今野敏のレビュー一覧
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テレビ局の遊軍記者である布施は、けっして仕事熱心な記者ではない。
けれども何度もスクープをものにして実績をあげてきた。
上司である鳩村も、刑事である黒田も、布施に一晩張り付いてまわり、驚くべき人脈を目の当たりにする。
常に自然体で周囲に接している布施だったが、それが計算されたものなのか天性のものなのかは、結局ふたりにはわからない。
知り合った人たちをいつの間にか安心させ、布施が張りめぐらした網の中へと取り込んでしまう。
そして築かれたとんでもなく豊富な人脈。
それこそが布施のスクープを生み出している。
一年前に起きた猟奇殺人事件に目をつけた布施。
独自に取材を始めるが、未解決のままになっていたその事件の担当刑事が黒田だった。
以前から布施に一目置いていた黒田は、布施に協力をあおぎ事件解決へと乗り出す。
実際には刑事と記者が共に聞き込みに回るようなことはないだろうが、設定としては面白かった。
「俺は俺の仕事をした。黒田さんは黒田さんの仕事をした。それだけでしょう?」
言い切ってしまう布施は変わってはいるけれどかっこいい。
第1弾の「スクープ」よりもミステリー色が濃くなっていたし、黒田から見た布施像も描かれていてより面白く読むことができた。 -
Posted by ブクログ
刺殺現場での目撃証言から「黒い亡霊」と呼ばれている風間が容疑者として浮上する。
しかし、風間をよく知る速水は風間の犯行を否定する。
本庁から送り込まれた刑事たちと、ベイエリア分署の捜査方針の違い。
プライドなのか、自分たちの捜査に絶対の自信を持っているのか。
安曇たちの意見に耳を貸そうとはしない。
風間のキャラクターが印象的だった。
終盤で明かされる風間の環境や心境。
捉えどころのない人間だと感じていたのに、彼なりの理由がそこにはちゃんとある。
「いつの世でも、子供は大人に何かを求めている。反抗するのは、甘えなのだ。
大人は、手取り足取り教える必要はない。何かを子供に示せばいいのだ。
生きる姿勢を見せてやるだけでいい」
妙に印象に残った作品の中のこの一節。
たしかに、親にはむかったりするのは甘えもあるな・・・とあらためて気づいた。
常に上から物を言われているような感じにムカついたりはするけれど、甘えてるだけ・・・なのかもしれない。
今回は速水が大活躍をしている。
ドラマだったらW主演といった感じだ。
今野さんの物語に登場する人物たちは、どれも個性豊かで活き活きと物語の中で動きまわっている。
今野さんの作品が好きな理由は、そんなところにもあるのかもしれない。 -
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勇気ある一般市民の協力によって逮捕されたかにみえた通り魔殺人の犯人。
現行犯逮捕という現実の前に、消えた協力者へ注意を払う人間はほとんどいなかった。
しかし、犯人として逮捕された男は拘束直後から「自分はやっていない」と否定をし続ける。
相棒として心理捜査官・紗英とともに捜査を続ける碓氷に、紗英は意外な事件の真相を告げる・・・。
人物の記号化という考え方がとても面白かった。
人は興味があるものは記憶に残りやすく、逆に自分にとって関心のないものは記憶に残りにくい。
より強烈な印象を残すものは、他のものよりも強く記憶されやすい傾向がある。
後半、「強固な象徴性」という言葉が出た時点で、犯人の次の手口がわかってしまったのは残念だった。
捜査方針を決定しなければならない場面だっただけに、必要な不可欠な展開だったとはわかるのだけれど・・・。
事件は人が集まる駅前広場で起きている。
犯人が下見をした可能性が指摘されてから、周辺の防犯カメラがチェックされる。
事件当日の防犯カメラに犯行の様子は映っていなかったのか。
用意周到な犯人のことだから、カメラの死角を狙っての犯行だったのかもしれないが。
しかし、群集がパニックになっている中でひとりだけ違う行動をしている者がいたら目立つと思うのだけれど。
プロファイリングの正確さについても、あまりにも100%の的中率だったことがかえって「えっ?」と感じてしまった。
それでもやっぱり今野さんの作品は面白い。
見かけるとつい手に取ってしまう魅力がある作家だと思う。 -
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警察を舞台にしたドラマは多い。
そのためか、何となく縁はなくとも警察の捜査など知っているような錯覚に陥ってしまう。
けれど、公安となると話は別だ。錯覚する余地などないくらい、その内実は知られていない。
もしかしたら、同じ警察官であっても公安について正確に知っている人は一握りかもしれない。
刑事が犯人を逮捕するには証拠が必要だ。
物的証拠がない、もしくは乏しいときは、犯人しか知りえない秘密の暴露といった意味で自白が重要な位置をしめる。
一方公安は証拠にこだわらない。事実だと納得できる情報があればそれがすべてだからだ。
表舞台に出ることのない公安という組織。
私たち国民の知らないところで、国家的危機から国を守るために公安は動いているのだろうか。
それにしても第1弾に登場したヴィクトルといい、シロコフといい、人間凶器とも言えるようなプロがいるということが恐ろしい。
平和ボケと言われる日本だが、同時にスパイ天国とも言われている。
出来ればこんな恐ろしい攻防は小説の中だけに留めておいてほしいものだ。