熊谷達也のレビュー一覧
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主人公 泊敬介は函館の潜水夫。昭和9年の函館の大火事で妻子と母親を失う。昭和20年の函館の空襲で大怪我を負い、左足がやや不自由になる。そして昭和29年の洞爺丸沈没で九死に一生を得る。次から次へと災難に襲われる。
そんな災難はなかったほうが勿論いい。けれど、振り返って見た時に、それがあったから、今の自分がこうしていられる、と気づく。
でも、それは何もせずにいたら得られないのだと思う。
「人と人を結びつける絆は、人生の苦難や嵐を乗り越えれば乗り越えただけ、いっそう太くて強固なものになる。ただし、その絆は、人の努力のみによって作られる。」
と敬介の言葉にあるように。
時に投げやりになることもある -
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熊谷達也『希望の海 仙河海叙景』集英社文庫。
『仙河海サーガ』の1作。仙河海市を舞台にした10編の短編から成る連作集。
敢えて2011年3月11日の東日本大震災当日は描かずに前震の起きた3月9日と東日本大震災後の仙河海市に生きる市井の人びとの心情を描いている。
登場人物の何人かは東日本大震災の津波被害で命を落とし、残された人びとの苦しみが描かれるのだが、読んでいて辛くなる。様々な個々人の事情もあるが、ただでさえ過疎化が進む仙河海市で生活していくのは大変なことなのに、そこに未曾有の大災害が街を襲い、生活は一変してしまうのだ。
仙河海市のモデルは気仙沼市である。東日本大震災の津波により壊滅 -
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「仙河海」は気仙沼をモデルとした架空の町で、聞き慣れない「叙景」は、自然の風景を詩文に書き表すことの意だそう。帯には〈「あの日」を描かない(10編の)連作短編集〉とあります。2016年刊行、1編追加して2025年に文庫化されました。 様々な人々の何気ない日常は、どこにでもある暮らしです。ただこれらの震災直前の描写は、起きてしまった大災害を知る読み手にとっては、自ずと「あの日」のカウントダウンとなり、それまでの当たり前の生活が、よりかけがえのないものとして伝わり、胸に迫ります。
連作短編は、とかく物語の深みに欠ける印象になりがちですが、本作はより多様な日常を描くこと、それぞれの短編の登 -
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ネタバレ梶山浩介
エルソレイユ仙台に電撃加入する。長年ヨーロッパで活躍し、ツール・ド・フランスにも出場したレジェンド。
佐久間美佳
八年前、梶山が「ツール・ド・フランス」に出場した時から応援に来ている。ワインのネット通販会社「ヴィーノ・デル・ソル」を経営している。エルソレイユ仙台の新たなメインスポンサー。
ドミニク
監督。
アラン・ルロワ
昨年まで梶山と同じチームで走っていた。
三橋
エルソレイユ所属。チーム発足の翌年、他チームから移籍してきた。二十八歳。
佐山
エルソレイユ所属。二十八歳。クライマー。契約更改にならなかった。群馬ギャラクティカに移籍。
小林湊人
エルソレイユ仙台所属。二十 -
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感想を書くにあたり便利な言葉がある
「凄い」だ!
この作品は凄い!
(小学生の読書感想文か)
もうひとつ高度な言葉を使ってみよう
「圧巻」だ!
この作品は圧巻だ!
(中学生の読書感想文になりました)
もっとわかりやすく言ってみようか
「めっちゃスゲェー」だ!
この作品めっちゃスゲェー!
(大人な感想文になりました)
とにかくこれだけで『邂逅の森』が素晴らしい作品ということは伝わるでしょ!
マタギとして生きる男の人生、女とのチョメチョメ、そして熊との死闘を描いた物語
詳しくは他の人のレビューを参考に!
