熊谷達也のレビュー一覧

  • 希望の海 仙河海叙景
    震災の話をかわいそうとか悲劇だけではない描き方で心にずんと来ました。
    これまで読んだ熊谷達也の小説の登場人物の2011年3月11日前後の日常が描かれた短編集で特に印象的だったのは「鮪立の海」の守一の最期だった。あれだけ精悍で男らしい守一の晩年の姿はちょっとイメージと違ったが、清子と幸せな一生を送って...続きを読む
  • モビィ・ドール
    動物保護、捕鯨問題、性同一障害などの社会的な問題を含みつつイルカの可愛さや主人公のほのかな恋心も共感できてあっという間に読み終えました。
    シャチがイルカを襲うシーンはハラハラし通しでしたがなぜかシャチにも愛おしいと思う感情が芽生え、最後に仲間のシャチが困ったシャチを皆で迎えるシーンは胸に迫るものがあ...続きを読む
  • ティーンズ・エッジ・ロックンロール
    熊谷達也『ティーンズ・エッジ・ロックンロール』実業之日本社文庫。

    文庫で唯一未読だった仙河海市サーガの1作。高校生のバンド青春小説と言ってしまえば、それまでなのだが、田舎の小さな港町を舞台にした夢を追う若者たちの清々しい姿を描いた感動的な物語であった。

    舞台は2010年の宮城県仙河海市。東日本大...続きを読む
  • 我は景祐
    戊辰戦争モノ。何となく素通りしてしまった幕末期の歴史小説、ただただお勧めされたからってことで。
    読んでよかった。未知の世界?!っていうか。食わず嫌いっていうか。そういうのはやっぱり良くないね。

    幕末の歴史、少しだけスキルアップ出来ました。

    主人公の最期に涙。
    まさか、だけど 本当に死んじゃった。...続きを読む
  • 浜の甚兵衛
    熊谷達也『浜の甚兵衛』講談社文庫。

    宮城県気仙沼市がモデルの三陸の架空の町を舞台とする『仙河海サーガ』の最初の物語。

    時代は明治。海の男が自らの人生を賭け、己の進むべき道を切り開くという力強い物語。終わりなき果てしない道程、それが人生というもの……

    作中に登場する地名は現代の気仙沼市周辺の実在...続きを読む
  • 氷結の森
    敵も味方も、その懐に入ってしまうと、ただ見えるのは生きた人間。戦争は、ただそれが戦争だから殺しあう、悲しいことだ。矢一郎がカッコ良過ぎて惚れてしまう。無敵な上に硬派で優しかったら、モテるのは無理もない。マタギの研ぎ澄まされた感覚、空気感を邂逅の森で味わってから読んで良かった。相剋の森も読まなければ!
  • 山背郷
    昭和の東北を舞台にした短編集。

    「少しでも早く先を読み進めたい」とここまで思わせてくれた本は久しぶり。東北の田舎ではある意味当たり前だった”生活文化”を丹念に理解した上で、そんな生活者の一人である登場人物の想いを、派手ではないが丁寧な話の流れで描き、ほっこりとした感動短編や、ちょっと切ない短編とし...続きを読む
  • 邂逅(かいこう)の森
    橋本愛主演の映画『リトル・フォレスト』に、母親の本棚にあった本を読もうとした彼女が、「自分で読む本ぐらい自分で選びなさい」と母親から言われ、母親が買った本を娘は読ませてもらえないシーンがありました。私も自分で読む本は自分で選ぶようにはしているけれど、知人友人からなかば無理やり貸された本に感銘を受ける...続きを読む
  • 相剋の森
    相剋の森とは時代設定が変わり、
    現代の世の中で自然と人間はどうあるべきか
    というかかわり合いの話がテーマになっている。

    物語としても読ませるし、
    読み手として考えさせられるところも多い。
  • 邂逅(かいこう)の森
    近年のライトノベルでは「異世界転移モノ」が活況だそうで、本作もある意味で異世界転移モノといえる。
    主人公は親に倣いマタギとして狩りに出始めた若者であったが、とある事件により故郷を追われ、同じ山でも鉱山という別世界に飛び込む羽目になった。
    なんとか鉱夫として独り立ちし、弟分もできて落ち着いてきた頃、そ...続きを読む
  • 希望の海 仙河海叙景
    「リアスの子」以来の熊谷作品です。
    仙台に暮らし続けるからこそ、描ける情景。

