熊谷達也のレビュー一覧
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アテルイを主人公にした作品は、陸奥甲冑記(澤田ふじ子)、火怨(高橋克彦)に続いて三作目ですね。
前半を過ぎまでは、なかなか良いのです。アテルイの登場の仕方もモレとの出会いも。熊谷さんらしい力強さが有って、次々にページをめくってしまいます。しかし、最後はちょっと。というより、「火怨」の余りにヒロイックなアテルイの行動解釈を読んだ後では、どうしても負けてしまいます。こちらを先に読んでいれば、それなりに収まったのかもしれませんが(とは言え、ちょっと納得できないところもあります)。
ところで、この作品、「火怨」と比べ幾つかの大きな相違があります。
まず第一に、この戦いの先陣を切るアザマロの子( -
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(01)
9つの短編からなるが、近代東北の群像劇(*02)の様にも読める。人生のある瞬間というだけではなく、一人の一生や、数代にわたる因縁も綴られ、必然的に戦前戦中戦後の東北の生活が現れる。特に山に生態する狼や熊という動物や、漁業や運送に駆使された船が題材となって、現代では省みられなくなった習俗(*03)などにも焦点を当てている。
(02)
オチを知らないものにとっては、これらの短編がバッドエンドに終るのか、ハッピーエンドに終るのか、あるいはその間に宙吊りにされるのかを楽しむことができる。どちらかと言えば、「旅マタギ」や「モウレン船」などの唐突な終結が出色であるが、「艜船」のハラハラさせる展 -
Posted by ブクログ
熊谷達也さんの作品が大好きで、わりと色々読ませもらっています。
マタギ、羆、狼などを中心に東北や北海道を舞台にした作品群は江戸から明治へそして現代へと次第に変わって行く時代や環境の変化の中で自然やケモノとの関わり合いながらそこに暮らす人間たちの悲喜交々や艱難辛苦を描いた作品がとても土臭さく、読み進めるほどに命をやり取りすることや生きるって事の意味を考えさせられてしまう。
そんな熊谷作品が私は大好きなんですけど、この作品はちょっと…
最早絶滅の危機に瀕しているのは分かっていて、そんな中生き残ってた最後の大物たる狼王の話を聴いて、そいつは俺が仕留めなきゃならない…って自分勝手な印象の展開がちょっ