あらすじ
山の民「マタギ」に生まれた青年・松橋富治は、身分違いの恋が災いして秋田の山村を追われ、その波乱の人生がはじまる。何といっても圧倒されるのは、山のヌシ・巨大熊とマタギの壮絶な対決。そして抑えつけられた男女の交情の色濃さ。当時の狩猟文化はもちろんのこと、夜這い、遊郭、炭鉱、男色、不倫など、近代化しつつある大正年間の「裏日本史」としても楽しめる冒険時代小説です。長篇小説ならではの面白さに溢れた、第131回直木賞受賞作!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
邂逅の森 熊谷達也再読
舞台は、大正時代の秋田。マタギとして山の掟に従い、クマを追い、自然と共に生きてきた富治は、ある事件をきっかけに村を追われ、過酷な逃亡と放浪の生活へと転落する。それでも彼は、人間の裏切りと自然の厳しさの狭間で、自分の「誇り」と「命の意味」を模索し続ける。山と密接に生きる者の宿命を、克明に描いた壮絶な人間ドラマ。テーマは、壮絶な人生を通して、自然と向き合う人間の根源的な姿を描いた作品かな。罪・孤独・誇り・自然の畏れ——こうした極限状態の中でこそ浮かび上がる「生きる意味」を静かに問いかける、現代日本文学でも屈指の力強さを持つ物語です。熊のニュースに触発されて、再読。何度読んでも素晴らしい5☆作品で~す
Posted by ブクログ
はい、本とコさん絶賛の『邂逅の森』だべしゃ
面白かったです
まず時代設定がいいですよね
大正のある種混沌とした時代背景の中で語られる人と自然の物語
そしてなんてたって夜這い文化ですよね
勘違いされてる方も多いのですが、そもそも「夜這い」というのはですね、一定程度の男女間の合意に基づいたプ…
( ゚д゚)ハッ!
危ない危ない
本とコさんやおびーのレビューとは違った切り口をと意識するあまり危うくシモに走るところでした
もうちょっとで俺の十七年式村田銃が火を吹くぜ!とか言っちゃうとこでした(言ってる)
危なかった〜(言ってるって)
よし、方向転換
つまりどういう話だったかというとですね
ヌシと呼ばれる巨大グマよりも自分の奥さんのがおっがね〜ので早く家に帰って奥さんに股間の十七年式村田銃を…
( ゚д゚)ハッ!
うん、まぁ気になる人は本とコさんのレビュー読めばいんじゃね?(文庫の方だよ)
(~‾▿‾)~
Posted by ブクログ
マタギで生きて行くしかない、富治の逞しく、生命力のある、昔の男らしく生きる姿を描く物語。何度となく心を揺さぶられる主人公の波乱に満ちた人生は、本当に芯の通った男らしさがあった。ラストの山の神との対峙は感動的ですらある。
Posted by ブクログ
橋本愛主演の映画『リトル・フォレスト』に、母親の本棚にあった本を読もうとした彼女が、「自分で読む本ぐらい自分で選びなさい」と母親から言われ、母親が買った本を娘は読ませてもらえないシーンがありました。私も自分で読む本は自分で選ぶようにはしているけれど、知人友人からなかば無理やり貸された本に感銘を受けるのもよくあること。本作は直木賞受賞作といえども、自分では絶対に選ばない難しそうなタイトル(笑)。半年以上前に貸されて放置していましたが、読んでみればとても面白かった。狩猟で生計を立てる、秋田の「マタギ」の話で、厳しい自然の中で生きる男の人生を描いています。男を取り巻く、肝の据わった女ふたりもイイ。秋田出身の私の父にも薦めようと思います。きっと東北弁を懐かしがるはず。
Posted by ブクログ
近年のライトノベルでは「異世界転移モノ」が活況だそうで、本作もある意味で異世界転移モノといえる。
主人公は親に倣いマタギとして狩りに出始めた若者であったが、とある事件により故郷を追われ、同じ山でも鉱山という別世界に飛び込む羽目になった。
なんとか鉱夫として独り立ちし、弟分もできて落ち着いてきた頃、その弟分が休みの日に山に入り猟をしていることを知る。
