【感想・ネタバレ】海峡の鎮魂歌のレビュー

あらすじ

昭和9年春、函館の潜水夫・泊(とまり)敬介は、時化(しけ)る海と吹き荒れる風に妙な胸騒ぎを感じていた。予感は的中し、猛火が街を襲う。妻子と母を探し歩く敬介だったが。さらに昭和20年の空襲、昭和29年の洞爺丸沈没。立ち直ろうともがく敬介に、運命は非情な仕打ちを繰り返す……。仙台在住の著者が震災から半年後、悩み迷いながら筆をとった、再生と希望の長編小説。『烈風のレクイエム』改題。

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Posted by ブクログ

主人公 泊敬介は函館の潜水夫。昭和9年の函館の大火事で妻子と母親を失う。昭和20年の函館の空襲で大怪我を負い、左足がやや不自由になる。そして昭和29年の洞爺丸沈没で九死に一生を得る。次から次へと災難に襲われる。
そんな災難はなかったほうが勿論いい。けれど、振り返って見た時に、それがあったから、今の自分がこうしていられる、と気づく。
でも、それは何もせずにいたら得られないのだと思う。

「人と人を結びつける絆は、人生の苦難や嵐を乗り越えれば乗り越えただけ、いっそう太くて強固なものになる。ただし、その絆は、人の努力のみによって作られる。」
と敬介の言葉にあるように。

時に投げやりになることもある。生きていても辛いだけだと。けれど、それでも生きて行く。それはきっと1人ではないと分かっているから。何があろうと傍にいてくれる人がいるから。

次々と敬介を襲う苦難に、そこまでしなくても、と思う。でも、だからこそ第三部「鎮魂」のラストに希望を想う。あまりにも都合良すぎる設定かもしれないけれど、現実にももしかしたら起こりうるかもしれない、と静かな感動に包まれる。
読んで良かった。

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2025年04月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大先輩のおすすめ本。普段ならあまり手に取らないタイプの本だったが、これは読んでよかった。
函館の潜水夫、泊敬介を主人公に、函館の大火から洞爺丸沈没事故まで、運命に翻弄される家族が描かれている。終盤いろいろなことが繋がっていき、過去のしがらみや苦しみが解消されていくのに、救われる。過去に踏み出すことが未来につながっていて、希望の持てる話だった。

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2016年06月12日

Posted by ブクログ

昭和の函館を舞台に、函館大火、大空襲、洞爺丸沈没と3つの大災害を生き延びた夫婦を主人公にした物語。
やはり熊谷さんは、平穏な世界を舞台にしたものより、こうした緊迫感を描くのがお得意なように思います。
もっとも次から次に起こる危機は面白いんですけどね、少々やり過ぎという気もします。特に最後の息子と娘の話はちょっと強引すぎます。その分現実感に欠け、物語として安易な感じが残ってしまうのです。

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2016年05月08日

Posted by ブクログ

昭和の初めの函館を舞台にした海の男の物語。

昭和9年の函館の大火、昭和16年の空襲、昭和29年の洞爺丸台風と過酷な運命に翻弄されながらも、自らの力で未来を切り開いた泊敬介の生きざまを描く。

東日本大震災後に書かれた小説だけに著者の哀しみや苦悩が行間に垣間見ることが出来る。もしかしたら、救うことの出来なかった多くの命への鎮魂のための小説なのかも知れない。

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2016年03月07日

Posted by ブクログ

潜水とか海のテーマが自分にはあんまり刺さらんかったけど、時代背景や歴史をよく調べ上げて書かれた小説やなとは思う。キャラクターは、主人公敬介はあまり好きではないが他の登場人物が魅力的だったし、最終的に相関図がコンパクトで面白かった。

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2025年05月07日

Posted by ブクログ

海で生きていく主人公がさまざま形で海に向き合っていく。函館の大火と荒れる海、戦争の海の特高隊、青函連絡船洞爺丸事故、その中、子供たちがつながっていく。後半、若干駆け足に感じたが、読み応えのある作品でした。

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2022年09月18日

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