瀬尾まいこのレビュー一覧
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ネタバレ書店への愛を込めて贈る珠玉のアンソロジー。
私は瀬尾まいこさん、三浦しをんさん以外は初読みの作家さんだったけれど、本との新しい出会いや、書店の存在価値について改めて考えさせられる作品ばかりだった。
やっぱり私は書店が好きだ♪
・続きは書店で(瀬尾まいこ)
あと1ヶ月で閉店してしまう書店にアルバイトで入った菅原くんと、占いをやっている主人公(ルイーズ)の交流の物語。
菅原くんが友達を100人作ろうとしていたけど、友達は必ずしも人ではなくて、本そのものだったり登場人物に対しても友達という感情を抱く視野が新鮮だと思った。
自分にとって支えになる本や登場人物が力を与えてくれることもある。素敵なお話だった。
・歌うように生きて(一穂ミチ)
飲み会で出会った中国人のリウと潤。潤はリウにルンと呼ばれ、二人の交流がスタートし毎週会うような仲になる。大学の生協にある書店で待ち合わせし、大学構内で会うようになる二人だった。
ところがある日、リウは家庭の事情で突然中国に帰国することになる。
そこから数年後リウが逮捕されたとネットニュースで知った潤。過去のことを振り返りながらも、ちょっと切ないけれど、純粋なリウのために居場所の作ろうと日本語と中国語の書籍の並ぶブックカフェを立ち上げた潤。
2016年〜2025年の時系列でストーリーが展開されていくけれど、リウと潤(ルン)の素朴なやり取りに胸が熱くなるところがあった。リウがいつかまた潤(ルン)と再開できる日が来ますように…!
・手に取って見てみろよ(坂木司)
本屋の前で振られた浅井と友人の高木が、高木の祖父母の故郷の岡山のシャッター商店街でお店を開店させるというお話。
本屋の利益率が良くない現実ではあるが、インターネットではなく手に取って本を選べる魅力や、人が集まる空間を作るって素敵なことだと思った。
・小鳥たち(凪良ゆう)
離婚して地元に戻り、父の書店を継ぐと決めた一葉。書店の中にカフェを作ることにした改装中の時期に、同級生の越智が来店し交流がスタートする。越智も家庭の不和や仕事のことで適応障害で地元に戻っていた。
改装後のお店も、今までの常連さんにプラスして越智のようなお客さんも増え、居場所を作り出している一葉。奮闘しながらも結婚や離婚を経験し、「一周回って、わたしは見失った本来のわたしに戻ったと思えばいい。」と前向きになっている姿に励まされた。私も一葉と同年代〜。元気をもらったお話だった。
・見晴らし書店の一日(三浦しをん)
東京の西の郊外で曽祖父が始めた小さな書店「見晴らし書店」。今は祖母と父親と主人公の花布で営んでいる。パートアルバイトさんと、地元の常連さんとの一日。
本の配達も行っている見晴らし書店。「まほろ市」にある設定のようで、「まほろ駅前」シリーズのファンとしては嬉しい気持ちになった♪
書店は高齢者を見守る街のセーフティネットとしても機能していて、街の大切な一つの要素になっているなぁと実感。街の書店は減る一方だけど、書店の存続を希望する人は意外と少なくないのかもしれない。 -
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中森百合(リリー)は両親の離婚で、母に選ばれなかったことをずっと引きずって生きている(読んでいると少しずつ感じる)。妹は母に似て美しく、勉強もできて、地域のいい会社で働いている。中森は定職につかず、バイトや調理コンテストの賞金で食いつないでいる。中森は相手を考えた料理を作るし、目の前の関わっている人とはしっかり付き合えるのに、いつも一歩引くし、仕事などの関わりが切れると相手が会いたいと思っているのに自信なく、会いに行けない。そんなリリーが色んな人と関わりながら料理を作り、少しずつ自己肯定感を取り返していくお話。ちょこちょこ登場する料理やゼリーがとてもおいしそうで、鶏肉のトマト煮を作ろうと久しぶりに手羽元買ったのに、醤油で煮てしまった…。
