あらすじ
三陸海岸の入り江にある港町「仙河海」。
大正十四年にこの地に生まれた菊田守一は、「名船頭」として名を馳せた祖父や父に憧れ、一人前の漁師になることを夢見ていたが、戦争がはじまり、守一が乗っていた船は海軍の徴用船にされてしまう。グラマンの機銃掃射、米軍潜水艦からの攻撃で船は大破し、父は大けがで漁師を引退、兄は海の藻屑と消えたが……。
大正~昭和の激動の時代をひたむきに生き抜いた人々と日常を描いた感動巨編!
解説・土方正志
※この電子書籍は2017年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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仙河海がどんどん刷り込まれて行く、シリーズだろうけど色んな時代の色んな物語を培う。漁師は力強いなあ、相当厳しい仕事だと思うけど得るモノあるんだなあ。浜の甚兵衛が出たのがちょっと嬉しいって、読んだ読んだと。熊谷達也さんは描写が力強い、本当に引き込まれるし心配してしまう。6年も結婚した相手を思い続けて子供もいる全部受け入れようと腹を括る。自分も20代に別れたけどずっと好きで、好きだと思っていた女性が輩と酒の騒ぎを起こし、しばらく家に居させた、受け入れられないのに、男って馬鹿だよ。あそこまで引きずって
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前半の戦争までは、漁業と戦争という微妙な取り合わせで面白かった。戦後になると、普通の恋愛小説になってしまい、残念という感じだった。もっと社会に突っ込んだ話を書く作者のはずだったけど、、、
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気仙沼をモデルにした架空の街、仙河海シリーズ集大成(らしい)。森シリーズは知っていたのだけど、こちらは知らずに、帯の仙河海サーガにも気が付かずに一気に読破。やっぱり好きな作家さんだ。
大正〜昭和の激動の時代に生まれ、太平洋戦争を経て漁師として成長していく守一。彼の父や兄、友人の征治郎、など登場人物がみなキラキラと魅力的。港町の湿った空気と潮風の匂いを感じられる。シリーズは、守一の子ども、孫たちの世代が今後この街で成長し、震災を経験して未来へと、時代を前後しながらたくさんあるようなので、少しずつ読んでいこうと思う(なんとなくサーガというのに抵抗がある…)。
欲を言えば、もう少し成長した守一の漁師っぷりが見たかったなあ。超大作だけど、ページが少なくなるのが惜しくなる一冊でした。
Posted by ブクログ
熊谷達也『鮪立の海』文春文庫。
文庫化を待ちわびていた熊谷達也のライフワーク仙河海サーガの1作である。三陸の『仙河海』に生まれた菊田守一が大正、昭和と移り行く激動の時代の中で一人前の漁師になるまでがダイナミックに描かれる。作中に同じ仙河海サーガの1作『浜の甚兵衛』の主人公・菅原甚兵衛が登場するのも面白い。
『仙河海』という架空の港町は宮城県気仙沼市がモデルである。また、タイトルの『鮪立』は気仙沼市唐桑町に実際にある地名である。『鮪立』は遠くに大島を臨む小さな港であるが、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた。昔はその名が示す通りマグロ漁で賑わった港で、付近には唐桑御殿と呼ばれるマグロ漁で財を成した船乗りの豪邸が立ち並ぶ。本作の中ではこの『鮪立』という地名には一切触れられず、主人公の守一がカツオ・マグロ漁で身を立てるという意味で使われているようだ。
本体価格930円
★★★★