陳舜臣のレビュー一覧
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中国の歴史を追いかけて、著者の小説をかなり読んだけども、今作に出てくる登場人物の多いことについていけなかった。ただ、大まかにこの大きな国を王朝から民主かするには時期が悪いように感じるし、時間ももっとかけないといけなかったと思う。
主義と思想による対立、外国の干渉、利権と権力を欲する者達の争い。もう収拾がつかない。国を一つにするのが無理があるように思った。
暗殺、裏切りもうなんでもありの世界。
当時、革命とはこういう痛みを伴うものなのは理解するがあまりにも混沌としていて、どういう風に事が進むのが良かったのか歴史を振り返って見たとしてもわからない。
結局軍事力がないと国を統治できないのだろうか。
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購入済み
玄奘より二百年前の天竺への長旅
「法顕」という僧侶は、西遊記のモデルになった、玄奘三蔵より200年前に長安から天竺にわたって帰ってきた僧侶です。
60歳を超えて、長旅に挑み、十四年かけてインドへ旅して、帰ってきたのは、見事としか言いようがない。
「法顕伝」を調べていても背景がよくわからなかったのですが、中国の歴史に詳しい作者の手によって、よくわかるように書いてあります。
小説の形をとっているので、生きた人物として読むことができました。
鳩摩羅什が破壊僧である、という事は書いてないが、呂光と言う将軍が鳩摩羅什の存在を隠した、という事はわかりました。 -
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近代史において、特に日清戦争を象徴的に、なぜ、日本は近代化に成功したのか?清を凌駕することができたのか?中国の当時の状況と比較しつつ、考えてみることは興味深い。
当然のことながら、これは長い歴史の中の一過性の状況にあり、そこから両国がどのように変わっていったのかを知ることも重要。
以下抜粋
・日本的なものだろうとわれわれが思っているもので、実は中国がもとだというものがいっぱいあるわけですよ。
政治思想として、よく国粋主義的なことを言う人がいますけど、だいたい朱子学みたいなことでしょう。それ以前にはさかのぼらない。本居宣長を政治思想にしようとしてもなかなかなりにくい。朱子学だったら、南宋の思想 -
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日本では貴重な、近世のインドを舞台にした歴史小説。
インド亜大陸の大半を支配するムガル帝国の6代皇帝アウラングゼーブ、後にムガル帝国を脅かすインドの土着勢力マラーター同盟の創始者シヴァージー、そしてフランスやイギリスといった西洋帝国主義の尖兵、東インド会社を興亡を描いている。
上記3勢力を中心に諸勢力が権謀術数や戦争を繰り広げる描写はまさに三国志といったところ。
この時代のインドに興味がある方や、群雄割拠ものが好きな方は楽しめる一冊だと思います。
また、上記の三勢力以外にも、ムガル帝国とは持ちつ持たれつ、時には帝国に反旗を翻すラージプートやアフガニスタン諸族なども登場するが、マラーター同盟 -
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ネタバレ「同文同種」
使われる言葉と人種が同じ、という意味だそうです。
ちょっと古い本なので時代の違いなのかもしれませんが、日本人と中国人、人種が同じと思うことが日本人の共通認識なんでしょうか?
中国人と一口に言っても、漢民族、満州族、蒙古民族、女真族等々。
それに対して日本人=大和民族と思われていますが、アイヌの人たちもいるわけです。
日本人と中国人の人種が同じとは全然考えられないのですが。
ましてや、同じ漢字を使っているから分かり合えるというのも勘違いで、同じ漢字でも意味が違うことは多々ありますし、今の中国の簡体字と日本の漢字はもう別ものでしょう。
それを踏まえたうえで、日本と中国の違 -
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古代中国、特に春秋戦国時代の話を知りたかったので購入。
時代は殷から秦の統一、楚漢戦争の序盤まで。
代表的なエピソードを拾って小説にしてあるので、どれも興味深く読めた。
だが数多ある英雄譚を全て拾うわけにもいかず、後の時代に引用されているような人物が意外と居なかったりする。もっと多くの人物を知りたいとか古代中国を詳しく知りたいと思うなら、別の本で補完するのは必須かと思う。
この本はあくまで小説なので、元の記録から肉付けや脚色をして物語として読みやすくしてある。
それは良い点なのだが、本書を古代中国の入り口にしたのでどこまで史書に書かれていたものなのか、十八史略の時点で追加されたものなのかこの小 -
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ネタバレ★★★2017年7月レビュー★★★
長い長い物語が終わった。連維材、林則徐、王挙止・・・多くの魅力的な人物によって彩られた物語、史伝だった。もっとも心の残ったのは深刻な政府、官僚組織の腐敗だ。皇帝への報告は虚偽に満ちたものであり、だれもが責任回避しか頭にない。
本当に責任感をもった、誠実な人間は左遷されるという恐ろしい事態。「過去の中国のこと」と切り捨ててはいけないと思う。現在の会社などの身近な組織でも起こりうることだと感じた。
次に、英軍による残虐行為。1840年時点においても、兵隊による残虐行為が横行していたのか。坂本龍馬が感銘を受けたという「万国公法」たるものは機能していなかった -
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ネタバレ★★★2017年7月レビュー★★★
組織が古びてくる、というのは恐ろしい事だ。優秀な人間が排除され、無能な人間が跋扈する。清国の末期もまさにその状態だったようだ。第3巻では、林則徐が左遷され、英国に対して媚びるだけ媚びて、何としても戦争を回避しようとするだけの琦善(チシャン)が赴任。
戦争は回避するに越したことはないのだが、相手の言い分を聞くだけでは、結局傷口を広げてしまうことになる。準備不足で戦争に挑むことになり、優秀な指揮官を失ってしまう。
英国側も、林則徐を好敵手として尊敬していたようだ。
下関戦争の際の高杉晋作を思わせる話だ。 -
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ネタバレ一気読みした。スケールの大きさ、時代の激しさに翻弄されながら。「阿片戦争」という歴史の大きな出来事に突き進んでいく。その中心は林則徐。
「阿片を厳禁し、中国人の意気を取り戻す。結果、英国と戦争になろうとも、敗北必至であっても見事に戦うのだ」という信念で行動する林則徐。道光帝(やる気の起伏が激しい皇帝)の信任を得て、広東で阿片の廃棄を強行。
一方で大きな変化を望まないム・チャンアらの勢力と対立する。
「戦えば負ける」とわかっていながらも、大きな敵に挑まなければならない時があるのだろう。命よりも大事なものが。コンスタンティノープル陥落時のコンスタンティヌス11世も、命を長らえようと思えば、そう