熊谷達也のレビュー一覧
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著者の実体験に基づく小説。
昭和40年代。小学生五年生の主人公は、父の仕事(当時まだ地方では珍しかった塾の経営)のために宮城県の地方都市から仙台市に引っ越す。彼が住んでいるところは実は被差別部落の人々が住む場所だった。
そうとは知らずにヒロユキとナオミの二人と親しくなった主人公は学校でいじめを受けるようになる。
昭和の学校の雰囲気がよく出ている。結局親の差別意識が子どもに影響している。親が差別しているから、子どもも差別して当然だと思うのである。
よくできていて読みやすい。
しかし私にはエンタメが過ぎるかな、という気がした。特にキャラクター設定。
ナオミは賢い美少女で、いじめるクラスメイト -
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湊人は最初、陸上部で活躍していたが、脚を故障してしまった。リハビリのつもりで、自転車を使った練習をしていくうちに、いつしか、ある自転車の監督の目に留まり、チームに所属することになった。数年後、チームに世界で活躍されていた選手が加入してきた。なぜ、比較的弱いチームに入ってきたのか?選手の加入により、湊人は自転車選手として大きく変わっていく。
自転車レーサーの物語で、すぐに浮かんだのが、近藤史恵さんの「サクリファイス」シリーズです。
どうしても、比較してしまうのですが、こちらの作品はミステリーはなく、純粋なスポーツ小説となっています。
なので、ちょっと物足りなさが無いかなとも思ってしまいました -
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熊谷達也『揺らぐ街』光文社文庫。
宮城県気仙沼市がモデルの三陸の架空の町を舞台とする『仙河海サーガ』。自分がよく知る唐桑町がモデルの唐島町が登場するからには期待が高まる……
冒頭に東京での東日本大震災が描かれるが、どうにもしっくり来ない。文芸編集者の山下亜依子を主人公に東日本大震災の被災地である仙河海市出身の作家・武山洋嗣を廻る物語なのだが……
東日本大震災にも、仙河海市とも少し距離を置いたような、それでいて作家の世界という楽屋オチのようなストーリーに、どこに自分の感情の置場所を作れば良いのか戸惑う作品だった。
信頼できる、大好きな作家ではあるが、この作品だけは好きになれなかった。 -
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今までであればたぶん自分からはなかなか手を出さないジャンルの小説だったが、「幻の漂白民・サンカ」を読んでいてその話をM浦さんにしたら、「ちょうどこんなのを読んでいるよ」と言って貸してくれた。
タイトルからしてもう少し山の民や生活によっているかと思ったが、実際には「旅マタギ」「御犬殿」「皆白」以外はどちらかというと海や川といった水周りを舞台とした作品だった。「潜りさま」「旅マタギ」「御犬殿」「ひらた船」がよかったかな。もう少し民俗学的なところに寄っていてくれると個人的にはもっとおもしろかったんだけどな。
解説を読むとだいたいの作品が昭和20年代の東北を舞台にしているとのことで、ふと、そういえ -
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ネタバレバンド活動や音楽が話の中心になるのかな、と期待していたのですが、匠と遥の恋愛話がメインのお話でした。青春小説としてはありなのかもですが「音楽もの(バンドもの)」と期待したいち読者としては、物足りなさが先立ってしまうのは否めません。
また、その恋愛話もうまくいきすぎていて、好きになっていくきっかけや流れが今ひとつピンとこなかったりしました。そのあたりに都合の良さを感じてしまいます。
ただ、話としては読みやすく、また分かりやすかった点は良かったです。前作にあたると思われる「オヤジ・エイジ・ロックンロール」も機会があったら読んでみたいです。 -
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熊谷さんが「東北」に戻ってきました。
「ウエインカムイの爪」の続編に当ります。「爪」の主人公であるカメラマン・吉本は今回の主人公・美佐子の相方として主要な役割を果たし、またヒロインだった玲子も登場します。
ライターの美佐子を中心に、熊猟を行うマタギ達(+吉本)と熊を生かそうとするNPOの三角関係で話が進みます。その中で、自然保護を巡って、様々な意見が交錯します。
相変わらず、力強い作風です。物語に引き込む力は持っています。しかし、今回は焦点が多すぎて、かえってぼやけてしまったようです。幾つかのサブストーリーを切り捨ててしまえば、もっとスッキリした力強い作品になれたと思います。
そんな訳