熊谷達也のレビュー一覧
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かつて、プロのピアニストとして活躍しながら、事故により妻を亡くし、今はピアノの調律師として生きる主人公・鳴瀬 玲司。
彼は、共感覚の持ち主であった。
共感覚とは、例えば、音に色を感じる「色聴」や、音に匂いを感じる「嗅聴」など。
事故に遭う前は「色聴」であったが、事故後、亡くなった妻と同じ「嗅聴」となった。
様々な出会いを経て、彼の調律師としてのキャリアが高まっていくが、十年経っても妻の思い出が離れない。
そんな中、仙台市で遭遇した東日本大震災。
その巨大な爪痕は、彼の共感覚の力を奪ってしまう。しかし、それは、妻との本当の別れでもあった...(涙)。
最後、彼の新たな旅立ちに、幸多かれと祈りました
小説としては、途中から大きく展開が変わります(転調)が、後書きの「解説」を読みますと、作者である熊谷氏の境遇に納得が出来ました。
ぜひ、続編を期待したいです。 -
Posted by ブクログ
震災前の東北の一都市を舞台に、陸上競技を介した若い中学教師と転校してきた女子生徒の交流を描いた作品。
著者の経歴から(中学教師の経験)から自伝的な小説らしいと思っていたのですが、後書きにもそのような事が書かれています。
物語の途中で「熱血教師が出てくる学園ドラマとか、見すぎなんじゃないの?」なんて言葉が出てきますし、さらに開き直ったように「学園ドラマを馬鹿にしちゃいけない…人々の願望がデフォルメされて提示されているからだ」などと書かれてますが、確かに学園ドラマの雰囲気がプンプンします。でも、確かに爽やかな良い話です。
やや、説明調な文章が多いのは気になりますが。
『七夕しぐれ』の続編でもあるのですが、震災を機に著者自身が住んでいた気仙沼(=仙河海市)を舞台にしたシリーズを書き続ける様です。 -
Posted by ブクログ
熊谷さんは私にとって当たり外れの多い作家さんなのですが、これは当たりでした。
大戦末期の知覧を描いた作品。そう、特攻隊です。
ただ特攻隊員では無く整備士を主人公に置いたところが目新しく。
特攻隊員のために昼夜を忘れて修理・整備を行う一方で、それが結局は多くの若者を死地に送り込むことに矛盾を感じて行く主人公。その周りに次々に現れる様々なタイプの特攻隊員たち。
特攻隊員の心情を描くのは、どうしても無理がある感じがするのですが、それを送り出す整備士ならば忖度できるような気がします。それが、この作品がリアリティを感じさせるところかもしれません。
ISの自爆テロという狂気の沙汰を不思議な気持ちでニュースで見る昨今ですが、特攻も同じようなものです。そのした狂気が70年前の日本でも起きていた事を不思議に思います。
熊谷さんというと私の頭には「邂逅の森」などの動物ものが浮かぶのですが、この作品も読み応えがあり、どこかノンフィクション的な感じのする熊谷作品が私の好みなのかもしれません。