熊谷達也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「邂逅の森」を読んだのは5~6年前のことであり、森3部作なるものの存在は知っていたが手が出ないでいた。
順番でいけば、相克→邂逅→氷結となっているようで…完全に順番間違えているし!しかしながら今作も中々の佳作であると思う。
マタギを主人公に据えるのが3部作においての不文律のようである、そこには人と獣と自然のバランスがひとつのテーマとなっており「邂逅~」においては顕著に感じられた。今回主人公は元マタギであるが、さらに重い十字架を背負っていた。日露戦争に従軍しておりスナイパーとして活躍していたという、さらに故郷を離れる原因と相まって主人公弥一郎の生き様、未来を見ようとしない諦観が独特のハードボイルドタッチで描かれている。
前半は樺太の漁業、林業、己を敵とする亡き妻の弟からの逃避行が極寒の地を背景に描かれる。厳しいゆえに美しい自然が登場人物以上の迫力で読者に迫ってくる、しかしながら物語の中盤にかかると一転して別の物語となっていた。
「尼港事件」なるものを自分は全く知らなかった。大正期に革命の只中であったロシアで発生した邦人虐殺事件である。アムール川流域の港湾都市ニコラフエスクで起こった、国際的事件の顛末が架空のキャラクターを通して語られる。様々な陣営の思惑が錯綜し、裏切りと血風の世界がそこにあった。いつのまにか西村寿行か大薮春彦か?の世界がそこにあった。最初からのハードボイルドが一挙に炸裂して市街戦にまで発展してしまう。なんとも皮肉な結末も用意されていたが、彼に残された大切な者との未来を予想させる終幕が、読者を安心させてくれた。
物語より自然の圧倒的美に翻弄され心奪われる、命を賭けなければ目にすることができない美。経験はできないだろうけど経験してみたい… -
Posted by ブクログ
文化祭を題材にした小説が好きです。
高校や大学の良いところや、楽しいところをギュッと詰め込むのに、最も適した題材だと思っています。
本作は高校の文化祭のお話。
ご多分に漏れず、楽しいお話なのですが、そこに憲法9条改正の話が絡むところが、普通の小説とは違うところです。
お話としては冒頭から憲法9条の改正が国会で審議されるところから始まります。
政治オタクで、主人公(男)の幼馴染の女の子が、それを高校の文化祭に盛り込んでいくってお話です。
堅苦しい話を、文化祭というオブラートに包むことで、すんなり憲法のことを考えることが出来ます。
本としては、改正すべきなのか、すべきではないのかについて、一応の答えを出してはいますが、それを押し付けるのではなくちゃんと考えようよっていう主張で好感が持てました。
まぁ、何よりも幼馴染の女の子が可愛すぎます。
スーパーマンなんですが、主人公にだけ甘えるという……
ツンデレはアニメでも、マンガでも、文芸作品でも魅力的だということを改めて実感しました。
ただ、面白く読めたのですが、主人公(男)がもう少し活躍しても良かったかなぁと思ったり何だり。
主人公に自分を投影しちゃうからだとは思うんですけどね……