熊谷達也のレビュー一覧

  • 相剋の森

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    マタギというのを初めて知ったし、登山経験もほとんどないので、どれだけ理解できてるかというのはあるが、興味深く読んだ。「山は半分殺してちょうどいい」という言葉はパンチラインだと感じる。伝統的な熊狩りと野生動物との共生・保護に関して読みながら学んでいった。

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    2022年06月03日
  • 七夕しぐれ

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    著者の実体験に基づく小説。

    昭和40年代。小学生五年生の主人公は、父の仕事(当時まだ地方では珍しかった塾の経営)のために宮城県の地方都市から仙台市に引っ越す。彼が住んでいるところは実は被差別部落の人々が住む場所だった。
    そうとは知らずにヒロユキとナオミの二人と親しくなった主人公は学校でいじめを受けるようになる。

    昭和の学校の雰囲気がよく出ている。結局親の差別意識が子どもに影響している。親が差別しているから、子どもも差別して当然だと思うのである。

    よくできていて読みやすい。
    しかし私にはエンタメが過ぎるかな、という気がした。特にキャラクター設定。
    ナオミは賢い美少女で、いじめるクラスメイト

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    2022年04月17日
  • エスケープ・トレイン

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    湊人は最初、陸上部で活躍していたが、脚を故障してしまった。リハビリのつもりで、自転車を使った練習をしていくうちに、いつしか、ある自転車の監督の目に留まり、チームに所属することになった。数年後、チームに世界で活躍されていた選手が加入してきた。なぜ、比較的弱いチームに入ってきたのか?選手の加入により、湊人は自転車選手として大きく変わっていく。


    自転車レーサーの物語で、すぐに浮かんだのが、近藤史恵さんの「サクリファイス」シリーズです。
    どうしても、比較してしまうのですが、こちらの作品はミステリーはなく、純粋なスポーツ小説となっています。
    なので、ちょっと物足りなさが無いかなとも思ってしまいました

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    2022年02月24日
  • ティーンズ・エッジ・ロックンロール

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    ネタバレ

    やはり私はこういう熱い青春小説が好きだ。仲間で壁を乗り越えていくことや、想い人のことを知るために行動することができるなんて羨ましい!というおばさん目線で読んでしまった。

    舞台は気仙沼で、実在する店なども登場する。私が仙台に行くときに時々立ち寄っているアンカーコーヒーも「錨珈琲」として登場してくれて嬉しい。震災の描写は少なめ。

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    2021年07月06日
  • 冒険の日々(小学館文庫)

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    大名作「邂逅の森」の前に書かれている、少年時代を描くノスタルジー小説です。妖怪、心霊、都市伝説方面に舵を切り過ぎな感じがしますが。
    田舎の自然をダイナミックに生かしたわんぱく三人組の活躍は、和製スタンドバイミーの趣が有って、こんな地域で少年時代過ごしたかったなあと思いました。
    30年後の再会から始まりますが、30年も経つと仲良かった友達の名前も定かではなくなってきますが、こうやって何年たっても思い出せる想い出のある仲間って羨ましい。
    もうちょっと素直な少年小説として書いた方が好みかな。

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    2021年03月16日
  • 調律師

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    「共感覚」というのを初めて知りました。もし自分に共感覚があったら、、と想像しながら読みました。そして後半は仙台在住で3.11を経験した小説家だからこその内容でした。

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    2021年02月08日
  • 邂逅(かいこう)の森

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    マタギの話。明治〜昭和初期の時代の流れのなかで、当時の険しい生活が知れた・・のはいいけど、性的描写が多いな。そんな時代?

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    2021年02月06日
  • 鮪立の海

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    文章が方言のせいか少し読み辛かった。
    人生すべてうまくいくなんてことはなくて、良いことと思い通りにはいかないことが半々くらいで出来てるんだなと考えさせられた。
    長めの小説だが、時の流れを感じながら読めるので流れとしては読みやすかった

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    2020年11月26日
  • 調律師

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    ネタバレ

    第一話から大好きなOp.64-2が登場し、
    文字を追っているのに脳内にはメロディーが流れ、
    とても爽やかに読み進めていたのに、
    突如起きた予期せぬ転調。

    しかし、そうだったではないか、あの体験は。
    日常を急に破壊した14時46分のあの瞬間が、
    フラッシュバックした。

    仙台在中の小説家が、
    目下執筆中だった喪失と再生の物語に、
    震災をなかったことにできなかった切実さが伝わる。

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    2020年06月21日
  • 漂泊の牙

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    2020.6.15
    日本で狼がまだ絶滅してない設定に激しくロマンを感じた。動機とクライマックスが物足りなかったけど、読み始めると止められない。狼カッケー!

