熊谷達也のレビュー一覧

  • 相剋の森
    シャトウーンのレビューで知った。マタギ三部作の一作目。作者のマタギと自然保護の両立への思いが伝わってくる。
  • 邂逅(かいこう)の森
    こういう書き方をされると、他の小説家が書きにくい。

    どういう書き方かというと、綿密に調べ上げた膨大な資料の元に書いているからだ。

    今回は日露戦争から満州事変にかけての、東北における「またぎ」の世界を詳しく描いている。

    ついでに銅山で働く「炭鉱夫」の実態も微にいり細にいり描写されている。

    イン...続きを読む
  • 七夕しぐれ
    爽やか。
    子供の頃の、いじめいじめられ、を思い出す。どっちにも子供なりの論理があるんだよね。
    和也の父。遠くから丸。素敵な態度。
  • 相剋の森
    環境保全と狩猟という現代的テーマが非常に興味深い。「生物を殺してもびくともしないだけの豊かな自然」。まさにそれだ!
  • 七夕しぐれ
    自伝なのかフィクションなのか?大人になって子供を振り返るスタンスで描かれる作風には読者として安心して読める雰囲気がある。悔しさも悲しさも誇らしさも甘酸っぱさも経験し大人になったからこそ振り返れる当時。
    あの頃があったからこそ今の自分に誠実に向き合えるといった作風は凄くいいな~と思う。
  • 相剋の森
    邂逅の森に比べると物語としての物足りなさはあるけれど、得られるものは十分にある作品だと思う。
    『自然との共生』と言った言葉は近年よく聞くが、人間が人間の都合で語るのであれば自然を置き去りにした話になってしまう。
    人間が上位にあるのでは無く、自然と対等でなければ共生も共死意味を成さないんだろう。
  • ウエンカムイの爪
    熊谷達也のデビュー作です。

    アイヌの人々は善い羆のことを山の神『キムンカムイ』いい、性悪の羆を『ウエンヤップ』という。そして人間を食ってしまった羆のことを、真の悪神『ウエンカムイ』と呼ぶ…

    北海道で撮影旅行中だった動物写真家・吉本は、ある日巨大な羆と遭遇してしてしまう。しかし今まさに襲われそうに...続きを読む
  • 氷結の森
    マタギ三部作の最終話です。
    今度は時代を遡って、日露戦争後の樺太です。
    その当時は日本の領土になってた南樺太を縦横無尽に駆け巡る冒険小説です。

    主人公はマタギだったのですが、日露戦争従軍後に帰還した後、故郷で事件が起こってしまい、故郷を後にします。
    主人公を敵として付け狙う人間付で…。

    樺太では...続きを読む
  • 荒蝦夷
    「まほろばの疾風(熊谷達也著)」と時代はかぶる
    熊谷達也としては「アザマロ(呰麻呂)はアテルイ(阿弖流為)の父」という設定のようだ
    こちらはアザマロが主人公

    同じ作者だが
    登場人物像が違っていたり
    アザマロの死に様が違っていたり
    する
    筆者の中で蝦夷像が変わったらしい

    他の作者の本も読まなきゃ偏...続きを読む
  • まほろばの疾風
    桓武天皇の時代
    東北地方に住む蝦夷の制圧が行われた
    蝦夷の族長として闘ったのが英雄アテルイ
    そのときの征夷大将軍が坂上田村麻呂

    蝦夷のお話は
    いたたまれなくなる話が多いが
    アテルイが「英雄」のまま了している
    よかったよかった

    --追伸--
    「火怨(高橋克彦著)」の方が良い。
  • 箕作り弥平商伝記
    新しい趣向をいろいろと思いつく人だなあ、熊谷さんは。

    これは新しかった。
    すこし講談調なのかなんなのか、ユーモアをまじえた語り口に熊谷さんの工夫が感じられたが、新しいのは、サンカが登場すること。
    これまで、マタギや蝦夷を描いてきた熊谷さんだから、「お、今度はサンカか!」と期待するも・・・。
    漂泊の...続きを読む
  • ウエンカムイの爪
    熊にもいい熊、悪い熊がいるらしい。
    アイヌの言葉で、いい熊は「キムンカムイ(山の神)」悪い熊は「ウエンカムイ(悪神)」。
    たとえいい熊だとしても、山の中でばったり出会ったら、怖いはず。熊は熊。
    それもでかいヒグマならなおさら。
    都会で生活しているとそんなシチュエーションは想像しにくいけれど、...続きを読む
  • 箕作り弥平商伝記
    デビュー当時の熊谷達也さんのキーワードは「東北」と「自然・動物」。重厚で緊迫感がある物語でした。しかし、その後は色々な方面に手を出していますね。全てが成功しているとは言えませんが。
    この作品は、部落問題という背景(そういえば「七夕しぐれ」でも扱っていました)はありますが、軽妙な作品です。大正末期を舞...続きを読む
  • 荒蝦夷
    あらすじ(裏表紙より)
    宝亀五(西暦七七四)年、陸奥国の北辺には不穏な火種がくすぶっていた。陸奥を支配せんと着々と迫り来る大和朝廷。そして、その支配に帰属する、あるいは抵抗する北の民、蝦夷。動乱の地に押し寄せる大和の軍勢の前にひとりの荒蝦夷が立ちはだかった。その名は呰麻呂。彼が仕掛ける虚々実々の駆け...続きを読む
  • まほろばの疾風
    はっきり言って文章は粗く、特に会話のやりとりなんかは拙いと感じた。
    そのせいか、序盤はイマイチ感情移入しきることができなかったが、ある程度物語が進行してからのパワーたるや、さすがにはにゃ氏が勧めるだけのことはある。
    皆川博子氏の作品を想起させるような、遠大なクロニクルはとても読み応えがあった。
    それ...続きを読む
  • 氷結の森
    「森」シリーズの完結編の主人公はまさかまさかの矢一郎。
    第一部でチラっと登場した主人公のお兄さんです。
    第二部があまり満足のいく作品ではなかったので今回は大満足!
    すべてを凍り付ける極寒の地で、自分自身の心も凍てつかせる矢一郎。彼の心を溶かす朝焼けの空がまぶしい。
  • 相剋の森
    狩りをしているしているシーンよりは、女性ライターの目を通して自然との関わり合いを表現している方が多い作品ですが、それもまたアリかなと思いました。
    最後のシーン、どうなったのかなぁ。
  • まほろばの疾風
    「荒蝦夷」とともに、東北に住んでいる人間なら読んでおかねばと思い手に取った一冊。地元が多賀城ということもあるし。
    東北地方が一致団結して、何かムーブメントを起こしたら面白いだろうなぁと思いながら読んでました。単純な読み方ですね。

    僕としては「荒蝦夷」の方が好きかも。
  • 荒蝦夷
    「荒蝦夷」とともに、東北に住んでいる人間なら読んでおかねばと思い手に取った一冊。地元が多賀城ということもあるし。

    朝廷側の記録にしか残っていない蝦夷ってどんな人々なんだろうと思いながら読んでました。
    うーん、こうあって欲しいです。
  • 漂泊の牙
    いや~、面白すぎ。
    一気に読み入ってしまいました。

    東北を舞台に、ニホンオオカミを題材として物語が進んでいきます。
    サスペンス、推理小説の要素もふんだんですが、山の中をマタギ並に駆け抜ける、アニマルトラッカーは凄いです。

    雪の山々が目に浮かんできます。

    本書は、第19回新田次郎文学賞...続きを読む