主人公はマタギの世界ではほんの駆け出しであったが、装備も狩りもおぼつかない鉱夫たちからすれば「狩りの達人」となる。
このギャップにより「異世界に転移して無双」へ至るという展開がとても自然であり、その一方で「前奏が長い」みたいなテクノサウンドへの心無い批評みたいなことにもなる。
(個人的にはこれくらいの前置きがあってもいいと思うのだけど、実際にはいろいろと難しいのかもしれない)
東北地方の鉄道網の延伸がところどころで出てきて、これが自然と文明のせめぎあいのひとつの象徴として描かれている。
民俗史的な裏付けもかなり取材しているようで、当時の奔放な性愛についてもかなりストレートな描写がある。
特に妻となるイクに関しては、魔性の女が婚姻を経て良妻賢母へ変貌するあたり、ある種の神話を髣髴とさせる。
今年は「真田丸」や「シン・ゴジラ」、「この世界の片隅に」などの徹底的にリアリティを追求した作品が話題を呼んでいることもあって、こういう静かに、しかし懸命に生きていく人の話はもっと注目されてもいいのかも知れない。
Posted by ブクログ
石井光太氏がおススメしていた一冊。
東北弁を文字に起こすのはとても難しい。鼻濁音・音としてはっきり発しない「息」のような発音。。。
しかしながら、方言も含めてとても臨場感がある表現がちりばめられている。
深々と雪が降り積もる季節に読めて良かった。
Posted by ブクログ
大正3年頃から昭和初めにかけて秋田の山奥でマタギ(熊を獲る猟師)として活躍する富治の数奇な運命。若い日の地元の名士娘・文枝との恋、そして地元を追放されてからの鉱山夫、また猟師に戻っての日々と小太郎、その姉で妻になったイクとの出会い。そして猟仲間の鉄五郎などの脇役との出会いも魅力的です。小説の終盤での文枝との再会、イクへの愛情。そしてクマの格闘に生涯をかけた富治らしい大クマのヌシとの対面など、息もつかせぬ感動の連続で、泣かされる荒筋であると共に、古いこの時代のおおらかな若者の性などの風俗に驚きです。読後の余韻も快い、素晴らしいドラマでした。
Posted by ブクログ
マタギって全国区の名詞なんでしょうか?
マタギとは、主に東北地方で熊やカモシカを狩猟して生計を立てていた人たちの呼び名です。本書ではそんなマタギを生業とする男の半生を記しています。とはいえ現代人から遠い昔のおとぎ話などではなく、実に生々しい人間模様と恋愛、家族、故郷について語られています。
里ではまったくの俗人である若者が、山に入り自然と戦う中で、獣となり、木となり石となり、山の神へと近づいていく姿に圧倒されます。
正直かなり性描写が多いので大人向けな内容ですが、その描写についても当時の風俗、習慣を入念に研究されたらしく、当時の平民の生の生活感もリアルです。
私は、読んだだけで映像や空気や息遣いまでが伝わってくる小説が好きです。本書はそんな小説です。
しかし、やっぱり第一次産業の男はかっこいいね。
Posted by ブクログ
時代は大正初期、秋田県月山山麓。深い山に入り熊やカモシカなどの獣を猟とするマタギの物語。2004年直木賞受賞作。その時代の歴史物語としても民俗資料としても内容が濃く重厚な作品で読み応えがあった。マタギの家の次男として育った富治の生涯は波乱。東北の厳しい冬を思いめぐらしながら最初から最後まで圧倒されるような緊迫感と迫力をもって読み終えた。山歩きという趣味の世界でいろんな山に入る(入らせていただくと言ったほうがいいかもしれない)けれど、山への畏怖の気持ちを抱かざるを得ない。そこには自然への敬虔な気持ちが生まれている。
タイミングよく今年(2013年)になって新聞に阿仁マタギの資料を世界遺産級に指定する動きの記事があった。
Posted by ブクログ
直木賞アーンド山本周五郎賞受賞作です~。
大正時代の東北を舞台にした猟師マタギの生き様を描いた長編小説です。
いや~~~~~。
これは凄かった!!
