熊谷達也のレビュー一覧

  • リアスの子

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    東北の港町を舞台に問題児の女子中学生を更生させようと奮闘する若き教師を描いた爽やかな物語。

    仙河海市の中学校に転校してきた問題児の早坂希を更生させようと中学教師の和也は同僚の教師と様々な努力をするが、彼女は次から次へと問題を起こす。あることをきっかけに和也は希を顧問を務める陸上部に入部させるが…

    舞台となる仙河海市は気仙沼市がモデルである。かつて、著者の熊谷達也は気仙沼市で三年間、中学教師を務めていたという。そうすると、主人公の岩渕和也は著者自身がモデルなのかも知れない。

    物語の中に登場するジャストはジャスコだし、泰波山は安波山、唐島半島は唐桑半島なのだろう。そして、舞台となる中学校は気

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    2016年02月12日
  • 翼に息吹を

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    熊谷さんは私にとって当たり外れの多い作家さんなのですが、これは当たりでした。
    大戦末期の知覧を描いた作品。そう、特攻隊です。
    ただ特攻隊員では無く整備士を主人公に置いたところが目新しく。
    特攻隊員のために昼夜を忘れて修理・整備を行う一方で、それが結局は多くの若者を死地に送り込むことに矛盾を感じて行く主人公。その周りに次々に現れる様々なタイプの特攻隊員たち。
    特攻隊員の心情を描くのは、どうしても無理がある感じがするのですが、それを送り出す整備士ならば忖度できるような気がします。それが、この作品がリアリティを感じさせるところかもしれません。
    ISの自爆テロという狂気の沙汰を不思議な気持ちでニュース

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    2016年05月08日
  • 調律師

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    書店平台でタイトルに惹かれ購入。
    思いもかけぬ展開で 心を掴まれた。

    読み始めた時には…まさか東日本大震災に
    この物語が繋がってゆくとは思わなかった。

    素直に設定にひきこまれ
    綿密な取材に裏打ちされた調律師の世界に
    感心させられた。

    共感覚という言葉の実在も 初めて知った。

    そんないくつもの要素が 豊かな文学世界と
    多くのテーマ性を支えている。

    佳作だと思う。

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    2016年01月10日
  • 調律師

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    久しぶりの熊谷達也さん。
    この人の描く小説は、東日本大震災がやはり切っても切れない一つの契機を与えていることがわかる。ある小説に、突如として違和感を持って現れてくるところが、未曾有の大災害が普通の日常に与える影響の大きさを感じずにはいられない。
    調律師である鳴瀬が向かい合うピアノ達と、そのピアノに関係する人々の情景、鳴瀬の抱える過去。
    帯が『妻を恋う』だったので、そのあたりを期待して選んだ小説だったけれど、繊細な登場人物達の心に触れられたので、それはそれで満足した小説でした。

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    2015年12月21日
  • オヤジ・エイジ・ロックンロール

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     バンドをやったことのあるオジサンは書かれていることがまるでかつての自分のことのようだ。とんとんとステージを成功させ、コンテストものぼりつめていくストーリーは話がうますぎると思いながらも、ストレスがなくてほっとした。
     「邂逅の森」の同じ著者とは思えない軽快さだが、それは「ゆうとりあ」でも感じた。ギターやアンプの講釈も経験者には嬉しかったし、末尾の用語解説も親切で好感が持てる。さわやかな結末もいい。

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    2015年12月18日
  • 氷結の森

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    「邂逅の森」を読んだのは5~6年前のことであり、森3部作なるものの存在は知っていたが手が出ないでいた。
    順番でいけば、相克→邂逅→氷結となっているようで…完全に順番間違えているし!しかしながら今作も中々の佳作であると思う。

    マタギを主人公に据えるのが3部作においての不文律のようである、そこには人と獣と自然のバランスがひとつのテーマとなっており「邂逅~」においては顕著に感じられた。今回主人公は元マタギであるが、さらに重い十字架を背負っていた。日露戦争に従軍しておりスナイパーとして活躍していたという、さらに故郷を離れる原因と相まって主人公弥一郎の生き様、未来を見ようとしない諦観が独特のハードボイ

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    2015年05月20日
  • 翼に息吹を

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    ネタバレ

    実際に戦地に向かうわけではない整備兵の、
    心の葛藤が痛いほどで、
    辛くて、悲しくて、苦しいくらいだった。
    でも、実際はこんなもんじゃなかっただろう、きっと。
    教科書で習うだけの、有名な歴史や史実だけじゃなくて、
    こういうことがあった、
    こういう人がいたってことを、
    忘れてはいけないと思うし、
    だからこそ、少しでも知りたいと思う。

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    2014年11月29日
  • 相剋の森

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    「邂逅の森」の続編ということで期待たっぷりに読み出した。前作ほどのインパクトはないが、登場人物を含め、現代との絡みが巧みに表現されていて作者の手腕に感心した。

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    2014年11月26日
  • 冒険の日々(小学館文庫)

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    いつも不思議を感じていた子供の頃。そんな懐かしい子供の頃の記憶を呼び覚ましてくれるような連作短編集。座敷童子、河童、天狗、鬼、雪女に山姥と子供の頃なら身近に感じたような妖怪怪異を題材に描かれたノスタルジックな時代風景。