大家のばあさんとの軽妙で遠慮のない会話や、妹に嫉妬めいた劣等感を感じながらも大切に思い、気持ちが繋がっていくところが、心がホワホワと暖かくなって、読んで気持ちの良い本です。
読めれば小学生でも大丈夫ですが、主人公が考えていることなどは経験値が必要な内容なので、中学校くらいから。ゼリーの美味しそうな感じは小学生にも惹かれると思います。 -
Posted by ブクログ
この本を購入してから
なんとなくすぐに読まなかった私。
「何でこの本をもっと早く
読まなかったんだろう」そう思わされるほどの
とっても良い本だった。
主人公の梨木君は
自分は何の才能もなく
普通の人だと深く悩んでいるけれど
梨木君は人のことをよく見ている。
少しでも相手が
今よりも幸せになってくれるようにと
その心の声に耳を傾け続ける。
そしてなにより失敗を恐れずに
相手のために行動を起こすことができる。
なかなかできることではない。
それはまぎれもない梨木君の才能だ。
悩みを抱えた人達が
梨木君と出会い
大きな一歩を踏み出せたり
かけがえのないものに気づけたりと
それぞれの気持ちに触れるたびに
微笑ましくって くすっと笑ったり
胸が ジワっと熱くなって涙が出たり
とってもあったかい気持ちになった。
強くて優しさあふれる
あったかい本に出会えたことに感謝。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごく好きな物語だった。
主人公のリリーの性格が良くて、まっすぐ過ぎず、キラキラせず、オドオドせず、下倉いわく、やさぐれ感。大家さんとの掛け合いもお互いに遠慮がなく心地よい。
親子丼の章も良かったけど、私も料理が苦手なので4章の恵実さんの話が好き。私もリリーのアドバイスを受けたい。大葉をレンチンするなんて考えた事もなかったー。って作者の瀬尾まいこさんが料理上手なのかな。
とにかくこの章を読んで、そんなに毎日頑張らなくてもいいと背中を押された気がした。
リリーは老人ホームでの仕事に落ち着いたのかな?「あらき」に顔を出して欲しかったな…
そういう意味でも続編を期待したい! -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ありがとう」と言われる仕事は多いけど、「おいしい」と言われる仕事は少ない
言われてみるとまさにそうである
人間にとって「食」ほど大事なものはない
30歳が近づくこの頃、強く感じる
仕事が忙しい、子育てが大変、生きているだけで精一杯
そんな中でも、おいしいものを食べる、その一瞬だけで心が救われる瞬間がある
不思議なもので、おいしいと感じるだけでなく、蓋をしていた、忘れていた、奥底にあった想い出まで蘇るのだ
家庭料理、外食、惣菜、ファストフード、その他全て、食に貴賤は一切ない
これからも私は、私の食べたいものを食べられるだけ、存分に作り、存分に食べて生きていく
生に必須の行為が、気持ちを、心を満たしてくれるなんて、人間はなんてラッキーなんだろう -
Posted by ブクログ
ネタバレ~ 家族の大切さに気付くおはなし ~
ある日の新聞に親が離婚した教え子を元気づけようとこの小説(本)をプレゼントした先生の話が載っていた。その記事を目にしたことが切っ掛けで読んだ小説。文庫本の装丁が単行本と同じデザイン。 新刊当時話題の小説で、その頃住んでいた家の近くの浦和駅の本屋にある目立つところにある棚に並んでいたことを思い出しながら読んだ。
物語は生みの親と事故による死別や仕事の海外赴任などで別れた主人公優子の小学校入学から結婚するまでの出来事が主人公の視線で描かれる。優子は2人の母と3人の父に養われながら育つ。幼いころから大人になるまで、年齢を強く感じるエピソードが続いていく。