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    2020年06月15日
  • 調律師

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    たくさんのこうなるはずだったということが、大きな音をたてて崩れてしまった2011年3月。この物語も、予定していたラストとは違ったのだろうな。それでもここまでの作品となるのは、すごいと思う。評価が辛めなのは著者のファンだからであるのと、今の気分とはちょっと違っていたから。3との4の間にしたい。成澤くんがどうなったのか気になる…

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    2020年04月17日
  • ウエンカムイの爪

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    ゴールデンカムイが好きなので、それに近いものを感じて読んだ。ハラハラするヒグマとの闘い。人間のおろかさを感じる。

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    2020年01月02日
  • 揺らぐ街

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    熊谷達也『揺らぐ街』光文社文庫。

    宮城県気仙沼市がモデルの三陸の架空の町を舞台とする『仙河海サーガ』。自分がよく知る唐桑町がモデルの唐島町が登場するからには期待が高まる……

    冒頭に東京での東日本大震災が描かれるが、どうにもしっくり来ない。文芸編集者の山下亜依子を主人公に東日本大震災の被災地である仙河海市出身の作家・武山洋嗣を廻る物語なのだが……

    東日本大震災にも、仙河海市とも少し距離を置いたような、それでいて作家の世界という楽屋オチのようなストーリーに、どこに自分の感情の置場所を作れば良いのか戸惑う作品だった。

    信頼できる、大好きな作家ではあるが、この作品だけは好きになれなかった。

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    2019年03月13日
  • 調律師

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    ピアニストだった鳴瀬は、妻を失う事故に遭った後は調律師として生きている。
    音によって色を感じる色聴、においを感じる嗅聴という共感覚が興味深い。
    いくつかのピアノの調律を通して、彼の持つ嗅聴の背景が描かれていくが、
    ある時点で、急に静かな世界観が一変する。

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    2019年01月30日
  • 山背郷

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    今までであればたぶん自分からはなかなか手を出さないジャンルの小説だったが、「幻の漂白民・サンカ」を読んでいてその話をM浦さんにしたら、「ちょうどこんなのを読んでいるよ」と言って貸してくれた。

    タイトルからしてもう少し山の民や生活によっているかと思ったが、実際には「旅マタギ」「御犬殿」「皆白」以外はどちらかというと海や川といった水周りを舞台とした作品だった。「潜りさま」「旅マタギ」「御犬殿」「ひらた船」がよかったかな。もう少し民俗学的なところに寄っていてくれると個人的にはもっとおもしろかったんだけどな。

    解説を読むとだいたいの作品が昭和20年代の東北を舞台にしているとのことで、ふと、そういえ

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    2018年10月15日
  • 銀狼王

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    明治期の北海道を舞台に、老猟師と銀色の毛皮の巨きなオオカミの戦いを描いた作品。デビュー作の『ウエンカムイの爪』、直木賞の『邂逅の森』など、熊谷さん得意のマタギものです。
    思いっきり良く言えば『老人と海』の山版です。むしろ、それより北海道、猟師といえば、吉村昭さんですかね。
    いずれにせよ、比べるものが大きすぎます。面白くはありますが何かが足りない。迫力とか、深みとか。
    デビュー当時の方が、荒削りでも力強さがあったように思います。

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    2017年11月30日
  • ティーンズ・エッジ・ロックンロール

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    ネタバレ

    バンド活動や音楽が話の中心になるのかな、と期待していたのですが、匠と遥の恋愛話がメインのお話でした。青春小説としてはありなのかもですが「音楽もの(バンドもの)」と期待したいち読者としては、物足りなさが先立ってしまうのは否めません。

    また、その恋愛話もうまくいきすぎていて、好きになっていくきっかけや流れが今ひとつピンとこなかったりしました。そのあたりに都合の良さを感じてしまいます。

    ただ、話としては読みやすく、また分かりやすかった点は良かったです。前作にあたると思われる「オヤジ・エイジ・ロックンロール」も機会があったら読んでみたいです。

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    2017年11月05日
  • 漂泊の牙

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    主人公の城島・女性ディレクターの恭子・警察官の堀越、カメラマン、音声さんなど、なかなか良いキャラクターも揃っています。
    また、山中の追跡シーンは迫力があり、冒険小説としての面白さはありますが、動物視点からの描写がないのが、ちょっと残念です。
    難点はミステリー仕立て(実は人間が起こした事件)にした事でしょう。動機や最後の自殺シーンも納得できませんし、その為に全体が安っぽくなったような気がします。いっそ人間対野犬の対決の形でシンプルにまとめた方が、迫力ある作品になったように思えます。

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    2017年10月30日
  • 迎え火の山

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    物語の中間でグッと加速。一気に読み終えると思いきや、最後にちょっとガックリ。
    元々、幽霊とか霊魂とか信じていないし、この手のオカルト小説も余り好きでは有りません。それでも平井和正の「幻魔大戦」や白石一郎の「黒い炎の戦士」などに嵌ったことはあるので、もう少しSFチックな仕掛けなら、私には受け入れやすかったのかも知れません。
    やっぱり問題は最後の戦いのシーンでしょうね。突然の裏切りと思いも寄らぬ援軍、どちらの扱いもなんだか浅薄な感じがしてなりません。

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    2017年10月30日
  • 相剋の森

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    熊谷さんが「東北」に戻ってきました。
    「ウエインカムイの爪」の続編に当ります。「爪」の主人公であるカメラマン・吉本は今回の主人公・美佐子の相方として主要な役割を果たし、またヒロインだった玲子も登場します。
    ライターの美佐子を中心に、熊猟を行うマタギ達(+吉本)と熊を生かそうとするNPOの三角関係で話が進みます。その中で、自然保護を巡って、様々な意見が交錯します。
    相変わらず、力強い作風です。物語に引き込む力は持っています。しかし、今回は焦点が多すぎて、かえってぼやけてしまったようです。幾つかのサブストーリーを切り捨ててしまえば、もっとスッキリした力強い作品になれたと思います。
    そんな訳

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    2017年10月30日