熊谷達也のレビュー一覧

  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    マタギって全国区の名詞なんでしょうか?

    マタギとは、主に東北地方で熊やカモシカを狩猟して生計を立てていた人たちの呼び名です。本書ではそんなマタギを生業とする男の半生を記しています。とはいえ現代人から遠い昔のおとぎ話などではなく、実に生々しい人間模様と恋愛、家族、故郷について語られています。
    里ではまったくの俗人である若者が、山に入り自然と戦う中で、獣となり、木となり石となり、山の神へと近づいていく姿に圧倒されます。

    正直かなり性描写が多いので大人向けな内容ですが、その描写についても当時の風俗、習慣を入念に研究されたらしく、当時の平民の生の生活感もリアルです。

    私は、読んだだけで映

    0
    2013年07月15日
  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    時代は大正初期、秋田県月山山麓。深い山に入り熊やカモシカなどの獣を猟とするマタギの物語。2004年直木賞受賞作。その時代の歴史物語としても民俗資料としても内容が濃く重厚な作品で読み応えがあった。マタギの家の次男として育った富治の生涯は波乱。東北の厳しい冬を思いめぐらしながら最初から最後まで圧倒されるような緊迫感と迫力をもって読み終えた。山歩きという趣味の世界でいろんな山に入る(入らせていただくと言ったほうがいいかもしれない)けれど、山への畏怖の気持ちを抱かざるを得ない。そこには自然への敬虔な気持ちが生まれている。

    タイミングよく今年(2013年)になって新聞に阿仁マタギの資料を世界遺産級に指

    0
    2013年01月24日
  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    直木賞アーンド山本周五郎賞受賞作です~。
    大正時代の東北を舞台にした猟師マタギの生き様を描いた長編小説です。

    いや~~~~~。
    これは凄かった!!

    最初読み始めたときは
    「え~?猟師のはなし~?」てな感じでちょっと躊躇したのよ。
    でも、それがどっこい。
    こんなに奥の深い小説を読んだのは初めてです。
    かなり感動してて興奮してて、何から感想を述べていいのか分からない。

    まず、驚いたのはマタギという仕事が、こんなにも神聖で先祖から仕来りや技、意志を代々受け継がれている仕事だとは思わなかった。ただ単に動物を殺して売りさばいてる仕事としてしか知恵がなかった自分を恥じました。
    殺生な仕事だからこそ、

    0
    2012年11月27日
  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本を広げると、大正三年とある。昔の話かぁ、しかもテーマがマタギって、どんだけとっつきにくいんだよ、と思いながら最初のペースは妙にゆっくり、読み返しながらなんとなーく世界観が分かりだす。
    そう、舞台は東北。出だしは山形県の月山麓、肘折温泉とあるものだから、妙に親近感が沸き、会話も東北弁。そのまま読んでも理解できる(笑)。

    「邂逅の森」は秋田県阿仁町打当のマタギ・松橋富治の生涯を描いた長編小説である。

    一流のマタギの組に属し、だが、まだまだ一人前になっていない富治が今の生活を続けることができなくなる。
    鉱夫になり、小太郎と出会う。そこで、小太郎が隠れて狩猟をする姿を目撃し、ここぞとばかりに小太

    0
    2012年11月27日
  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    マタギの富治、文枝、イク。東北地方の厳しい生活を描く。
    普段聞かれないマタギの世界がリアルに描かれている力作。
    富治の青年から老年になるまでのマタギを通した人生がすごい。
    それを支える文枝、イクも重要なキャラクターだ。

    0
    2012年08月17日
  • バイバイ・フォギーデイ

    Posted by ブクログ

    「邂逅の森」「箕作り弥平商伝記」
    での熊谷達也さんとして意識していたので、
    ちょっとびっくりした。
    主人公達が高校生、それでやっていけるのかな
    は 読み始めてすぐに杞憂に変わっていった