最初読み始めたときは
「え~?猟師のはなし~?」てな感じでちょっと躊躇したのよ。
でも、それがどっこい。
こんなに奥の深い小説を読んだのは初めてです。
かなり感動してて興奮してて、何から感想を述べていいのか分からない。
まず、驚いたのはマタギという仕事が、こんなにも神聖で先祖から仕来りや技、意志を代々受け継がれている仕事だとは思わなかった。ただ単に動物を殺して売りさばいてる仕事としてしか知恵がなかった自分を恥じました。
殺生な仕事だからこそ、そこには山の神様との関係が根強くあり、それを大切にとりもって仕事が出来るのだと思う。
そして、親子の絆と夫婦の絆。
親が子を思う気持ちほど大きいものはないし、愛し合った夫婦こそ絆の強いものはない。
村を追い出され何十年かぶりに帰郷した富治を見た富治の母親の姿。
子供のために身を削ってまで働いて娘を嫁に出した富治夫婦。
富治の初恋を成就させるために、自ら身を引こうとしたイク。
村の区長に言われ、なんとなく結婚してしまった富治とイクだったけど、長年連れ添った仲でいつの間にかお互いに大切な存在だと気づいた富治とイク。
富治がイクを探しまわって、最後に見つけた因縁のあるお店での再会。これには泣けました。
なーんかね、「ああ、夫婦っていいな~」って思っちゃった。
何度もクマを撮り、最後クマに足まで食べられながらも、最後はクマに助けれるところも感動。
そして、出てくる登場人物もみーんな味があって良い!
もうね~、1ページ1ページに読んでる意義があって、この一冊で人生を学べた感じがする。
もっともっと言いたいことがあるのに、何を言っていいかわからない。
大声で泣きたい心境です。
ほんと感動した。感動して泣きたい。
これは是非いろんな人に読んでもらいたい本です。
Posted by ブクログ
本を広げると、大正三年とある。昔の話かぁ、しかもテーマがマタギって、どんだけとっつきにくいんだよ、と思いながら最初のペースは妙にゆっくり、読み返しながらなんとなーく世界観が分かりだす。
そう、舞台は東北。出だしは山形県の月山麓、肘折温泉とあるものだから、妙に親近感が沸き、会話も東北弁。そのまま読んでも理解できる(笑)。
「邂逅の森」は秋田県阿仁町打当のマタギ・松橋富治の生涯を描いた長編小説である。
一流のマタギの組に属し、だが、まだまだ一人前になっていない富治が今の生活を続けることができなくなる。
鉱夫になり、小太郎と出会う。そこで、小太郎が隠れて狩猟をする姿を目撃し、ここぞとばかりに小太郎にホンモノのマタギとは狩猟とはどういうものかを教える姿、そして、「見本」を見せるところなどは爽快な読み心地だった。
やはり、マタギの世界に戻ろうとした富治は小太郎の姉を嫁にもらい、17年の月日が流れる。娘を嫁に出した後の描写はあれど、娘に対しての描写が一切なかった。
さあ、ここからどんな展開が待っているか。本はまだ三分の一は残ってる。
予想通り出てきましたね。恋焦がれ、忘れることのできない愛しい女性・片岡文枝。久しぶりの再開にこれも予想通り、でもお互いいい歳だからないのかな、と思いながら押し倒し系(笑)。
難波イクの存在が当たり前だが家族となり、愛し続ける存在だってことが分かる部分は素敵だなと思った。
この小説から感じたものは、マタギという本能的な「狩」と近代において必要となった鉱夫との対照、そして富治のなんと男らしいこと。
現代の草食系男子に読んで欲しい一冊ではないだろうか。
浅田次郎氏は「本書は去勢された男たちのための、回復と覚醒の妙薬である。男とは本来どういう生き物なのかを、読者は知るだろう」と語っているそうである。
Posted by ブクログ
マタギの富治、文枝、イク。東北地方の厳しい生活を描く。
普段聞かれないマタギの世界がリアルに描かれている力作。
富治の青年から老年になるまでのマタギを通した人生がすごい。
それを支える文枝、イクも重要なキャラクターだ。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作ということで何の予備知識もないまま読んだ1冊。
著者のことさえこの本を読むまで知らなかったのだけど本当にこの本に逢えて良かったと思わされた。
Posted by ブクログ
何とも骨太な一冊だった。
何かの雑誌の書評を読み、読んでみたいと思い、美和子さんにリクエスト。
読み始めは秋田弁で書かれた会話やマタギの専門用語の出現で、少々もたつく。
でも、読み進めるうちにそれが快いリズム感を伴ってくるから不思議だ。
そう、これは大正時代に厳しい冬山で野生の獣たちと「共生」してきた東北のマタギを描いた作品。
今は狩猟だけを生業とするマタギは存在しないという。
しかし、ある時期だけに狩りをするマタギの人たちは今もいる。
作者の熊谷達也はそんな人たちと一緒に過ごし、自分の目で身体でマタギを感じ、それをこの作品にしたという。
私は東北の奥深い山の暮らしも知らなければ、もちろんマタギはおろか狩猟者のこともこれっぽっちも知らない。
しかし、この作品の臨場感は、まるで読者をそこに引きずり出してしまうほどの迫力で迫ってくる。
気温30℃の夏に読んでいても、吐く息が凍り付いてしまうような…
獣の匂いがそこの開いた窓から流れてくるような…
マタギたちの熊を追い込む声が聞こえてくるような…
第131回直木賞・第17回山本周五郎賞ダブル受賞作品。
Posted by ブクログ
年始の一冊目は長編を読むことにしている。
悩んだ挙句、選んだ本書。当たりだった。
濃厚なマタギの男の人生を描く。
最後は壮絶。
読んで良かった。間違いなく良書。
Posted by ブクログ
感想を書くにあたり便利な言葉がある
「凄い」だ!
