熊谷達也のレビュー一覧

  • 荒蝦夷
     古代東北史・蝦夷史のターニングポイントとなった780年の「伊治呰麻呂の反乱」に至る過程を描いた歴史小説。主人公の呰麻呂の残虐で野性的なキャラクターに綺麗ごとでないスケールの大きさを感じるか、単なる野蛮さを感じるかで評価は割れよう。史料不在で不明なところを大胆な仮想で埋めたり、明らかな史実改変を行っ...続きを読む
  • 稲穂の海
    熊谷達也の稲穂の海を読みました。

    昭和40年代の仙台近辺を舞台に、その時代に生きた人々を描いた短編集でした。
    方言をとりまぜて描かれていてその時代の空気が感じられる物語でした。

    現在ではこの時代の名残もほとんどなくなってしまっていて、昭和は遠くなったなあと思ったのでした。
  • 調律師
    第6章の転調は、正直しっくりこない。解説を読んで作家さんの気持ちは理解できたけど、私は、震災がなかったらどんなエンディングになってたのかなぁ?と思うし、それが読んでみたかった。
  • 調律師
    2010年から2012年にかけて「オール讀物」に発表された7つの連作短編。
    かつての天才ピアニスト、交通事故で妻を亡くし、自らも以前のような演奏ができなくなって、今は義父の元で調律師として働く主人公がピアノを通して様々な人生に触れ合います。
    2012年8月に発表された最後の2編から話が急に変わります...続きを読む
  • 希望の海 仙河海叙景
    そこにあるのは「圧倒的な日常」。
    年度末だから移動があったり母親が退院したり、兄妹は両親から離婚を告げられたり、人生の契機と言えなくもないが長い人生から見れば「そんなこともあったね」で済むようなこの日と繋がった翌日があるはずだった。

    教員として赴任した経験のある著者が震災直後の気仙沼を訪れて「もは...続きを読む
  • 調律師
    ピアノの音と共に臭いを感じることができる不思議な共感覚を持った調律師を巡る物語。

    かなり久しぶりに著者の作品を読んだ。
    震災が著者に大きな影響を与えたであろうことは理解できるが、解説で本人も解説者も認めているように物語の途中に震災を絡めてくることに唐突感が否めない。
    小説の内容としても特筆すべき点...続きを読む
  • 銀狼王
    熊谷達也さんの作品が大好きで、わりと色々読ませもらっています。
    マタギ、羆、狼などを中心に東北や北海道を舞台にした作品群は江戸から明治へそして現代へと次第に変わって行く時代や環境の変化の中で自然やケモノとの関わり合いながらそこに暮らす人間たちの悲喜交々や艱難辛苦を描いた作品がとても土臭さく、読み進め...続きを読む
  • 漂泊の牙
    期待とは違う展開で少し残念。動物モノも民俗学的なモノも好きなだけに惜しい。

    無理に、現代ミステリに仕立てる必要は無かった。それでも水準はクリアしてると思うし楽しめた。直木賞を取っている作品もあるので、そちらも期待して読みたい。
  • 七夕しぐれ
    主人公よりも同級生のユキヒロとナオミが気になります。因習という本人たちには関係のないことが、小学生までも巻き込んでしまう。理屈では分かっていてもなかなか変えることができない世界。子供たちの純粋な気持ちが重い内容をさわやかにしてくれる。続編「モラトリアムな季節」に期待!
  • モラトリアムな季節
    前作が良かっただけに少々残念!モラトリアムな時期が長すぎるような気がする。前作との繋がり無く単作だったら、途中放棄でした。
  • 氷結の森
    3部作の完結というよりは別な物ととらえた方が入り込めると思う。時代設定を含めた背景の描写が緻密で物語をイメージしやすい。波瀾万丈の人生!主人公の精神力に感銘!
  • 山背郷
    東北という地の厳しさ、優しさ。同じ日本でもその地域の空気感はまるで違う。各編様々な物語であるが、全体を通して人間の思いの強さを感じさせてくれる。
  • 迎え火の山
    この人の作品はどれも熱い。
    日本の原風景という言葉の似合う作品が多い。
    今回は少し、高橋克彦テイストだが。

    改めて、古代の呪術がなぜ、ここまで生活とつながっていたのか、腑に落ちる思いだ。

    好みもあるだろうが、自分には、この人の作品はどれも、
    単なるエンタメではなく、ミステリの範疇には入らないよう...続きを読む
  • 氷結の森
    マタギ三部作の3作目。元猟師で日露戦争従軍兵だった男の逃亡劇と女たちとのロマンスを描いたハードボイルド。三部作のなかで最もカッコいいマタギが、ゴルゴ13ばりのライフルさばきを見せる。おすすめ。
    舞台は異なるが、映画『八甲田山』を先に見ておくと物語のイメージがグッと深まります。
    しかし、これも映画化さ...続きを読む
  • 相剋の森
    マタギ三部作の1作目。現在を生きる熊追い人たちの話。マタギの男性とジャーナリストの女性の視点と立場で、それぞれの仕事と生活の有り様から現在を生きていく難しさが描かれる。おすすめ。
    尚、第2作は直木賞受賞の『邂逅の森』、第3作は『氷結の森』であるが、ストーリーのつながりはない。
  • 稲穂の海
    昭和40年代の宮城県に住む人々の暮らしぶりを描いた短編集。

    方言使いで書かれているものもあり、非常に情緒豊か。
    昔話『梅太郎』が良かったな。
  • 漂泊の牙
    入院中に読みました。暇でしょうがない入院生活の中で一気に読んでしまいました。主人公が犯人の生き物に憎しみをぶつける訳ではなく、そのような生き物を造った人間に復讐をするというところが良かったです。
  • ウエンカムイの爪
    「名前が熊谷だからクマから入りたかったんです!」
    という氏のデビュー作です(言ってません)。なんか
    テンポのいい熊谷作品て不思議な感覚ですね。
  • ウエンカムイの爪
    「ヒグマと人間」は私の好きなテーマ。つまりは人間にとっての神、人間にとっての恐れるべき存在というもの。ただつくりとしては単調。新人っぽいともいえるが。「邂逅の森」を書いた重厚な熊谷達也とは思えないほどの軽さ。もうちょっと主人公及び准教授の内面を描くべきだ。一方でどうでもいい大学生たちの描写が細かかっ...続きを読む
  • 漂泊の牙
    3.5点
    もっと、動物と自然の冒険小説を期待してなので、う〜ん、
    前半は面白かったが、後半は無理がある。