂事件は同時代の人々にとってもセンセーショナルな事件だったため一次資料も多く存在し、モノガタリ化され続けたために普通なら散逸する様な資料も現在まで残っていることにまず瞠目。原型が多少歪められたとしても、出来事がモノガタリ化されポピュラーになる事には大きな意義がある。
散逸せずに残った資料に、赤穂藩改易から討ち入りまでの精密な出納帳が残っており、本書はそれに基づいて書かれた、討ち入りまでの金の流れと、赤穂藩士の生活の様子と、心の動きを描かれた一級の読み物である。
討ち入りまでのモチベーションの根本には「武士である」という倫理的な要素は強いが、武士として忠義を尽くす相手が立場によって「藩」「浅野家」であったり、「内匠頭長矩」であったり別れているのが面白い(中には大石内蔵助に惹かれて、という人もいた様だが)。結果として前者は浅野家再興運動にまず走り、後者は討ち入り強硬派となった。最初から一枚岩ではなかったチームをまとめ上げるためには優れたリーダーと「先立つもの」が必要だ。特に討ち入り強硬派は江戸詰の人間が多かったため、意思確認やコントロールの為に都度都度江戸に使者を派遣する必要があり、実は残った「決算書」を見るとこの交通費が占める割合が非常に大きかった事実も面白い。
そして、おそらく討ち入り決行に至ったのは、決算書を見る限り残金に余裕がなくなって決行に至らざるを得なかったという面も否定できない。微禄だった者は討ち入り前にはまさしく「食い詰め浪人」になっており、ことを起こすには後がなかった事も読み取れる。一番最後の出納は、高禄だった大石内蔵助自身のポケットマネーによって賄われていた(つまり、改易から藩務整理ののち残った金を綺麗に使い切って討ち入りに向かった訳だ)。
欲を言えば、大石内蔵助自身の「決算書」も見たかった。様々な用途で消えていった赤穂藩の残金だが、微禄だった者への生活援助に充当されてはいたが大石個人は受け取っていない。妻子を離別後遊蕩に走った時の金も、全て個人の金で賄われている。千五百石という高禄を食んでいた大石内蔵助の貯蓄はいかほどだったのか。
藩の残金の出納帳を最後には幕府に提出することによって、改易から討ち入りに至るまでの行動に一片の私心のない事、公の金を公の行為のために使用した事が分かり、それによって討ち入りの「正しさ」はより凄みを増すことになる。赤穂事件が「忠臣蔵」となって人口に膾炙した理由の一つにはこういう部分があったことは否定できまい。 -
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天下統一目前で逝った織田信長。その一族や血統の運命は如何に?
第一章 信長の達成・・・織田政権の全国統一への道程。
第二章 織田政権の崩壊と再建・・・本能寺の変~清須会議。
第三章 織田信孝の「謀叛」・・・秀吉&信雄VS勝家&信孝。
第四章 織田信雄の「逆意」・・・秀吉VS家康&信雄
第五章 羽柴政権の誕生と織田体制の継承・・・秀吉の考える織田体制。
第六章 織田家の血統・・・関ヶ原以後~江戸時代の織田一族の運命。
主要参考文献一覧有り。
織田政権。信長の天下統一の夢、それを継承しようとした秀吉。
朝廷の思惑。そして、家康の徳川政権への道程。
それらに翻弄され、或いは生き延びてきた織田一族。
織田家の継承者との自負は、信孝、信雄、三法師の運命を左右。
争乱に斃れ、或いは豊臣と運命を共にした者もいるけど、
小藩や旗本として、また、徳川その他の家に、
織田家の血を残して、現在までも受け継がれていることは、
興味深いものでした。 -
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改元に際して、読んでみました。
角川のマンガ『日本の歴史』を監修している山本氏の著書なので、平安時代などはマンガと連動させた読み方が出来つつ、太上天皇が「上皇」、摂政と関白の違いなど天皇制度にかかわる様々な事を学ぶことができました。
神代~古墳・飛鳥時代~奈良~平安初期時代までは天皇が統治者であり執政権力者であったものが、平安中期から摂関政治が始まり執政権力者としての絶対性が崩れ、鎌倉~室町時代は執政権力は武士に移り、戦国~安土・桃山時代にはむしろ守られる「象徴」となり存在感が大分薄れてきて、江戸時代になるとさらに存在感が薄くなっていく変遷が、確かに自分の中の”存在感”と一致していると感じられ、その実情を各天皇ごとに知れたので、とても興味深く読み続ける事ができた。
そして江戸末期の王政復古を経て、明治天皇で国民に対してカリスマ性を有する近代天皇モデルが完成し、昭和天皇の生涯は激動の時代というのもあり、細やかに記載されていたのでとても興味深いものでした。
そして、昭和天皇の後を受けた上皇陛下への言及もあり、「令和」は今上天皇の下、やはり平和な時代であって欲しいと願わずにはおれません。 -
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原始から現代まで分かりやすく著述。題名に「流れをつかむ」とあるように、序章で原始・古代、中世、近世、近代・現代を6ページで著述。時間が無ければこの6ページで大きな流れが分かる。
続く本文でその大きな区切りに基づき、ヤマト政権の成立、飛鳥・奈良時代、平安前期・中期、平安後期、鎌倉時代、南北朝・室町時代、戦国時代、安土・桃山時代、江戸時代、幕末、明治、大正、昭和前期、と13に分け最初に黒い縁取りの印刷面の中に各2~3ページで大まかな流れを解説。これがまた分かりやすい。この黒枠を読み本文に行く、という流れ。
受験生などこの本を読むとより分かりやすいのではなどと思った。また時代劇や大河ドラマなど見たものを思い出しながら読むと場面の理解も進む。
最後に昭和後期から現在となり、今問題の北方領土や日韓問題の流れも書いてある。
著者は東大史料編纂所教授。教科書ではないので自分で各資史料を読み自分の解釈で書きました、とある。中世をいつからにするか、とか時代の区切りなどの現在の学説も紹介して、さらに著者の考えも述べている。はるか昔の中高生時代とは歴史解釈も違ってきていることがわかる。 -
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ネタバレ<目次>
はじめに
序章 日本史の流れ
第1部 原始・古代
第1章 ヤマト政権の成立~旧石器・縄文・弥生・古墳時代
第2章 飛鳥の朝廷と平城京~飛鳥・奈良時代
第3章 王朝国家の成立と摂関政治~平安時代前期・中期
第2部 中世
第1章 院政と平氏政権~平安時代後期
第2章 最初の武家政権~鎌倉時代
第3章 南北朝と室町幕府~南北朝・室町時代
第4章 戦国時代
第3部 近世
第1章 織豊政権~安土・桃山時代
第2章 天下泰平の時代~江戸時代
第3章 幕末の動乱
第4部 近代
第1章 近代国家の成立~明治時代
第2章 大正デモクラシー~大正時代
第3章 戦争の時代~昭和時代前期
終章 現代の日本と世界
<内容>
『流れをつかむ日本の歴史』(新潮社:2016年5月)を大幅改定した新書版。新書版なので持ちやすく、巻末に参考文献はないが、文中に参考文献が掲げられている。受験生から教員まで、また教養に歴史を学びたい人でも簡単に理解できる文章である。