熊谷達也のレビュー一覧
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マタギって全国区の名詞なんでしょうか?
マタギとは、主に東北地方で熊やカモシカを狩猟して生計を立てていた人たちの呼び名です。本書ではそんなマタギを生業とする男の半生を記しています。とはいえ現代人から遠い昔のおとぎ話などではなく、実に生々しい人間模様と恋愛、家族、故郷について語られています。
里ではまったくの俗人である若者が、山に入り自然と戦う中で、獣となり、木となり石となり、山の神へと近づいていく姿に圧倒されます。
正直かなり性描写が多いので大人向けな内容ですが、その描写についても当時の風俗、習慣を入念に研究されたらしく、当時の平民の生の生活感もリアルです。
私は、読んだだけで映 -
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時代は大正初期、秋田県月山山麓。深い山に入り熊やカモシカなどの獣を猟とするマタギの物語。2004年直木賞受賞作。その時代の歴史物語としても民俗資料としても内容が濃く重厚な作品で読み応えがあった。マタギの家の次男として育った富治の生涯は波乱。東北の厳しい冬を思いめぐらしながら最初から最後まで圧倒されるような緊迫感と迫力をもって読み終えた。山歩きという趣味の世界でいろんな山に入る(入らせていただくと言ったほうがいいかもしれない)けれど、山への畏怖の気持ちを抱かざるを得ない。そこには自然への敬虔な気持ちが生まれている。
タイミングよく今年(2013年)になって新聞に阿仁マタギの資料を世界遺産級に指 -
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ネタバレ直木賞アーンド山本周五郎賞受賞作です~。
大正時代の東北を舞台にした猟師マタギの生き様を描いた長編小説です。
いや~~~~~。
これは凄かった!!
最初読み始めたときは
「え~?猟師のはなし~?」てな感じでちょっと躊躇したのよ。
でも、それがどっこい。
こんなに奥の深い小説を読んだのは初めてです。
かなり感動してて興奮してて、何から感想を述べていいのか分からない。
まず、驚いたのはマタギという仕事が、こんなにも神聖で先祖から仕来りや技、意志を代々受け継がれている仕事だとは思わなかった。ただ単に動物を殺して売りさばいてる仕事としてしか知恵がなかった自分を恥じました。
殺生な仕事だからこそ、 -
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ネタバレ本を広げると、大正三年とある。昔の話かぁ、しかもテーマがマタギって、どんだけとっつきにくいんだよ、と思いながら最初のペースは妙にゆっくり、読み返しながらなんとなーく世界観が分かりだす。
そう、舞台は東北。出だしは山形県の月山麓、肘折温泉とあるものだから、妙に親近感が沸き、会話も東北弁。そのまま読んでも理解できる(笑)。
「邂逅の森」は秋田県阿仁町打当のマタギ・松橋富治の生涯を描いた長編小説である。
一流のマタギの組に属し、だが、まだまだ一人前になっていない富治が今の生活を続けることができなくなる。
鉱夫になり、小太郎と出会う。そこで、小太郎が隠れて狩猟をする姿を目撃し、ここぞとばかりに小太 -
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雪深い山中のログハウスで愛する妻を野獣に食い殺された動物学者の城島。足首を噛み砕かれ、喉元を鋭い牙で刺され、腹を食い破られるという凄惨な現場写真をみて、その顎力の強さから大型犬の仕業ではないことを悟る。妻はオオカミに殺されたのか… しかしニホンオオカミははるか昔に絶滅しているはず。悲しみを胸の奥深くにしまい、城島は妻を殺した獣の正体を雪上に追う!
ニホンオオカミの詳しい生態と、農業や林業を生業としていた人間との共生関係、そして山を生活の場としていた漂泊民・サンカ。昭和の初期には失われてしまっていたそれらの古き山村の民俗文化を織り交ぜながらも、城島が一本気な行動で謎の獣を追い詰めて行く闘いの -
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再読です。
読んでいて、やはり吉村昭との類似性を感じます。最終的には記録文学の方向に行った吉村さんですが、初期の作品は物語性が高く、そのころの吉村作品に近い雰囲気があります。ただ、熊谷さんの方がより奔放です。
印象に残るのは「ひらた船」と「川崎船」。自然との厳しい戦いと対比するように人(夫婦間、親子間)に対する優しさが描かれた作品です。"厳しさ"と"優しさ"の対比、そこに熊谷さんの作品の力強さがあるのかもしれません。
====05-060 2005/06/08 ☆☆☆☆☆=====
最初は読みながら「新田次郎に似てる」「いや、戸川幸夫か」「いやいや、や -
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何とも骨太な一冊だった。
何かの雑誌の書評を読み、読んでみたいと思い、美和子さんにリクエスト。
読み始めは秋田弁で書かれた会話やマタギの専門用語の出現で、少々もたつく。
でも、読み進めるうちにそれが快いリズム感を伴ってくるから不思議だ。
そう、これは大正時代に厳しい冬山で野生の獣たちと「共生」してきた東北のマタギを描いた作品。
今は狩猟だけを生業とするマタギは存在しないという。
しかし、ある時期だけに狩りをするマタギの人たちは今もいる。
作者の熊谷達也はそんな人たちと一緒に過ごし、自分の目で身体でマタギを感じ、それをこの作品にしたという。
私は東北の奥深い山の暮らしも知らなければ、もちろんマタ