あらすじ
同じ黄色人種、漢字や食文化の共通性などから、私たちは日本と中国を「同文同種」と考えがちだが、実は「似て非なる存在」である。中国の多様性を理解しないと、誤解の陥穽に陥りやすい。両国の違いを具体的事例で比較・検証する本書の初版は一九七一年だが、時事的要素を避け歴史や古典を基にすることで見事に本質をとらえ、現在の日中関係を考えるうえでも参考になる。中国を知り日本を知る最良の入門書。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アジアの経済大国と敗戦から経済成長を遂げた極東の島国。言葉は違えど同じ表意文字を用いる、似ているが全く異なる文化や価値観を備えている、中国と日本は近代史からの遺恨や偏見が交錯する。互いに牽制と親睦を重ねていく中で何を得るのか。利権に終始するのではなく相互に尊重する器量の深さが次世代に引き継ぐべき課題であろう。対話の場に平和への布石がある。有事を喧伝して武力を振りかざすのは愚か過ぎる。結果を急ぐ勇ましさよりも過程に勤しむ紆余曲折が良い。平和とは結果ではなく継続する過程にあるのだから。
Posted by ブクログ
「同文同種」
使われる言葉と人種が同じ、という意味だそうです。
ちょっと古い本なので時代の違いなのかもしれませんが、日本人と中国人、人種が同じと思うことが日本人の共通認識なんでしょうか?
中国人と一口に言っても、漢民族、満州族、蒙古民族、女真族等々。
それに対して日本人=大和民族と思われていますが、アイヌの人たちもいるわけです。
日本人と中国人の人種が同じとは全然考えられないのですが。
ましてや、同じ漢字を使っているから分かり合えるというのも勘違いで、同じ漢字でも意味が違うことは多々ありますし、今の中国の簡体字と日本の漢字はもう別ものでしょう。
それを踏まえたうえで、日本と中国の違いというのが目新しくて面白い。
例えば、日本人は実を取り、中国人は名を取るんですって。
私は逆のイメージだったのですが、確かに日本人は禊さえ済めば復活はありですが、中国人は歴史に名を残すことを第一に考えるので、敗残者として名を残すくらいならダメもとで一発逆転を狙う。
なるほど。
けれども、「それはどうかなあ」な説も結構あって、それは負けず嫌いな日本人の私の主観かなあと思ったら、解説でもそのようなことが書かれていたので、日本人の皆さんにこの本を読んでもらって感想を聞きたいと思う。
例えば中国人はバランスを尊び、日本人はアンバランスを好む。
確かに文化的には日本人はアンバランスを好むのかもしれないけれど、現実的には非常にバランスを考えて行動すると思うのだけど。
逆に中国詩の対句はさておき、中国人の個人主義には引いてしまう日本人のわたくし。
権威に弱い日本人はある意味権威主義なのかもしれないけれど、中華思想を押し付けてくる中国人の権威主義もなかなかのものだと思います。
決定的な違いは文化というものの捉え方。
日本人は文化と政治を切り離して考えるけれど、中国人は文化はあくまでも政治を補佐するためのものでしかないと考える。
だから文化人を政治的理由で処断することを許せない日本人と、文化人=政治家である中国人。
ああ、やっぱりいろいろと別物だわ。
だからお互いにわかりあう努力をすればいいと思うのだけど。
Posted by ブクログ
中国と日本双方の文化を深く理解する陳舜臣という作家を日本に得たことは、大変幸運なことである。本書では中国人と日本人の相違点が、象徴的な文学、美術、戦闘などから提示されている。私が納得した点は、明治以前は日本人が中国と直接関わったのは秀吉の朝鮮出兵のみで、書物を通じて間接的に中国を理解していたに過ぎない、故に相互に理解し得ないことがあって当然だ、とする説明である。
初版は1971年であり当時の中国は文化大革命の最中。時事を絡めていないだけに、2018年の今も本書の内容の多くは色褪せていない。しかし、第8章「中国人が最も信頼するものは”歴史”」というくだりは、さすがに現在の覇権主義を剥き出しにする中国を思えば、陳氏の洞察も及ばなかったということか。