このストーリーの準主役と言えるのが、親子としては少々年齢が近い母の梨花さんと、父の森宮さんだ。ふたりは優子を育てていく事を決意して結婚する。優子と暮らすようになり、やがて優子の喜怒哀楽や成長を自分の生き甲斐にしていく。梨花さんは持っているお金はどんどん使ってしまって給料日前には所持金が乏しくなるような無計画な消費をしたりする。作中でも3回の結婚をするなど、一見ハチャメチャなようだが、人を惹きつけ人と親密になるセンス抜群の天真爛漫な女性。森宮さんは東京大学を卒業し、現在は一流企業に勤務するサラリーマンで、世間一般的には順調な人生を歩んでいるような人。ユーモアある話し方をするひとで、作中の森宮さんの話に何度も「これだ!自分もそう思う」と感じた。 同窓会で再会した二人は結婚する。 優子が中学校を卒業する頃、優子を連れて2カ月前に森宮さんと結婚した梨花さんは突然家を出て、居なくなってしまう。森宮さんは動じず、改めて親として優子と暮らしていく決意を強くする。優子は現実を受け止める。離婚届を書いたその日、梨花さんとした会話の内容を森宮さんが優子に話す。
「…梨花が言ってた。優子ちゃんの母親になってから明日が二つになったって」
「明日が二つ?」
「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日がやってくるんだって。親になるって未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんてすごいと思わない?未来が倍になるなら絶対にしたいだろう。それってどこでもドア以来の発明だよな。しかもドラえもんは漫画で優子ちゃんは現実に居る…」
読んでいて楽しそうに優子の話をする梨花さんの姿が目に浮かんでくる。ここまで優子ちゃんに愛情を注いでくれていた梨花さんはなぜ去ったのか? 後に明らかになる。
読み進むと結婚の日が近くなり、残りのページが少なくなっていく。森宮さんとの生活はもう長くは続かないことが読んでいても分かる。この先どうなっていくのかすごく知りたいけれど、今の暮らしががもう少し続いてほしいような気持になり、読むペースが思わずゆっくりとなってしまう。
この物語に欠かせないのが、ステキな料理と音楽(ピアノ)の持つ力の話だ。人が一生懸命作った料理が人を元気づけること、心を込めて奏でられた音楽がいかに人々の心と身体に癒しと潤いを与えてくれるかが素敵な文章で綴られ、ストーリーの欠かせない要素となっていく。
結婚式前夜、森宮さんと二人の食卓の光景がこの物語のクライマックス。優子は思う
「…早瀬君(婚約者)との暮らしは待ち遠しい。それでもここにもう少しいられたらと思わずにはいられなかった」
森宮さんが語る 「あの時、同窓会に行ってよかった。梨花と会わなかったら俺今頃路頭に迷っていたな…路頭には迷わないけど、でも、人生はきっともっとつまらなかった。よかった。優子ちゃんがやってきてくれて」 「自分のために生きるって難しいよな。何をしたら満たされるかさえわからないんだから。金や勉強や仕事や恋や、どれも正解のようでどれもどこか違う。でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで十分だって思える。これが俺の手にしたかったものだって…」 会ったことがなく、実在さえしない森宮さんが話している姿が目に浮かぶような場面。家族と過ごす何気ない日常の喜びや、人間にとっての幸せとは何かが凝縮されている。読んでる自分も何となく喜びを共有できた気分になった。
物語の最後で結婚式当日を迎え、優子を育てた親たちが一堂に集う。優子と一緒にバージンロードを歩き、森宮さんが家族の優子を手放す時が来る。
…どうしてだろう。こんなにも大事なものを手放す時が来たのに、今胸にあるのは曇りのない透き通った幸福感だけだ…本当に幸せなのは誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へバトンを渡す時だ。あの日決めた覚悟が、ここへ連れてきてくれた。
物語の始まりと終わりは森宮さんの独白で締められている。
家族がどれだけ人の幸せに大切なのか。お互いがお互いを支えているのかを気付かせてくれるお話。読みながら自分の家族のことを考える。そんな物語です。いつの間にかどっぷりと小説の世界に浸る。2019年の本屋大賞受賞作品。