田中啓文のレビュー一覧
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時代物に若干苦手意識があるにもかかわらず、“鍋奉行犯科帳”シリーズは結構好きで読んでいました。食べ物を絡めた話には目がないし、おおっ、カツ丼だわと思いながらいそいそと読み始めたのですけれど。
警視庁の地下に存在する部署って、まるで内藤了の“警視庁異能処理班ミカヅチ”シリーズのようですよね。期待に胸が膨らんだものの、どんなダジャレだらけやねん。スベりまくりでキツイのなんのって。あまりに頻繁に飛び交うダジャレと懐メロのせいで肝心の事件が頭に入ってこない(笑)。
それでも、生で活弁を何度か観た経験のある者としては、弁士がスクリーンの中に登場して演じる活弁もあることに驚き、観てみたくなりました。
ダジャレに辟易しつつも“恋の季節”はついつい歌ってしまった私。 -
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〔七賢人〕竹林で清談してる呑んだくれたち。
〔華虞姫〕探偵役。《あのねえ、この世には不思議なんかないの》p.57。と、不思議の権化のような存在が言う。
〔尸解仙〕その男は本当に尸解仙になったのか?
〔酒徳頌〕劉伯倫が参加した酒の席で人が殺されたが誰にも殺すチャンスがなかった。
〔竹夫人〕最も危険な男、鐘士季と竹の因縁。
〔竹に虎〕阮嗣宗の祖父が虎退治をし、餃子や打鞠を始めたのは本当か?
〔老子はどこへ行った?〕老子は実在したか、どこへ行ったか。山巨源の「人を見る目」は節穴か?
〔最後の清談〕それぞれの顛末。
〔感想〕この著者はバリエーション豊かなので自分に合うかどうかはけっこう賭けやけど、今回のは好みでした。
■竹林についての簡単な単語集
【逸民】魏の司馬氏の専横を避けるため飄々と風雅に生きようとしていた人たちのこと。世捨て人というわけではなくちゃんと職に就いていた。
【王濬沖/おう・しゅんちゅう】王戎(おうじゅう)。七賢人のひとり。最年少。優男。高位の役人で資産家。金は好きだが賄賂は嫌い。皆からは「俗物」と言われているが嫌われているわけではない。
【華虞姫/かぐひめ】七賢人の仲間。竹に酒を捧げたら来てくれる小さい女性。探偵役。《あのねえ、この世には不思議なんかないの》p.57。と、不思議の権化のような存在が言う。
【疑案】謎のこと。華虞いわく《どんなことにも理屈があるの。大きな謎も、小さな謎がたくさん集まっているから不思議に思えるだけ。》p.110
【嵆淑夜/けい・しゅくや】嵆康(けいこう)。七賢人のひとり。手足が長い。思想家であり音楽家。鍛冶などもしている。
【阮嗣宗/げん・しそう】阮籍(げんせき)。七賢人のひとり。酒呑み。詩人であり文章家。最近歩兵校尉(宮城の警護人)になった(のには理由がある)。耳が尖っていて岩のような顔で眉は一文字につながっており口髭と顎髭は伸ばせるだけ伸ばしている異相と言える。
【阮仲容/げん・ちゅうよう】阮咸(げんかん)。七賢人のひとり。阮嗣宗の甥。雅楽の統括をしている。
【山巨源/さん・きょげん】山濤(さんとう)。七賢人のひとり。最年長。老人だが巨体。吏部郎(人事担当)。
【七賢人】竹林に集まって天下国家から身の回りの小事のことなどをくだくだ話し続ける呑兵衛の集まり。皆、それなりの地位と知名度を持つ。
【儒教】《儒教は、上に立つものには都合のよい学問だ。》p.174
【向子期/しょう・しき】向秀(しょうしゅう)。七賢人のひとり。大学者。老荘の研究で知られている。いつもきっちりした身なりで丁寧な言葉遣い。
【鐘士季/しょう・しき】俗物だが危険な男。他者を罪に落として処刑するのが趣味?
【清談】談義のための談義。
【劉伯倫/りゅう・はくりん】劉伶(りゅうれい)。七賢人のひとり。酒呑み。身長百四十センチくらいと小柄。小さな鹿車(ろくしゃ)に乗っていて自分が死んだらその場に埋めろと従者にスコップか何かを持たせている。『酒徳頌』という酒の百徳を称えた詩を書いているところらしい。《皆、無為のままに生きる。それが人間の本来の姿なのだ。》p.74
【老荘】老子と荘子。《大事なのは過去ではなく、未来でもなく、今この瞬間だけである。君主や親が無謀なことをしようとしたなら、身を隠して命を守れ。自分自身がいちばん大切である。仁義や礼忠は人間にもともと備わった資質をむりやり捻じ曲げるものだ。人間は自然を手本として、あるがままに生きるべきだ。目立つな、知恵に頼るな、手柄を立てるな、出世するな、世俗に関わるな、ものを裏から、逆さまから、横から、斜めから見よ……それが老荘の教えである。》(p.175) -
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地獄一の名探偵は閻魔大王から極秘の調査を依頼されるが……。地獄で出会った男女の逃避行の行方は? 無実の罪で地獄に落ちた男が野球に託したのは………。
地獄を巡る八つの情景。
落語の「地獄八景亡者戯」を元とした、地獄を巡る短編集。
コメディからSF、恋愛にミステリ、スポーツとバラエティ豊かな8話を収録しています。
地獄での話とはいえ、殺人事件や汚職や選挙、戦争など、起こる問題は現世と一緒。泥臭く生々しくて、でもいい感じにバカバカしい。気を抜いてゆるく楽しめます。
コメディ色強めとは言え、地獄の描写・拷問描写などは割とグロテスクだったり汚かったりするので、苦手な人は注意です。
個人的にすきだった話は、「地獄八景探偵戯」。ちなみにこれ「じごくばっけいたんていのたわむれ」ではなくて「じごくばっけいはーどぼいるどのたわむれ」と読みます。
タイトルの読み方もクセが強くて面白い。 -
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警視庁捜査1課。刑事なら誰もが憧れる捜査の花形だ。念願叶ってその一員に加わった花菱朝彦だったが、生来のガサツさが災いしてか失敗続き。とうとう異動の憂き目に遭った。
依願退職も覚悟した花菱が受けた辞令は、刑事部割烹課勤務。初めて聞く部署名。フロアは存在さえ知らない地下4階。戸惑いつつもそこに向かった花菱が見たものは!?
