あらすじ
件=牛から生まれ、人間の言葉を話すとされている。死ぬときに何か予言し、必ずその予言は当たると言われている。
奈良県葛城山山中で男女が遭難。発見された女性の遺体には獣に食い荒らされた痕跡があった。死体のまわりには牛のものと考えられる足跡があった。奈良県警の村口刑事は不可解な状況を不審に思う。
2ヶ月後、岡山県の山間部で、偶然件の誕生を目撃した大学生・美波大輔は何者かに追われる身に。彼は岡山での出来事を忘れようとするが、1週間後、件の予言通り現首相が急逝し、再び岡山を訪れる。
予言する牛の背後には「みさき教」という新興宗教団体の影が。明らかになった入信者の名前は明治以降の大物政治家や総理経験者財界人の名前が並んでいた。
戦前から日本の中枢を動かしていたのは件の予言だったのか!?
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Posted by ブクログ
久々の田中啓文。
絶妙に気持ち悪く、オカルト心をくすぐられる。
これぞ!と言った感じで、とても満足。
有り得ない話なのだけれど
もしかしたら…と色んな想像をしてしまう、そんな作品。
Posted by ブクログ
上手くホラーと民俗学を融合させて、落とし込んでいるなぁと感心!
雄略天皇は実在の人物ではないので、この辺りも史料と併せて考えた上で出来上がったんだろうなと想像。
読ませてくれるホラーは少ないので、面白かったですね。
Posted by ブクログ
田中啓文『件 もの言う牛』講談社文庫。
『件』をテーマにした伝奇パニックホラー小説。『件』と言えば、小松左京のホラー短編『くだんのはは』を思い出すが、果たして本作はどうだろうか。
単なるホラーに留まらず、スケールの大きい阿鼻叫喚の地獄絵図が描かれる。もう少し贅肉を削ぎ落とし、物語の筋を明確にすれば、もっと面白い作品になったかも知れない。
奈良県葛城山の山中で若い男女が遭難する。男性は牛に襲われ、崖から転落し、九死に一生を得る。女性は牛に食い荒らされ、無惨な遺体となって発見される。その2ヶ月後、岡山県の山間部でフィールドワーク中に土砂崩れに巻き込まれながら、難を逃れた大学生の美波大輔は助けられた牧場で『件』の誕生と予言を目撃する。『件』の背後に見え隠れする新興宗教団体『みさき教』の姿……
本体価格820円
★★★★
Posted by ブクログ
件+牛鬼か…民俗学からひっぱってきた偽史小説好きなので面白かった。
牛を肉食にする必要あったのかなと思ったけど、鬼にしたかったのならそうか……一言主が鬼みたいになってるのは良いのかなぁ?
終始計画性があまり無い登場人物たちが好きになれず、特に礼子にイライラしっぱなしでした。ジャーナリズム、と言いつつだいたいけしかけるだけ。終盤の展開でようやく溜飲が下がりました。
教授ふたりとかアメリカ人の活動家兄弟は死ぬ必要ありませんでした。教授良い人だったのに…酷い巻き込まれだ。
ラストの牛鬼件スタンピードはハチャメチャB級映画みたいで面白かった。件なので、予言撒き散らしながら暴走しているのが良いです。
思い返すと、序盤に大輔や村口さんが目撃した件は白黒なので乳牛、だけど絵里ちゃんちの牧場で飼育してたのは肉牛。
同じ牧場で2つの系統の畜産しないと思うから、他に作ってた牧場あったの?あ、でも祀りに子牛連れてきてた人いたからそりゃあるか。
その人たちの牧場の件が、東京に行き、半島の北にも行き、と。なるほどねぇ