この人は東北地方の作家で、東北にこだわった作品を書いております。
森三部作はかなり面白かったですし、短編集も味があってよかったです。
特に東北地方に広がる森の雰囲気や野生動物と対峙する緊張感なんか、いつもドキドキさせております。
で、今回の『荒蝦夷』。
これは平安時代の坂上田村麻呂の蝦夷討伐の前夜
...続きを読むを書いた作品です。
同じ系列の作品で『まほろばの風』っていうのがありますが、これは坂上田村麻呂にやられる蝦夷の英雄アルティを主役にして書いているのですが、この『荒蝦夷』はアルティの父親のアザマロを主人公にして書いております。
同じような内容で同じような話なのですが、『荒蝦夷』のほうが好きですね。
内容も同じようなのですが、結構違ってきております。
『荒蝦夷』は蝦夷の大反乱が起こる前に終わっております。
両方の作品に共通しているのは、蝦夷と大和は別のものであるという認識です。
別のものだから差別みたいなものもないっているか、最初から違っているから違うものとして接しているっていうかんじですね。
そこで駆け引きとか争いとかが発生する、異文化同士の争いですね。
特にアザマロの残虐さを乾いた描写で書いているところはよかったです。
今度はアルティの反乱が終わった後に、この奥深い森林の中でどうなって奥州藤原氏の栄華に至ったのか、ってかんじの物語を書いて欲しいなぁ、と思います。