    ストーリーテラーとしての
    熊谷節はきちんと流れていて、
    「女子高校生」「憲法九条」「ロックンロール」
    の三題噺を見事に描いた傑作です

    0
    2012年07月01日
  • バイバイ・フォギーデイ

    Posted by ブクログ

    高校三年生が憲法改正のことを真剣に語り合う場面にはちょっとビックリ!というか違和感というか・・・高校生って本当にこんなに考え深く世の中を見ているのでしょうか、比して大人がだらしないのでしょうか。

    とにかくも、胸キュンモノのスパイスも効いて読みやすく涙する場面も多かった。
    カリスマ性ってことでも得るところの多い本でした。
    実在してるのなら私も追っかけちゃうんでしょうね。キュン!

    0
    2012年06月05日
  • バイバイ・フォギーデイ

    Posted by ブクログ

    憲法改正の議論が新聞を時たま賑わしてますよね。国民投票は18歳以上にしようとか、それだったら成人も18歳以降にしなければなんて。
    で、このほんの舞台はその世界が実現したもの。国民投票に参加する高校生が学園祭を通してその是非を考える。

    正直、そんなに考えたことはなかったけど、この本をきっかけになりました。

    皆さんも如何ですか? 昔、一世を風靡した角川の青春映画みたいで面白いですよ。

    0
    2012年05月19日
  • モビィ・ドール

    Posted by ブクログ

    御蔵島をモデルにした架空の島での、不思議なシャチとの邂逅。なぜか潜る事が出来なくなったダイバーの青年とイルカの研究者である主人公の女性との色恋的なことはどうでもよくて、ひたすらイルカやシャチの姿が素晴らしく、ついシャチの生態についていろいろ調べてしまった。

    0
    2012年03月03日
  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    直木賞受賞作ということで何の予備知識もないまま読んだ1冊。
    著者のことさえこの本を読むまで知らなかったのだけど本当にこの本に逢えて良かったと思わされた。

    0
    2012年10月23日
  • 漂泊の牙

    Posted by ブクログ

     雪深い山中のログハウスで愛する妻を野獣に食い殺された動物学者の城島。足首を噛み砕かれ、喉元を鋭い牙で刺され、腹を食い破られるという凄惨な現場写真をみて、その顎力の強さから大型犬の仕業ではないことを悟る。妻はオオカミに殺されたのか… しかしニホンオオカミははるか昔に絶滅しているはず。悲しみを胸の奥深くにしまい、城島は妻を殺した獣の正体を雪上に追う!
     ニホンオオカミの詳しい生態と、農業や林業を生業としていた人間との共生関係、そして山を生活の場としていた漂泊民・サンカ。昭和の初期には失われてしまっていたそれらの古き山村の民俗文化を織り交ぜながらも、城島が一本気な行動で謎の獣を追い詰めて行く闘いの

    0
    2017年08月15日
  • 氷結の森

    Posted by ブクログ

    熊谷達也の「森」シリーズの「マタギ」三部作の最終巻。
    これまでの『邂逅の森』や『相克の森』も良かったですが、本書もとても良い。

    主人公の矢一郎の性格が清々しい。
    樺太の自然と彼を取り巻く人物達が魅力的だ。

    熊谷達也、恐るべし。

    0
    2011年01月21日
  • 山背郷

    Posted by ブクログ

    再読です。
    読んでいて、やはり吉村昭との類似性を感じます。最終的には記録文学の方向に行った吉村さんですが、初期の作品は物語性が高く、そのころの吉村作品に近い雰囲気があります。ただ、熊谷さんの方がより奔放です。
    印象に残るのは「ひらた船」と「川崎船」。自然との厳しい戦いと対比するように人(夫婦間、親子間)に対する優しさが描かれた作品です。"厳しさ"と"優しさ"の対比、そこに熊谷さんの作品の力強さがあるのかもしれません。

