熊谷達也のレビュー一覧
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本書の中心テーマは、間違いなく「未来に残したい風景」だと思います。「仙河海」シリーズをライフワークとして取り組む熊谷達也さんの、痛切な悼みや祈りがあふれる渾身の力作でした。
物語は、故郷である(気仙沼をモデルにした架空の町)仙河海と決別していた主人公が、震災をきっかけに故郷に戻り、生まれ育った町を見つめ直し、故郷の未来に想いを託す内容で、3部構成です。
第1部は、主人公が仙台市で被災し、仙河海で両親が安否不明のまま、3週間の仙台市内の混乱が描かれます。
第2部は、震災から50年後の仙河海市が舞台で、やや印象が異質です。小3児童の視点で、仙河海の街の歴史と経緯を学び、未来を託されます -
Posted by ブクログ
宮城県気仙沼市が、この書に出てくる「仙河海市」のモデルになっている。これは、2011年の東日本大震災に関連した物語である。
第一部:仙台で働いていた川島聡太は、東日本大震災に遭い、両親と連絡がつかないことが気にかかり、故郷の仙河海市に向かう。
仕事中にビルの大揺れから始まり、歩いて塾生を送り、ライフラインの復旧のないまま車を走らせて避難所まで…という被災状況が非常にリアルに描かれている。
第二部:東日本大震災から50年後の仙河海市に住む小学生の呼人は、海を見たことがない。
少し先の未来を描いているのだが、ここで待人と呼ばれているちょっと変わった爺さんと出会う。
爺さんが呼人に託したものとは -
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熊谷達也『悼しみの海』講談社文庫。
宮城県気仙沼市をモデルにした架空の町が舞台の『仙河海サーガ』シリーズの1作。『潮の音、空の青、海の詩』を改題、加筆訂正、文庫化。
『仙河海サーガ』は震災小説や現代小説だけでなく、時代小説や青春小説にスタイルを変えて描かれ続ける熊谷達也のライフワークとも言えるシリーズである。
本作は三部構成で物語は展開する。三部それぞれが独立した物語のようであるが、僅かな細い糸でつながっている。しかし、三部ともに自然災害に破壊された故郷の未来を考えるというのが、一貫としたテーマであるようだが、全体的にまとまりは無く、読み終えると狐につままれたような気持ちになる。
第 -
Posted by ブクログ
オヤジバンドの話。
著者とは同学年なので、話の内容が私とほとんどシンクロしてます。(前半は)
学生の頃、喉から手が出るほど欲しかったフェンダーやギブソンは当然買えないのでコピーモデルを買った。
就職と同時にバンド活動は中止。
50才に近づくにつれ、久しぶりにギターでも弾いてみるか。
昔はとんでもない値段がついていたが円高の影響か? 無理すれば買えない事もない。
で、買ってしまうと同時にバンドをやりたくなってくる・・・と。
実際私も、フェンダー、ギブソン、マーチン・・・が今、手元にありますもん(^_^;)
話の後半は、そのバンドがコンテストに出て、みるみる全国大会に出場・・・と。
これはちょ -
Posted by ブクログ
ネタバレ電脳空間で永遠に生きるか、それとも人間として限りある命を生きるか…。
二者択一ならどちらを選びますか?
本書中盤に出てくる質問です。
…
… /(´・ω・`)\ウーン
…
!
やっぱり自分は人間を選びます。
電脳世界では病気にならず、痛みも感じず、どこへでも行けて何にでもなれるといいます。それが果たしていいことなのかどうか…。
この本で少し疑似体験することができます。
電脳世界では「食べる」ことはできないので美味しいものとは無縁だし、ネコに触ったり、海で泳いだり、風を感じることもできなさそうです。(似たようなことはできるかもしれませんが)
人間はなんと無駄なことばかりしている生き物で -
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暗いコロナ禍の中、定年間近のおやじが、仕事と趣味の両立を図りながら、色々悩みながら結局ハッピーな生活を手にして行くストーリー。
仙台の印刷会社の室長として働く本間優一は、健康診断でのメタボでイエローカードを貰い、今一歩対処出来ずにいた。ふとした事から若い女子部下の水野唯からロードバイクの紹介を受け奮発してデローザアイドルを購入して色々な楽しさを知る。時はコロナ禍初期で緊急事態宣言下で経済的なダメージを負いながら、リモート勤務が開花する。そんな中、優一は、自転車にのめり込み健康増進と会社生活を両立するも会社経営陣が変わりリストラに見舞われ、慣れ浸しんだ職場メンバーで退社し会社を起す。