熊谷達也のレビュー一覧

  • 明日へのペダル

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    170これまで少なからず情緒的な部分が強調されがちなところが目立ったが、大きな組織と小さな集団との対比から始まって、家族の向き合い方や自分にない才能への気付きなど、面白くあっという間に読んだ。お仕事小説もいけますねえ。

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    2022年12月21日
  • 明日へのペダル

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     この人の本何冊目かな。どの本も面白かったし、自転車が好きで読みました。
     真骨頂は終盤に近い経営会議での専務とのやり取りかと。自転車あれこれシーンよりなによりここが一番面白かった。
     最後の元上司との再会シーンも本を読んでいるというより実際自分がそこにいるような臨場感があった。熟年男性二人の会話。穏やかな語らいの中に時代を生き抜いてきた人生の機微がにじみ出てくるような。筆力あってのことだし、この人の作風が自分に合っているんだと思う。
     少し出来過ぎのハッピーエンド。ちょっと違った形にして欲しかった気もしたり。

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    2022年11月16日
  • 明日へのペダル

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    50代半ばの男性が、健康診断の結果に何かしないとヤバすぎる危機的状況に気づくのだが…
    スポーツクラブに入ろうかと思っている矢先のコロナ禍。

    そんなときに社内で一番若手の水野唯にロードバイクを勧められ、次の日には一緒に自転車屋さんに行く。
    結局、一目惚れしたロードバイクを手に入れて走り始める。

    ちょうどコロナで緊急事態宣言が出て、会社でもリモートワークを推奨している。
    地下鉄やバスでの通勤を避けて、自転車に替えたという人も多かったのではないだろうか。

    今や若い人だけに限らず、ロードバイクを乗っている人をけっこう見かけるようになった。
    それは、やはりコロナ禍の影響も少しはあるのだろうか?

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    2022年10月27日
  • 孤立宇宙

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    青春小説から歴史小説まで幅広い熊谷さんだけど、実直なイメージがあり、SFには結びつかなかったが…。さらに「三体」の余韻が残っていて、ちょっと心配だったが面白かった。AIに小惑星衝突と舞台設定は定番だけど、極限状況でも笑ってしまうキャラや映画の話で専門的な部分は理解出来なくても、充分楽しめた。今後は、どの分野で行くんだろう。才能ありすぎ!

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    2022年10月12日
  • 孤立宇宙

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    なんとあの『邂逅の森』の熊谷達也がSF!
    半ば怖いもの見たさで手に取った本書ですが、立派なハードSF大作でした。
    小惑星の衝突が迫った地球。人類の一部は新天地を求めて太陽系を脱出し、一部は地上が生存可能になるまでの数世紀を地下シェルターで乗り切ろうとし、さらに一部は身体を冷凍保存しサイバー空間での生存を図る。そんな世界を第一部では衝突前から衝突後の混乱や陰謀を、第二部では新たな危機の発覚とスペースオペラ風な活劇が描かれます。
    1970年代のビッグ・スリー(アシモフ・ハインライン・クラーク)のストーリー骨格に、最新のサイバー世界を織り込み、登場人物に名作SFアニメ(詳しくないがエヴァンゲリオンあ

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    2022年10月10日
  • 孤立宇宙

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    久しぶりのSF小説。文芸誌小説現代で第一部を読み、第二部を含めて単行本化するということで第二部も気になったので購入。単行本化するに当たり加筆したということだが、先が気になっていたので第一部の終盤から読み初めた。
    帯にある通り、どこか懐かしい印象の話。でも、やっぱり新しい。
    人類滅亡の危機に立ち向かう主人公達の人間模様や葛藤などを丁寧に描いているので、あまり普段SFを読んでいない私でも楽しめたのではないかと思う。
    登場人物も魅力的で主人公のレンは人間くさくて、それも良かった。

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    2022年09月06日
  • 明日へのペダル

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    自転車、コロナ、テレワーク。この三題噺を2020年から21年にかけて、仙台周辺を舞台に小説にしたものがこの本の内容と言ってよい。

    小さな印刷会社企画部門の室長である主人公は健康のために、部下の女性のすすめに従い70万円もするロードバイクを購入、その娘に手ほどきを受けながら、泉ヶ岳への挑戦や、泉NTから亘理往復という100kmライドを達成していく。この間の初心者の苦労や半年でひと月に1000kmのトレーニングを乗りこなすまでの喜びが、軽快な文章で書かれていて一気呵成に読み終えてしまう。

    一方、テレワークの必要性から会社としてサーバーの構築をしなければならなくなるが、当該部下にはとんでもないハ

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    2022年09月05日
  • 明日へのペダル

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    自転車に興味があり読み始める。技術的な説明など、引き込まれました。
    作品の内容は、コロナ禍で悪戦苦闘するサラリーマンのお仕事小説がメインでしたが、それはそれで楽しく読むことができました。
    自転車に乗りたくなります。

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    2022年08月30日
  • 明日へのペダル

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    自転車がテーマだけど、2年半前の新型コロナ出現からの日常を、仙台に暮らす中小企業の課長や教員の妻の目などを通して政府や人々の右往左往ぶり、混乱をおさらいしつつ丁寧に描いた優れたコロナ狂騒曲日誌にもなっている。「なんだかなぁという出来事たちが、すでに遠い昔の思い出」になっているのがこわい。「同じ災害でも東日本大震災はキズナ。コロナ初めてソーシャルディスタンスで正反対」「仕事と人生はぜんぜんイコールじゃない。優先するものがほかにある」ロードバイク欲しくなった…。