    ====05-060 2005/06/08 ☆☆☆☆☆=====
    最初は読みながら「新田次郎に似てる」「いや、戸川幸夫か」「いやいや、や

    0
    2016年07月31日
  • 迎え火の山

    Posted by ブクログ

    熊谷達也の伝記ホラー小説。
    これまで読んだ『邂逅の森』『相剋の森』『ウェンカムイの爪』などとは異色の作品だ。

    舞台は東北地方であるが、ストリーは内田康夫シリーズのように歴史と現代とがつながっていく。

    主人公工藤が活躍する続編が出たら面白いかなと思います。

    山登りをしているときに、ふっと冷たい空気を感じることがある。
    単独登山がちょっと怖くなりそうな一冊です。

    0
    2010年02月28日
  • 相剋の森

    Posted by ブクログ

    いや~、とても面白く一気に引き込まれてしまった。
    『邂逅の森』と話が交わる部分もあり、『邂逅の森』を先に読んで両方を読むのがお薦めです。

    時代は現代、マタギの取材をする編集者の視点から、マタギ文化や自然保護が語られていく。
    最後の山巻きは臨場感があり、とても良かった。

    0
    2010年02月20日
  • まほろばの疾風

    Posted by ブクログ

    最近熱い東北小説家の一人の熊谷氏の傑作だと思います。
    著作では「邂逅の森」などの現代もののほうがメジャーな気がしますが、私的にはこちらの方が東北人ならではの本だと思うので好きです。
    歴史小説も大好きですし。

    0
    2009年10月04日
  • 相剋の森

    Posted by ブクログ

    マタギの物語。
    自然保護云々もあるけれど、あくまで対等に自然、熊と向き合って生きてってるんだろう。
    「熊を殺す代わりに、己の欲も殺す」
    わざわざ苦労して熊狩りをしなくても食べていけるこの時代に、あくまで狩りを続けていくのは、文化の継承もあるんが、それよりも先祖から受け継いだ血が騒ぐっていうところにこの物語の魅力が詰まってるように思う。
    文字通り、終盤の狩りの場面は読んでるこっちの血も沸騰してしまう迫力。
    まっとうな動物愛護団体や、害獣駆除に悩む地方自治体も登場し、自分のスタンスも考えさせられます。

    0
    2009年10月04日
  • 邂逅(かいこう)の森

    Posted by ブクログ

    何とも骨太な一冊だった。
    何かの雑誌の書評を読み、読んでみたいと思い、美和子さんにリクエスト。
    読み始めは秋田弁で書かれた会話やマタギの専門用語の出現で、少々もたつく。
    でも、読み進めるうちにそれが快いリズム感を伴ってくるから不思議だ。
    そう、これは大正時代に厳しい冬山で野生の獣たちと「共生」してきた東北のマタギを描いた作品。
    今は狩猟だけを生業とするマタギは存在しないという。
    しかし、ある時期だけに狩りをするマタギの人たちは今もいる。
    作者の熊谷達也はそんな人たちと一緒に過ごし、自分の目で身体でマタギを感じ、それをこの作品にしたという。
    私は東北の奥深い山の暮らしも知らなければ、もちろんマタ

    0
    2013年09月22日
  • 相剋の森

    Posted by ブクログ

    ご存知“森シリーズ”。

    「邂逅の森」が、一昔前のマタギの生き様を描いたのに対し、
    こちらは、“現代のマタギ”と“自然愛護”という対極の文化が、どうあるべきかを描いたもの。

    結論的なラストではないものの、だからこそ一考に価する。

    個人的には、またしてもマタギの男に惚れ込んでしまいました…。

    0
    2009年10月04日
  • 希望の海 仙河海叙景

    Posted by ブクログ

    震災前後の東北の沿岸部の街を題材にした短編集で、各話が緩くつながりつつ話が展開されている。それぞれの話で情景が思い浮かべて、主人公の感情を感じ取りながら読めるので体感では一瞬で読み終わった。うるっとくる話もあり、自身の感情の起伏をサクッと感じやすいので、また読書疲れしたら読み返してみたい。

    0
    2025年08月31日