熊谷達也のレビュー一覧
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昭和四十年代の宮城県を舞台に描かれる珠玉の短編集。いずれも懐かしく、心に訴えるものがあり、なかなか面白い作品に仕上がっている。
『酔いどれ砲手』は牡鹿半島を舞台に廃れゆく捕鯨をユーモアを交えながら描いており、ユーモアの中に潜む哀しさが何とも言えない。
『稲穂の海』は宮城県北を舞台に減反政策にあがらう若者の姿をユーモアを交えながら描く。
『梅太郎』は民話を収集する大学の若手助手と語り部の婆さんを描いているが、あくまでも純粋な婆さんに対して、物事を四角四面に捉え過ぎる大学助手の姿が滑稽である。
『屋台「徳兵衛」』は思わずホロリと来る人情話。今は見ることの無い屋台の描写が何とも言えない。
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幻のニホンオオカミに関する話かと思ったら、出だしはミステリ、中盤で凶獣の正体は明らかになるが、ここから一転、謎の山間漂泊民・山窩を巡る戦後史となる。信じ難いが、一応そういう説もある様だ。話としては面白い。最後に姿を見せる7匹の…。ところで狼と言えば、和歌山と奈良の県境沿いに、古より「谷幽かにして嶺遠し因りて無果という」と説かれた果無山脈が広がっている。山低くアルピニズムとは無縁の地であるが、その山懐は果てし無く深い。山の斜面をツチノコ転がり大蛇が道を塞ぐ、夜には狼の遠吠えが聞こえると言う。未知動物の聖域。
“ガオー”の次は“ウォー”! 2012年09月07日 -
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ネタバレマタギ×クマ。
っていう大好きなジャンルなので前から読んでみたかった。予想に反して一人の男の波瀾万丈の半生記で読み応えたっぷり。深夜に「ちょっとだけ読み進めておこうかな~」と思って開いたら、最後までやめられず朝になっていたくらい。
マタギ言葉とか風習とかの描写が細かくて、かなり綿密かつ専門的な調査の上で書かれた作品と思われます。それだけでも読んだ甲斐があった。あと、山での張りつめた空気がいい。東北出身の作家でないとこの空気は出せないと思う。
しかし気になるのはこの男、下半身で生きてるんじゃあ・・・という傾向がなきにしもあらずで。とくに後半。いや決して下品とか好色とかいうわけじゃないだけど