この作品は凄い!
(小学生の読書感想文か)
もうひとつ高度な言葉を使ってみよう
「圧巻」だ!
この作品は圧巻だ!
(中学生の読書感想文になりました)
もっとわかりやすく言ってみようか
「めっちゃスゲェー」だ!
この作品めっちゃスゲェー!
(大人な感想文になりました)
とにかくこれだけで『邂逅の森』が素晴らしい作品ということは伝わるでしょ!
マタギとして生きる男の人生、女とのチョメチョメ、そして熊との死闘を描いた物語
詳しくは他の人のレビューを参考に!
で、私もこれから実践してみようと思います
仕事でもしもの時は、妻のことを思おう、、、
帰って、妻の手を握りたいと思おう、、、
そしたら、必ず力が湧いて出てくるはずだ
っーか、オメェの仕事は命の危険をかけた仕事ではないやろー
( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
そもそも、妻は手を握らせてくれないだろー
( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
Posted by ブクログ
熊谷達也の邂逅の森を読みました。
舞台は秋田、マタギの主人公は夜這いして地主の娘と出来てしまい発覚して鉱山に送られます。
今はまた大らかになった感じがしますが、昔は大らかだったんだなと。
マタギの生活もわかり面白かったです。
Posted by ブクログ
・明治から大正・昭和へと移り変わっていく中での東北の山村の生活風景を軸に、阿仁マタギや炭鉱での生活を丹念な筆致で描き出した快作。山岳小説を期待してたけど大正物の一冊として面白く読んだ。淡々と書かれているようで実に膨大な内容が盛り込まれていて、惹きつけられて一気に読み進めた。面白かった。
Posted by ブクログ
マタギの村に育ち、何の疑問もなくマタギになった男が、あることをきっかけに村を追われる。その人生を描いてます。
特殊な世界、今とは違う時代背景が興味深く、村を追われてからもじりじりと生きていく主人公の生き様も読ませてくれた。
Posted by ブクログ
マタギ×クマ。
っていう大好きなジャンルなので前から読んでみたかった。予想に反して一人の男の波瀾万丈の半生記で読み応えたっぷり。深夜に「ちょっとだけ読み進めておこうかな~」と思って開いたら、最後までやめられず朝になっていたくらい。
マタギ言葉とか風習とかの描写が細かくて、かなり綿密かつ専門的な調査の上で書かれた作品と思われます。それだけでも読んだ甲斐があった。あと、山での張りつめた空気がいい。東北出身の作家でないとこの空気は出せないと思う。
しかし気になるのはこの男、下半身で生きてるんじゃあ・・・という傾向がなきにしもあらずで。とくに後半。いや決して下品とか好色とかいうわけじゃないだけど、女に対する評価が「結局それ?」な感じで納得できなかったんだよなあ。女側からすればこれ以上勝手な男はおらんというか。文枝さんやイクさんみたいに出来た女ばっかりじゃないぞ。
ただそういう俗世のドロドロな人間ドラマを振り払うくらい山での彼は魅力的。最後のほうで再会したマタギの頭領さんが言う台詞も重みがあります。
Posted by ブクログ
骨太というか重厚というか、読後にいろんなこと考えさせる書物です。
時代は20世紀初頭、今から100年ほど前の東北地方。自然に翻弄されながらも自然に寄り添って生きるマタギの若者が主人公です。
失われた日本の風土の中で、因習に囚われ、過酷な運命に抗いながらもマタギであり続けようとした主人公富治の生き様は、現代の男性には稀少となってしまった獣性を感じさせながらも、一本芯の通った男気を見せてくれました。人としてどう生きていくのか?富治は絶えず問いかけながらも、獣を狩るマタギ仕事に己の答えを見出そうとしていたようでした。
序盤はマタギの狩猟について細かい描写がされており、冬山の寒さに凍えながら一緒にアオシシ(かもしか)やクマを狩る興奮に身体を熱くさせるほどでした。