図らずも料理人としての修業と刑事としての潜入捜査をすることになった花菱の活躍を描くドタバタ警察コメディ。
◇
月曜朝7時半。警視庁本部庁舎6階の刑事部強行班フロアに入った花菱朝彦は、さっそく上司の大河から声をかけられた。
「ジョーズが呼んでる。行ってこい」
覚悟していたこととは言え、大河のため息混じりのことばに花菱は、重い足を引きずるように上手茂明管理官のデスクへ向かった。
上手管理官はマグカップに注いだこだわりのコーヒーをひと口飲み、
「さっき人事から報せがあったよ。君は異動になる」
と告げた。そして言いにくそうに
「普通は1週間後だが …… 、悪いが今日付けだ。向こうがそう望んでいてね」
と付け加えた。
「わかっております。なにもかも俺の不行き届きのせいですから」
そう花菱はしおらしく言って
「長いあいだありがとうございました。長年の夢だった刑事をこんな形で辞めることになるとは思ってもいませんでした」
と頭を下げた。
すると上手管理官は、
「いや君は辞めることはないんだ」
と意外なことを言った。そして戸惑う花菱に管理官が手渡した辞令。そこには、
巡査部長 花菱朝彦を
割烹課所属とする
と書かれていた。 ( 第1話「フグに当たった男」) ※全3話。
* * * * *
警視庁。警察庁の直接管轄下に置かれ、首都の安全を守る警察組織であるということは誰もが知っている。だが、その本部庁舎地下4階に割烹があることは知られていない。
その謎めいた割烹は、割烹課という警視庁刑事部のれっきとしたいち部署で、運営するのはもちろん課員である警察官だ。
割烹の名は「警視兆」と言う。
というかなりユニークな設定で、もう興味津々で読み始めました。
序盤から笑ってしまいました。
まず、「警視兆」は、大阪の老舗割烹「失兆」(「吉兆」のモジリですね ) の流れを汲む本格的な割烹で、本庁刑事部の秘密組織だということです。
女将を務めるのは割烹課課長でもある森川春江という中年女性で、彼女の階級はなんと警視正!
相手や状況に応じて硬軟使い分けつつ柔軟に対応するやり手の女将のような森川課長。関西弁の柔らかい話し方も味があってグッドです。
板場を預かるのが花板の佐賀眠太郎以下男女合わせて7名で、そこに花菱が加わり8名になりました。
そして割烹の業務ですが、2本立てです。
1つ目は、割烹としての仕事です。
訪れるお客さんは警視庁の幹部以上で、情報交換や旧交を温めるなど様々な理由で割烹を利用します。仕事であれプライベートであれ、幹部たちにそんな場を飾るにふさわしい料理を提供するのが警視兆です。ただし、お代はきちんと請求しています。 ( 安くはないようです )
調理は花板をはじめとする一人前の料理人が担当。もちろん全員が刑事です。接客や洗い場を担当するのは板前修業中の刑事たち。花菱もその1人です。
2つ目は、刑事本来の仕事、事件の捜査です。ただし事件は、料理や飲食店が絡むもので、料理人のスキルを活かして潜入捜査も行います。
第1話で早速、花菱がフグ割烹に潜入。料理人の下働きとして働きながら、フグ毒による変死事件の真相解明にあたります。(個人的には、この第1話がいちばんおもしろかった)
さて、主人公の花菱朝彦についてです。
花形部署の捜査1課に配属されて日が浅いにも関わらず、つまらぬミスを重ねてしまうほど迂闊なところがある若手刑事です。
そんな花菱なのですが、実は優れた味覚のほか料理人としての基本も身につけているのです。なのに料理に対する拒否反応を見せるところがあります。
その理由は、父親との関係に端を発していて……。
という、何やら『美味しんぼ』っぽい要素もチラホラ。
3話構成ですが、割烹ミステリーとしての体裁を保っていたのは第1話だけで、あとは料理が絡むドタバタコメディーでした。
でも笑えるので、楽しみながら軽く読める作品です。