熊谷達也のレビュー一覧

  • 邂逅(かいこう)の森
    シャトウーンと比較されていたが、この本は比較すべきではない、全くジャンルの違う本だと思う。一人のマタギの半生を丁寧に描いた作品。
  • 山背郷
    自然と対峙する為に自身の生業に命が掛かっている人達の短編集。
    命が掛かっているが為に自然からの啓示を真摯に受け止めるが、逆に油断した時に大きなしっぺ返しを喰らう可能性がある。
    そして自然を知る為に五感や、言い伝えや先人達の知恵を大切にする人達のお話。
  • 氷結の森
    マタギ3部作と銘打つからには熊を、マタギを描いて欲しかったのが正直な感想、、、。帝国主義が跋扈する世界で領土の支配が変わる事で、そこで生きる人達が翻弄される物語。個々の人達は国を越え思いやりを持ち付き合う事が出来るのに、国を言う単位になると何故相手を思いやる事が出来ないのか?
  • まほろばの疾風
    自然の恵みを戴く事に感謝し祈る蝦夷。
    反対に自然の脅威を恐れ祈る大和民族。
    同じ祈りだが根底の違いが互いを相容れないものとしてしまう。
    凄い興味深い内容だったけれど、あまりにも駆け足で物語が進んでいってしまったのが少し残念。
    数巻に渡りじっくり描いて欲しいくらい魅力的な話でした。
  • ウエンカムイの爪
    熊谷達也ならではの野生の描き方。
    人を喰ってしまう悪い熊『ウエンカムイ』は、自然への畏敬の念を忘れている現代人に警鐘を鳴らす存在なのではないでしょうか?決して説教臭い作品ではないけれど、根底にはそんな思いが込められているような気がします。
  • 邂逅(かいこう)の森
    厚い。
    が、波乱万丈な主人公の人生なので、章ごとに「それからどうなっちゃうの?」と読み進めることができる。
    マタギということばでしかイメージできなかった存在が、血肉を持って浮かび上がってくる。知ることの快感があった。

    残念なのは・・・女性が男性目線の「夢」的な描き方だった点。
    正直と言えば正直な書...続きを読む
  • 漂泊の牙
    獣臭さが伝わってくるような小説。
    野生や自然を描きかたが抜群の作家さんですね。
    内容は若干都合が良いけれど、過去から現在につながる風習や言い伝えが絡み合う所はさすがです。
    現代人が忘れてしまった自然への畏敬の念を思い出させるような話です。
  • 迎え火の山
     お盆に山から下りてくる先祖の霊を迎えるための祭りを開催しようとする村の青年団と、先祖の霊に混じって悪い死霊(鬼のこと)が降りてきてしまうから阻止しようとする霊能者たちの戦いが主な内容です。
     
     こんなふうに書くとサイキックウォーズみたいな感じですが、ワクワクドキドキというより、嵐の前の静けさとい...続きを読む
  • 漂泊の牙
     東北や北海道などの民族や風土をモチーフとした作品に定評のある熊谷達也の小説。他の作品に比べ方言を使っておらず、非常に読みやすいのが特徴と言えるだろう。
     野犬に妻を殺された男がその犯人を追う。というストーリ。テンポが良く、冬山の描写も非常に上手い。
     しかし最後の展開が少し強引。核心部も、狼の生態...続きを読む
  • 氷結の森
    歴史的事実を背景にして物語を作る。
    その時代の文化や国際関係まで調べ上げ、物語を作り上げていく作業は本当に地道で大変な作業なんだろうなと思う。

    権謀術数が渦巻く中で、誰よりも真正直に生きる主人公は、魅力にあふれている。
    真正直な主人公に振り回される女性の姿も共感を呼ぶ。

    どこまで、男と女はわかり...続きを読む
  • 荒蝦夷
    この人は東北地方の作家で、東北にこだわった作品を書いております。
    森三部作はかなり面白かったですし、短編集も味があってよかったです。
    特に東北地方に広がる森の雰囲気や野生動物と対峙する緊張感なんか、いつもドキドキさせております。

    で、今回の『荒蝦夷』。
    これは平安時代の坂上田村麻呂の蝦夷討伐の前夜...続きを読む
  • 群青に沈め
    重苦しいテーマを、
    重苦しくない軽いタッチで描いているのは、
    万人受けというか、
    戦争アレルギーの若い人も受け入れやすくていいのかも、
    と、思わなくもないけれども、
    ワタシ的にはこの軽さが不快。

    新しいとか、瑞々しいとかいう評価はどうなんだ??
    納得いかないんですけど。

    あえて伏龍に目を向けたこ...続きを読む
  • 群青に沈め
    終戦間際の予科練上がりの特攻隊員たちの日常。
    日常の感情が淡々と描かれ、ストーリー的に派手な起伏はない。
    次第に戦争というものに疑問を持ち始める過程がリアルではあるが、なにせ淡々としているために、迫ってくるものがない。
    主人公が少年だから文体が簡易なのだろうか?他の作品もこうなのだろうか?
    戦争の無...続きを読む
  • 邂逅(かいこう)の森
    この本は長らく未読で積まれていた。
    傑作であることは直木賞と山本周五郎賞のW受賞という快挙。
    数々の書評で知っていたが
    その厚さとマタギの話であるということで
    読み始めるのを躊躇していた。
    しかし。
    読み始めたら厚さをものともせず
    読み通してしまった。
    この本はマタギの青年、松橋富治の物語である。
    ...続きを読む
  • 漂泊の牙
    この人の作品はスリルがあって最初は凄く引き込まれるんだけれど、ラストが拍子抜けの感じがある。迎え火の山もそんな感じ。
    こういう作品でも恋を絡めてくるところがけっこう好きだったりする。
  • 相剋の森
    邂逅の森が圧倒的だっただけにこちらはそのおまけみたいな印象。。。つまらなくはない。しかしあの密度がもう一度ほしい!
  • 相剋の森
    ちょっとだけマタギの世界や熊の事をを知っている人なら
    とても面白く読めて、解釈も深まる作品だと思う。
    この本を手にとる前に
    まずはマタギのことをちょっとでも知ってから。
    そして「邂逅の森」を読んでからトライすると
    面白さ倍増。
  • 氷結の森
    これまでの繋がりからは表面的には離れている感じ。自然との繋がりよりは、人間の内面について書かれているみたい。
    それにしても、樺太で日本人が殺されるという歴史があるとは知りませんでした。
    少し勉強しなければならないですね。
  • 七夕しぐれ
    小学生の少年が転校先で得た友人達二人とともに、根深く残る差別、いじめ、大人の押し付けに抗いながら成長する一夏の物語。
    昭和40年代のややノスタルジックな雰囲気と、当時の少年達の純粋な心に触れることの出来る作品。
    子供だからこそ感じる理不尽さや無力感。それでも立ち向かおうとする力強さがまぶしい。
    読ん...続きを読む
  • モビィ・ドール
    熊谷さんと言えば東北というイメージが有り、その中でもまたぎなどの人物を中心にすえ、自然を舞台にした迫力のある小説が多く有ります。
    この作品は東北から離れ、しかも山ではなく海を舞台としていますが、やはり自然を舞台にしたという意味で、熊谷さんの持ち味を生かした作品です。
    登場人物の設定が、例えば潜水中の...続きを読む