熊谷達也のレビュー一覧

  • 相剋の森
    獣道も人の道も険しい。

    (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
    ○本当に俺らが必要としているものは物質的なもんじゃねえ。(P.396)

    ○バーチャルな世界に慣らされた現代人の愚かな部分である。
     テレビが映す映像にすっかり飼いならされていると言ってしまってよいかもしれない。(P.478)
  • 相剋の森
    秋田に行くのに面白い東北が舞台の小説を探していたら、邂逅の森というのがあり、その小説と3部作でこれが1作目、とあったので、読んでみた。

    マタギを通して自然との共生について考えさせられ、面白く読めたが、恋愛模様はいらないのでは、といまいち読ませる内容でなかったのと、祖先へのオマージュといったくだりが...続きを読む
  • 稲穂の海
    昭和40年代を舞台にした短編集です。
    熊谷さんといえば東北、自然、動物、マタギなんてキーワードが浮かびます。この作品は東北を舞台としているものの、人情ものというのが相応しそうです。
    衰退する捕鯨の砲手を描いた「酔いどれ砲手」、米の減反政策に翻弄される農民を描く「稲穂の海」、民話の語り部を主人公にする...続きを読む
  • モビィ・ドール
     主人公はイルカの研究者として、NPO法人鯨類鳴音研究所に所属する女性。新しくやってきたダイバーがひどくクセのある性格で、最初は喧嘩ばかりしていたのだが……
     恋愛小説としては主人公にあまり共感できなくて、特に大きく心揺さぶられることもなく読み終えてしまったのだけれど、海洋小説としては非常に楽しく読...続きを読む
  • バイバイ・フォギーデイ
    霧だらけの毎日に、さようなら

    恋愛小説としては、とても普通な物語(笑)
    ただ、憲法改正の話が絡んできておもしかった!
    高校生があんなに真剣に政治と向き合う世界はいいですねー

    最後のデレデレヒロインもかわいかったなー


    タイトルが気に入ったので☆3つ!
  • 群青に沈め
    現代が舞台の小説を読んでいるような感じでした。
    文章の感じと主人公の気持ちの揺れ動き方が。

    伏龍隊というものの存在を私は初めて知りました。
    読みやすい文章だし、そういった意味で、若い子向けにはよいきっかけ?になる本かなあって思いました。
  • 氷結の森
    ヒーローは死なない。

    (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
    ○必要以上に獣を獲りすぎてはならない。(P.204)

    ○敵側の人間と見れば、民間人の女を見境なく犯す。
     子どもまで平気で殺す。
     普段の大人しいきみたちからは、想像もつかない豹変ぶりだと思うのだが。(P.379)

    ○銃を撃つとき...続きを読む
  • ウエンカムイの爪
    著者名が記されていなければ『山背郷』と同じ作家だとはわからなかっただろう。直木賞作家・熊谷達也氏の処女作。ストーリー展開等さほど気に掛けず、東北という風土の断面を無作為に抜き取って、無造作に並べた様な構成であるにも拘わらず、限りなく魅力的であった『山背郷』に比べ、本作は全く以て普通の文体である。まあ...続きを読む
  • バイバイ・フォギーデイ
    女の子が絵に描いたような子で、そこだけちょっとなんだか…だったけど、おもしろかったかな。
    結論も無理がなかった。
  • 邂逅(かいこう)の森
    読むのにとても苦労した。
    なにより主人公の富治に共感できなかったからだろう。
    だが、それでいいのだと思う。
    この時代だからこそ、男性だからこその考え方なのだろうと感じたし、作中でも彼は「馬鹿」と何度も言われているシーンがあって、少しすっきりしたから、というのもある。

    ただ、こういう本は苦手だ。
    ...続きを読む
  • ウエンカムイの爪
    第10回小説すばる新人賞受賞作にして、『邂逅の森』で直木賞を受賞した熊谷達也氏のデビュー作。
    マタギ系の古風な狩猟モノではなく、現代風のクマ小説。
    登場人物の描写が甘いのと、展開が早過ぎ&終盤がアッサリし過ぎの感もありつつ、良い意味でサラッと読める。

    巻末の阿刀田高の解説が、かなりの上から目線。
  • 漂泊の牙
    読者を飽きさせないストーリーや展開のスピードにくわえ、登場人物それぞれの描写も丁寧で、専門的な情報も豊富。

    「邂逅の森」を読む前にと思い、入門編として読みましたが、十分に面白かったです。ファンになりました。
    他の作品も読みたくなりました。
  • バイバイ・フォギーデイ
    憲法改正の国民投票を前に、将来の総理大臣を目指すスーパーウーマンの女子高生ヒロインとその幼馴染の活躍を描いた青春小説。

    憲法改正に関する議論の部分を除けばありきたりなストーリー展開と言えなくもないし、ヒロインと主人公の恋愛については、むしろ蛇足感も感じたが、これだけの有名作家が、自分の大好きな函館...続きを読む
  • バイバイ・フォギーデイ
    目的のハッキリした高校文化祭となれば、生徒の集中力も半端ないと思う。それでなくても祭りということでワクワクするのに。
    今どきはネットを使ったりということもあるのかね? 新鮮。
    憲法9条についてそれぞれが考えるというキッカケになったに違いない。
  • ウエンカムイの爪
    熊谷さんはやっぱり浸かっていると思う一作だった。熊に対する並々ならぬ執着心と山の神に対する畏怖。ここぞとばかりに散りばめられている。
    前半よりも後半の方がよめてしまうのと、カムイとの対峙にはもう少し余韻を持たせて欲しかったなどと思ってしまった。山で暮らす人達に魅入られた想いは十二分にも伝わった気がす...続きを読む
  • 邂逅(かいこう)の森
    星3.5という感じ。

    マタギの仕事がシビアに
    渋く表現されている所は
    よかったけど、

    やっぱり…という感じで
    女性というか性がつきまとうのが
    どうも邪魔くさい。

    一昔前の男性が、昔ながらのよさ?
    みたいな本を書こうと思ったら、
    そうなるの?って思う。

    昔の男はそういう事で頭がいっぱいって
    ...続きを読む
  • 漂泊の牙
    ニホンオオカミは現存するのか、というところまでは面白く読んだが、殺人あり、家系の謎あり、雪崩の恐れあり、とありあり続きがもったいない。
  • 相剋の森
    考えさせられる物語ではあったけれども「邂逅の森」に比べてしまうと弱い。松橋富治を祖とするルーツの伏線もこじつけがましく感じてならない。
  • 箕作り弥平商伝記
    らしい題材なんだけれど、よりエンタメ色が濃いのに戸惑いを感じる。傑作「邂逅の森」を超える作品を読みたいが、この人は何処へ行ってしまうのであろうか。
  • ウエンカムイの爪
    再読。
    吉村昭を思わせる(記録文学的な吉村さんよりずっと物語よりですが)動物文学です。
    かなり綿密な調査を行った物だと思います。熊との遭遇シーンなど、リアリティも迫力もあります。戸川幸夫さんに嵌り、吉村さんのマタギものを大好きだった私からして、熊谷さんの登場は喜ぶべきものでした。
    「面白かった」と言...続きを読む