陳舜臣のレビュー一覧
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下巻では、隋の滅亡につづく唐の興隆からはじまって、中華人民共和国の成立までの歴史をたどっています。
著者は、「中国が一つであるという観念をつくったのは、秦の始皇帝の偉業でありました」と述べつつも、「中国を一つの宇宙世界であるという考えには達していなかった」としています。その後、北魏の孝文帝によって「すべての人は人種民族を問わず、最高の文明のレベルで統一さるべきだという考え方」が打ち出され、世界帝国としての唐の理念につながっていったという見かたを提出しています。
比較的なじみのある王朝と皇帝の名前が多く登場するようになって、上巻であつかわれている時代よりも読みやすいように感じました。 -
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中国を舞台にした歴史小説を数多く執筆している著者が、古代から現代にいたるまでの中国史を解説している本です。上巻では、隋による天下の統一までがあつかわれています。
北魏の孝文帝について触れている箇所では、「権勢の争奪に明け暮れている歴史を読み、まれに理想主義の躍動を発見したときは、こちらの胸も躍るおもいがします」と述べており、良くも悪くも人間のなしうることをかき集めたようなエピソードが満載の中国史ですが、このような一幕に触れると気持ちのやすらぎをおぼえるような気分になります。
著者は本シリーズ以外に、おなじく講談社文庫から「中国の歴史」シリーズおよび「中国の歴史 近・現代編」シリーズを刊行し -
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以前に購入し、読破した本を再読。当時の記憶がほぼ無いため、初めて読んだような感想。
中国の神話から説き起こし、字が発明されるまでの中国の人々の生活を推察している。それには考古学の成果も役に立っている。
考古学の知識から、甲骨文字が発見され、今までは本当にあったか不明な殷という国家の存在が確認された。殷は商ともいい、商人や商業という言葉もこれが語源らしい。
殷から周に政権交代が起こるが、その際、中国の人々は神を絶対視しない文化を手に入れたようである。ただ、その周も統一王朝というよりは、やや強い地方国家、という存在のようで、やがて同じような地方国家が乱立する春秋戦国時代が始まる。
春秋戦国は、地方 -
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漢詩の世界に少し浸ろうと手にした陳舜臣氏の本。詩仙と謳われる李白の、詩を取り上げ解説をしつつ、その李白の人物像に迫ろうとしている。
そこに司馬遷「太史公自序」の一節をあげている。
「西伯(周文王)は羐久にとらわれて『周易』を演べ、孔子は陳・さいに厄して『春秋』を作り、屈原は放逐されて『離騒』を著わし、左丘明は失明して『国語』を残した。孫子は脚切りの刑をうけて兵法を論じ、呂不韋は蜀に遷されて世に『呂覧(呂氏春秋)』を伝えた。韓非は秦に囚われて『説難』『孤憤』あり。詩三百篇は大抵賢聖の発憤為作するところなり。これ人皆意に鬱結するところありて、その道を通ずるを得ず、故に往時を述べて、来者を思う -
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中国と日本双方の文化を深く理解する陳舜臣という作家を日本に得たことは、大変幸運なことである。本書では中国人と日本人の相違点が、象徴的な文学、美術、戦闘などから提示されている。私が納得した点は、明治以前は日本人が中国と直接関わったのは秀吉の朝鮮出兵のみで、書物を通じて間接的に中国を理解していたに過ぎない、故に相互に理解し得ないことがあって当然だ、とする説明である。
初版は1971年であり当時の中国は文化大革命の最中。時事を絡めていないだけに、2018年の今も本書の内容の多くは色褪せていない。しかし、第8章「中国人が最も信頼するものは”歴史”」というくだりは、さすがに現在の覇権主義を剥き出しにする -
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唐の2代太宗・李世民が子供のころからいかに大物だったか、兄の李建政との比較が分かり易い。隋の煬帝の無軌道ぶり、その最期も印象的だが、唐の初代・李淵そして李世民以外の皇帝も凡人揃い。いずれも女性に溺れる…。いかに李世民が傑出した皇帝だったかを感じることになる。則天武后以後も武后の娘・安楽公主、高宗の韋皇后、高宗の妹・太平公主らが次々に女帝の地位を狙っていたというから唐も安定していたとはいえないことに驚いた。若き日の玄宗がそれら女性の野心を砕き、2回のクーデターで韋皇后、太平公主を除き、地位を盤石にするのだが、後年の楊貴妃に溺れた醜態は思いもつかない。安禄山、史思明らの反乱と彼らが、女性に溺れ、同
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漢と楚の劉邦と項羽の戦いに始まり、漢成立後の劉邦の変貌、そして呂太后による悪事の数々。それが庶民レベルには平和な国だったというので、まるで現代を見るような感じである。そして呂太后以後も、文帝の皇后、長女。そして景帝の長女などと女性が権勢を誇る女性優位の時代だったとの歴史に吃驚しながら、惹き込まれる読書となった。文帝の竇(とう)皇后は宮城谷の「花の歳月」のヒロイン猗房。太皇太后として権力を揮ったとは小説とのイメージギャップに戸惑った。武帝の時代は衛士夫皇后の弟・衛青、そして次巻に登場する甥・霍去病たちが武将として大活躍した時代!不運の名将・李広との対比が一方には気の毒ながら、可笑しい。
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夏を伝説の国とし、殷の紂王の時代から始まる。この当時はそう考えられていたからやむを得ないか。悪女の第1号、妲己を周の周公旦が育てた!本当!そうであれば稀代の悪女も悲劇の運命。それにしても美女(概して悪女)のオンパレードは凄まじい。ほうじ、夏姫、驪姫、始皇帝の母…。それだけ傾国美女が多いとのことだろう。西施は范蠡が育て、後年は范蠡とともに過ごした!これも驚いたが、実は呉越の話は史記や春秋左伝のような正史には登場せず、呉越春秋などの野史にしか登場しないため、実在人物かどうか不明という。第1巻では秦の始皇帝の全盛時代で終わる。始皇帝がなぜ趙の都邯鄲で生まれ、秦王家とは血の繋がりがないのに、秦王・子楚