    単行本化に際し、プロローグとエピローグが書き下ろされ、短編集全体を上手く引き締めている。特にエピローグには驚かされた。

    プロローグに描かれた小学校の校舎は、宮城県登米市にある旧登米高等尋常小学校校舎ではないだろうか。

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    2014年07月21日
  • 相剋の森

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    編集者である美佐子は、マタギを取材する際に出会ったカメラマン吉本の「山は半分殺してちょうどいい」という言葉が心に深く残る。
    山に生きるマタギという存在、熊と人、自然との真の共生、非常に読み応えがある。
    個人的な好みとして、美佐子の恋愛はここまで書かなくても良いような気もしますが。

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    2014年06月30日
  • 漂泊の牙

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    東北の雪深い地方で、愛妻を殺された動物学者の城島。
    狼なのか野犬なのか、事件を追い始める城島、テレビのプロデューサー恭子、鳴子警察署の刑事堀越。
    狼の生態についてや、サンカといった民俗学についてなど、あまりよく知らなかった分野だが、興味深く読めた。
    東北の厳しい自然の描写や、その中で狼を山の神と崇めて生きていた人たちの思いが伝わってきて、非常に良かったと思う。

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    2014年02月03日
  • オヤジ・エイジ・ロックンロール

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    直木賞作家が書くオヤジバンド物語。直木賞受賞作のマタギ社会を書いた『邂逅の森』とは世界観が全く違う内容。しかしマニアックぎみの凝った解説を含みつつもスムーズに読ませるテクニックは健在であり、更に磨きがかかった感じがする。作者みずからもバンドをやっているということで、そこへの思い入れが伝わってくる。おすすめ。しかし凄テクメンバーと唄が上手く若くて可愛いい三拍子揃った女性ボーカルという作者がやりたいバンドの理想形を書きたかったのだなと思うとニヤリとしてしまう。

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    2013年12月14日
  • 七夕しぐれ

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    部落差別やいじめなど、考えさせられる内容もあるが、子供たちの世界が生き生きと描かれていて気持ちが良い話。その後の話もぜひ読んでみたい。

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    2013年11月27日
  • 相剋の森

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    マタギシリーズ3部作の1部目。マタギとそれを取材するカメラマンとライターの話。
    それらを通して、自然との共生とは何か? 狩は現代においてひつようなのか?と言ったことを考えさせられる。

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    2013年09月19日
  • オヤジ・エイジ・ロックンロール

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    主人公にそのまま感情移入できます。「あっ、それ、俺もやりたい。」って感じ。何でも出来ると思っていた頃から、いつの間にか年をとり、出来る事、やりたい事が少なくなって行く。仕事や家族のせいにして我慢しているけど、それだけじゃないって事も知っている。そんな人が読めば、気持ちが明るくなると思います。

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    2013年09月10日
  • 七夕しぐれ

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    自分の中にある正義、それに気付く事とそれを貫く事。
    少年がこれに迷いなく邁進していくさまが、とっても気持ちよかった。
    良質な一冊。

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    2013年09月03日
  • 七夕しぐれ

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    ネタバレ

    最近ハマっている熊谷達也
    文章が優しくて丁寧な言葉使いでお行儀のイイ文体という感じ
    お話しは、少年時代の思い出。転校してきた和也が、差別やいじめを体験するお話し。子供ならではのキラキラとした視線があって正義があって。。。間違いに立ち向かおうとする。
    放送室を占拠して自分たちの思いをぶつけたビラを屋上からまき散らします。だからって、何かが変わったわけでもないけれど。

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    2013年08月20日
  • 七夕しぐれ

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    宮城県の小さな街から仙台に引っ越して来た小学五年生の和也の甘酸っぱく、輝かしい一夏の物語。読みながら、小学校時代を思い出した。自分も小学校時代に転校を経験したが、確かに転校生への反応って、こんな感じだったよなと共感する描写が多かった。

    蛇足になるが、作中に登場する仙台市から北東に60キロという描写から、T町は登米町で、N町は中田町ではないだろうか。

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    2013年07月22日
  • バイバイ・フォギーデイ

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    2013/6/22
    すごく読みやすかった。

    憲法9条についてを学ぶと考えれば読みやすくて良い本だった。ただ、ストーリーやキャラは好きになれなかった。

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    2013年06月23日
  • バイバイ・フォギーデイ

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    文化祭を題材にした小説が好きです。
    高校や大学の良いところや、楽しいところをギュッと詰め込むのに、最も適した題材だと思っています。

    本作は高校の文化祭のお話。
    ご多分に漏れず、楽しいお話なのですが、そこに憲法9条改正の話が絡むところが、普通の小説とは違うところです。

    お話としては冒頭から憲法9条の改正が国会で審議されるところから始まります。
    政治オタクで、主人公(男)の幼馴染の女の子が、それを高校の文化祭に盛り込んでいくってお話です。
    堅苦しい話を、文化祭というオブラートに包むことで、すんなり憲法のことを考えることが出来ます。

    本としては、改正すべきなのか、すべきではないのかについて、一

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    2013年06月06日