中盤では運命に翻弄される富治の苦悩と、己の居場所を再びマタギに求め復帰するまでの道のりが描かれてます。一人の女に心奪われたことによって心ならずもマタギ仕事を絶たれ、村さえ追われ炭鉱夫として働き始める富治ですが、そこでの出会いがマタギとしての再スタートにつながっており、終盤に向けて富治が悟る(?)己の存在理由についても様々な伏線が張られているようでした。
全編を通して日本の山村の風習、因習、マタギの掟、狩猟などなど語られており、近代日本が帝国主義を突き進んでいった時代を、東北の山村視点で描かれていて、歴史視点でも楽しめる内容です。さらに主人公富治をめぐって二人の女性が登場しますが、性についての描写も多々あるものの、そこにはエロスを匂わせるものでなく人間の営みとしての性、生きる本能というか、男も女も理性でなく本能で感じたら交わる、というような、『おおらか』というか?個人的に感じました。ちょっと言葉にしずらいです。
終盤、マタギとして大成し壮年期の富治にも、自然の脅威とは別の脅威、戦争の道を進む社会、乱獲による獣の減少、そして過去から現れる女と、己の存在理由を揺るがす事由に直面していきます。マタギとして生きてきた彼はその答えを『山の神様』に求めようとし、クライマックスの『ヌシ』と呼ばれる巨大なクマとの一騎打ちへなだれ込みます。
ラストはとてもキツく感じました…しかしながら感じたことは、人間は生かされている!という自然や社会の厳しくも慈悲深い真理であると自分ながらの理解に至りました。
山本周五郎章、直木賞ダブル受賞の栄誉は納得の感動巨編でした。
Posted by ブクログ
「マタギ」がテーマのネイチャー系小説を予想していたが、完全に裏切られた。いい意味で。もちろん期待していた「自然との共生」もテーマの一つではあったのだが、それ以上に物語としてとても面白かった!昼ドラ的ドロドロの愛憎劇あり、官能的な濡れ場あり、ホラー映画のごとくグロい熊との対決シーンあり…かなりの長編だがまったく飽きさせず、一章一章が短篇としても読めそうなほど。登場人物もそれぞれ個性的で愛おしい。でも、東北弁がリアルすぎて映画化は難しいかな(^^;;。W受賞も納得の秀作!
Posted by ブクログ
こういう書き方をされると、他の小説家が書きにくい。
どういう書き方かというと、綿密に調べ上げた膨大な資料の元に書いているからだ。
今回は日露戦争から満州事変にかけての、東北における「またぎ」の世界を詳しく描いている。
ついでに銅山で働く「炭鉱夫」の実態も微にいり細にいり描写されている。
インスピレーションに頼って、恋愛小説を書くようなお気楽(?)な小説家は、思わず居住いを正さなきゃっていう気になるだろう。
やはり直木賞は努力賞なのだろうか?
著者は東京電機大学卒のバリバリの理科系。
さもありなんと思わされる。
・・・・・・
ところが心理描写も巧みで、ストーリーテラーとしての能力も高いことに驚かされる。
456ページの大作(?)だが、飽きさせない。
途中何度もホロリとさせられた。
知らない世界を勉強する意味でも、読んで損のない本である。
Posted by ブクログ
読むのにとても苦労した。
なにより主人公の富治に共感できなかったからだろう。
だが、それでいいのだと思う。
この時代だからこそ、男性だからこその考え方なのだろうと感じたし、作中でも彼は「馬鹿」と何度も言われているシーンがあって、少しすっきりしたから、というのもある。
ただ、こういう本は苦手だ。
性表現が多く、自然・野生の厳しさを感じるシーンも多い。
それはきっとこの本には必要なことで、だからこそ大きな賞を受賞したのだろうと納得できるのだが、そういうものが苦手な私には辛く、苦しかった。
こういう作品に素直に感動できるようになるには、まだまだ経験値が足りないのだろう。
Posted by ブクログ
星3.5という感じ。
マタギの仕事がシビアに
渋く表現されている所は
よかったけど、
やっぱり…という感じで
女性というか性がつきまとうのが
どうも邪魔くさい。
一昔前の男性が、昔ながらのよさ?
みたいな本を書こうと思ったら、
そうなるの?って思う。
昔の男はそういう事で頭がいっぱいって
感じがして、なんだかなーと、
そこでガックリきてしまう。
自然を相手の仕事は博打に近い感覚
なんだけど、
でも、やっぱり真摯な人達が支えている、
という感じはよかった。