    あれから、もう五年の歳月が流れた。
    よほど意識しておかなければ、かの地の「今」は
    かの地以外の人には、なかなか伝わりにくいことになっているような気がする。
    そんなときだからこそ
    読まれ続けてほしい作品である。
  • 光降る丘
    2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震で大きな被害を受けた栗原市耕英地区を舞台にした祖父と父親と息子の三世代を描いた物語。

    岩手・宮城内陸地震の翌年から東日本大震災を挟んで連載された物語は、多くの被災者に希望の光と生きることへの勇気を与えてくれる内容だった。直下型の地震に見舞われ、苦闘す...続きを読む
  • 調律師
    共感覚を持つピアノの調律師の鳴瀬玲司を主人公にした喪失と再生を描いた7編を収録した連作短編集。

    東日本大震災という決して忘れられない喪失の日を挟んで描かれた作品であるせいなのか、東日本大震災の前に書かれた最初の2編と後半の5編とでは明らかに味わいが変わる。特に主人公が過去に決別するという最終話には...続きを読む
  • 調律師
    ピアニストを断念し調律師として働き始めた主人公の物語。

    ピアノの音が臭いでわかる嗅聴という不思議な共感覚の持ち主、というちょっとファンタジーな感じ。

    物語としておかしいというわけではなく、むしろピアノの音が持つ表情や感情の揺さぶりをとてもうまく表現しているように思う。

    ピアノの音がいかに環境に...続きを読む
  • 相剋の森
    「邂逅の森」も面白いが、こちらもまた面白い。自然と人間がどんな距離感でいるべきか、筆者の言いたいことはそこなんだろう。きれいな直線で分ける論理は逆に危なくて、いい感じの落としどころを探っていく。そんなスタンスに共感する。マタギとしての話も面白いが、滝沢の悩み(妻との関係)など、伏線となる設定も面白い...続きを読む
  • 相剋の森
    熊谷達也さんの作品は「邂逅の森」で衝撃を受けてからたくさん読ませてもらいました。少し前に山背郷を読んでからの森シリーズ第一作目の本作に辿り着いております。ですから物語終盤の主人公のルーツの件で邂逅の森と繋がる部分などホント、ワクワクしながら読み進められ非常に面白く本作も読ませて頂きました。とにかく山...続きを読む
  • 銀狼王
    熊谷達也の狩猟シリーズ(?)
    幕末直後の北海道で、仙台藩から移転してきた猟師が幻の狼を追いかける。

    なかなか面白いものの、ちょっと物足りなさを感じました。
  • 邂逅(かいこう)の森
    石井光太氏がおススメしていた一冊。

    東北弁を文字に起こすのはとても難しい。鼻濁音・音としてはっきり発しない「息」のような発音。。。
    しかしながら、方言も含めてとても臨場感がある表現がちりばめられている。
    深々と雪が降り積もる季節に読めて良かった。
  • 邂逅(かいこう)の森
    大正3年頃から昭和初めにかけて秋田の山奥でマタギ(熊を獲る猟師)として活躍する富治の数奇な運命。若い日の地元の名士娘・文枝との恋、そして地元を追放されてからの鉱山夫、また猟師に戻っての日々と小太郎、その姉で妻になったイクとの出会い。そして猟仲間の鉄五郎などの脇役との出会いも魅力的です。小説の終盤での...続きを読む
  • 邂逅(かいこう)の森
    マタギって全国区の名詞なんでしょうか?

    マタギとは、主に東北地方で熊やカモシカを狩猟して生計を立てていた人たちの呼び名です。本書ではそんなマタギを生業とする男の半生を記しています。とはいえ現代人から遠い昔のおとぎ話などではなく、実に生々しい人間模様と恋愛、家族、故郷について語られています。
    ...続きを読む