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    2022年08月25日
  • 明日へのペダル

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    面白かった。
    けど出来過ぎ、上手く行き過ぎですね。
    小説だからですよね。
    主人公がカッコ良過ぎ。
    登場人物がみんな良い人。

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    2022年08月14日
  • 群青に沈め

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    ネタバレ

    伏龍の特攻隊員になった少年の話。

    戦争真っ只中だが、戦闘のシーンはない。
    かっこ悪い死に方は嫌だ、意味のある死に方とは?
    まだ少年である主人公の心の成長に寄り添った物語。
    訓練中、戦争が終わった後の友人の死。
    悲しいけれど、特攻について深く考えるきっかけになる物語だった。

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    2021年10月21日
  • 調律師

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    この小説は2010年から2012年に書かれたとのこと、その間に東日本大震災が起こった。共感覚という音を嗅覚でも感じることができる調律師の小説は震災時の場面から大きく転換した。いくつかある調律師を主人公とした小説の中でもその事件によって別の意味での臨場感がでることになり、まさに時代を現したものとなっている。

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    2021年06月05日
  • 鮪立の海

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    前半の戦争までは、漁業と戦争という微妙な取り合わせで面白かった。戦後になると、普通の恋愛小説になってしまい、残念という感じだった。もっと社会に突っ込んだ話を書く作者のはずだったけど、、、

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    2021年01月14日
  • バイバイ・フォギーデイ

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    学生に読んで欲しい一冊。
    話に全く捻りがないから手が進むと思う。
    それから、今の日本に少なからず不安や不満がある人も僕は見て欲しいと思った。

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    2020年12月27日
  • 翼に息吹を

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    戦争を整備士側から描いた物語り。搭乗員とは違った視線で戦争を捉えていて、特攻という行為に関わる苦悩が描かれていた。国のために特攻していった人達のことを想うと、戦後軽々しくその是非を語ることはできなかったのだろう、と感じた。

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    2020年11月10日
  • ウエンカムイの爪

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    大好きな熊谷達也さんのデビュー作。
    ものたりなーい!もっとよみたーい!

    主人公の吉本は、北海道取材中にクマに襲われ、謎の女に助けられる。謎の女は吉本とクマの間に現れ、催眠術をかけるかのようにクマを追い返してしまった。彼女はヒグマの研究をする学者で、彼女たちの活動に吉本はカメラマンとして同行することとなり…。ヒグマはどうしてウィンカムイになってしまったのか。人間が自然に与えた影響とは何なのかを考える。

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    2020年05月23日
  • 鮪立の海

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    気仙沼をモデルにした架空の街、仙河海シリーズ集大成(らしい)。森シリーズは知っていたのだけど、こちらは知らずに、帯の仙河海サーガにも気が付かずに一気に読破。やっぱり好きな作家さんだ。

    大正〜昭和の激動の時代に生まれ、太平洋戦争を経て漁師として成長していく守一。彼の父や兄、友人の征治郎、など登場人物がみなキラキラと魅力的。港町の湿った空気と潮風の匂いを感じられる。シリーズは、守一の子ども、孫たちの世代が今後この街で成長し、震災を経験して未来へと、時代を前後しながらたくさんあるようなので、少しずつ読んでいこうと思う(なんとなくサーガというのに抵抗がある…)。

    欲を言えば、もう少し成長した守一の

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    2020年04月14日
  • 鮪立の海

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    熊谷達也『鮪立の海』文春文庫。

    文庫化を待ちわびていた熊谷達也のライフワーク仙河海サーガの1作である。三陸の『仙河海』に生まれた菊田守一が大正、昭和と移り行く激動の時代の中で一人前の漁師になるまでがダイナミックに描かれる。作中に同じ仙河海サーガの1作『浜の甚兵衛』の主人公・菅原甚兵衛が登場するのも面白い。

    『仙河海』という架空の港町は宮城県気仙沼市がモデルである。また、タイトルの『鮪立』は気仙沼市唐桑町に実際にある地名である。『鮪立』は遠くに大島を臨む小さな港であるが、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた。昔はその名が示す通りマグロ漁で賑わった港で、付近には唐桑御殿と呼ばれるマグロ漁で財を成

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    2020年04月10日
  • 光降る丘

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    戦後開拓民たちの生き抜く事への貪欲さと力強さにただただ圧倒。そして何世代にもわたり命をかけて築きあげた自分たちの居場所をいとも簡単に崩し去ってしまう自然の猛威。なんとも虚しい…が、そんな状況の中でも最後に開拓一世の瞳に輝く未来が映った瞬間、全てが救われた気持ちになった。

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    2020年01月17日
  • 調律師

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    マタギ同様、調律師という全く身近に存在しない職種の人の日常や感情を疑似体感でき楽しめた。
    また、愛する人との死別、共感覚、震災といったキーワードが物語を繋ぎ、主人公や読者の心をまさに調律する柱として存在し、切なくも力強く胸に響く作品に仕上がっている。

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    2019年12月19日