雫井脩介のレビュー一覧
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かつて裁判長だった梶間勲が、一家3人を惨殺した裁判を担当し、容疑者の武内を証拠不十分として無罪判決を下した。
数年後、武内は梶間家の隣に引越して来て、恩人と仰ぐ梶間の家庭の介護や育児・家事を手伝う。
しかし、その頃から梶間家には何故か不穏な出来事が相次ぐ。
その出来事の正体は何なのか。そして過去の裁判の真相はどうなのか。
物語の終盤になると展開が加速し、真相が明らかになるが、それまでモヤモヤした。
好意ある相手への異常な尽くし方と執着、その思いに対して、少しでも相手と温度差があると、狂気への変化など、人間の心理の恐ろしさを感じ、身の毛がよだつ作品だった。
ドラマは小説とストーリーが異なる -
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ネタバレ単刀直入に、とても面白い本でした。
中盤から後半にかけてはずっとドキドキ、ハラハラしっぱなしで手に汗を握るストーリーでした。
ただ、それだけではなく武内に一切の不信感を抱かずに雪見を変人扱いする俊郎にイライラしたり、武内の思惑通りに梶間家から追い出されてしまった雪見のやるせなさなど様々な感情が次々に湧き出てくる一冊でした。
最後、勲は雪見に対して逞しいという感情を漏らしていて確かに逞しい女性ではあるけれど、個人的には杏子が誰よりも強く逞しいなと感じました。
雪見に裏切られかけたにも関わらず、杏子は変わらずに雪見に感謝の気持ちを持ち続けており、自身の旦那さんが行方不明になり最悪の事態も想像出 -
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「面白いけど後味が悪いので、読むのにMPが必要」という印象が強かった雫井脩介さんですが、これは重厚な警察サスペンス物として一気に読み切ることができました。
所々胸が苦しくようなシーンがあり、なにより台詞の言葉選びや描写が本当に丁寧なので、みるみる世界観に染まっていきました。
読み終わった時、「読み終わった」ではなく「事件が解決した」という感覚になったくらい没入していました。
前情報として入っていたクライマックスシーンよりも、エピローグのところが自分はグッときてしまいました。なんならちょっと泣きました。何に心を動かされたのか上手く言葉にはできないけれど。 -
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ネタバレ病院で点滴への薬物混入が起こり、2人の命が失われた。逮捕されたのは当時入院していた少女の母親。彼女は悪い人じゃないけど、お節介で距離感がバグってるような人。こんな人いるなーと思いながら読んだ。長女の由惟が会社で理不尽に辛い目に会うのが本当に可哀想で、彼女のために母親が無罪で良かったと思った。人は追い詰められると、やってないことでも自分がやったと言ってしまう、このことを由惟が会社での出来事を通して理解し、母親の側に寄り添うことができるようになるまでの描写が見事。母親の無罪確定後はすんなり終わるのかと思いきや、大物弁護士のまさかの一面も暴露される結果となり、最後まで気の抜けない作品だった。
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ネタバレ自分の息子が行方不明になったら、殺人事件の加害者としてか、被害者としてかどちらが良いのかという答えの出ない問いを題材にした一冊。殺人を犯していたとしても息子の無事を願う母貴代美と死んでいたとしても息子の無実を願う父一登の二つの視点で描かれるのだが、私は論理的で人に迷惑をかけてはいけないという考えの一登に感情移入しながら読んだ。対して、貴代美はというと息子の友達が、規子はそんなことしない、犯人扱いされているのが許せないと話しているのを、真っ直ぐ信じる気持ちを押し付けないでと反論していて、理解に苦しんだ。
この物語の印象に残ったシーンは、一登が罪を犯していても生きていてほしいと考えを改めたと -
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とても面白かったです。
確かにこのお母さん野々花はちょっと変わった感じで、疑ってしまったところもあったのだけど、そういった感情が冤罪の引金になりうるのではないか、と自戒。
それにしても、検察の「冤罪が生まれたとしても自分のせいとは思わない」という言葉は、耳を疑いました。これはフィクションなんですよね…
冤罪によって苦しんでいる人が現実にもいる。それは、検察の人達も目を背けられる話ではないでしょう。
一方で、弁護人の立場でも、真実をねじ曲げようとする…いかに事情があるにしても、法を司るものとしてあり得ない…そこも小説の上の話でしょうけど…
救いは、二人の姉妹の純粋さでした。
これから少しでも良い