で、私もこれから実践してみようと思います
仕事でもしもの時は、 -
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熊谷達也『むけいびと 芦東山』潮文庫。
仙台藩の奥地、磐井郡渋民村に産まれた仙台藩儒学者の芦東山の人生を描いた歴史人物小説。
熊谷達也は『仙河海サーガ』をはじめ、気仙地方や両磐地域を舞台にした作品を多く書いている作家である。
芦東山の出生地の磐井郡渋民村は、現在の岩手県一関市大東町である。自分は10年程前まで一関市に30年余り住んでいたのだが、芦東山という人物は名前すら知らなかった。
なかなか面白い作品だった。江戸時代に磐井郡の渋民から学問を極めるために徒歩で仙台、さらには江戸、京都へと足を運ぶことは並大抵のことではなかったろう。
今も昔も変わらずに真っ直ぐに信じることを貫くことは難 -
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ミュージカル『刀剣乱舞』 〜陸奥一蓮〜 を観に行くにあたって、蝦夷の文化や関連の歴史に一度触れておきたくて読んでみたところ、足がかりとしてちょうど良さそうだった。
蝦夷の文化・習俗についてが、信心深くない現代の日本人の目線から見ても噛み砕きやすいくらい理性的に描かれていて、大和側の歴史の動きも最低限振れているので自分の中での時代勘の同期もとりやすかった。
こういった歴史上の人物や土着信仰を持つ人々を描く本に対しては、今まで、少年漫画の主人公によく見られるような、良い面ではアツく、悪い面では考えなしな人物像の主人公が書かれるイメージがあった。私自身はそのような人柄だと感情移入しにくいので少し -
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黒沢巧也
五十歳を目前にしてエレキギターを購入する。高校生の頃、ギター小僧だった。地元仙台ではそこそこ大きな印刷会社に勤務。第二企画室長。G大五大バンドのひとつ「パープル、ヘッド」に所属していた。
妙子
巧也の妻。
大輔
巧也の一人息子。大学二年生。ベースをやっている。
杉本亜紀
巧也の部下のひとり。入社五年目の若手デザイナー。アッちゃん。
小畑亮二
巧也の部下。昨年秋に結婚したばかり。
菅野多希子
入社十二年目の中堅社員。タッキー。
斎藤
ギターショップ『ROCK GARAGE』の長髪プラス金メッシュの店員。巧也のバンドのサイドギターを引き受ける。
奥山
ギターショップ『ROC -
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私は新撰組が好きで維新志士が大嫌いです。
新撰組◎
薩摩△
長州×
勝海舟××
一橋慶喜×
西郷隆盛△
松平容保○
坂本龍馬××
桂小五郎×
高杉晋作×
榎本武揚△
吉田松陰××
軍事クーデターにより政権を転覆させた薩摩と長州の武力は、江戸城無血開城という肩透かしを受けて、行き場を失った凶刃の矛先が北に向けられる事となる!!!
会津と仙台を中心とした奥羽列藩同盟の発足から戊辰戦争へと物語は進んでいくが、今まで全く注目されなかった実在の人物(Wikipediaを書くなら今のうちです!)若生文十郎を主人公として歴史の流れと官吏の葛藤が描かれる!!!
宮城県が舞台になっているので、宮城県人は読 -
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本書を読みながら、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』(ピアノ調律師の青年の成長物語 2016年本屋大賞受賞作)を思い出していました。
本書の単行本は2013年刊なので、『羊と鋼の森』より少し前ということになりますね。
7話からなる連作短編集で、ピアノ調律師・鳴瀬の再生の物語です。
元ピアニストの鳴瀬は、10年前、事故により妻とピアニストとしての将来を失い、以来、音から匂いを感じ取る「嗅聴」という共感覚を得ています。
連続する作中、異なる状況下での微妙な音や匂いの繊細さが上手く表現されています。
鳴瀬は、亡き妻がもっていた「嗅聴」と調律の仕事を辿ることになります。様々なピアノ・依頼主と出 -
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小惑星が地球に激突するというので外宇宙に向けてテラフォーミングを目的として旅立つもの、またシェルターを作り生き残りを賭けるもの、そして意識をサイバースペースに移して生きていくもの、様々な人間模様を描き出すポストアポカリプスなSF小説。
普段SFってあんまり読まないのでたまに読むと新鮮でとても楽しい。設定としてはがっつりとしたSFでありながらも結構生々しい人間ドラマがまたリアルでいいですね。技術はSFでも結局は人間が使うものだしねえ。
「死」という概念が非常にあやふやな感じが興味深い。意識はデータであって、消失してもバックアップから理リロードするし、肉体は凍結保存されていてもなくなったらなくなっ