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Posted by ブクログ
下巻では、登場人物たちが抱えていた秘密が次々と明かされ、物語の緊張感は一気に高まる。単なる法廷ミステリーの枠にとどまらず、過去の傷や苦しみを抱えながらも懸命に前を向いて生きようとする人々の姿が丁寧に描かれており、深く心を揺さぶられた。
特に印象的だったのは、弁護士・伊豆原の執念である。地道な聞き込みや足を使った調査を積み重ね、小さな矛盾も見逃さず真実へと迫っていく姿勢。そして、「人の人生と尊厳を守る」という揺るぎない信念を貫き、依頼人を最後まで信じ抜く姿に強く胸を打たれた。伊豆原が真実を追い求めたからこそ、事件の真相が明らかになっただけでなく、傷ついた人々の心にも救いがもたらされたのだと感じた。
その中でも、野々花の娘・由惟の成長はとても印象深い。やってもいないことを疑われ、まるで犯人であるかのような視線を向けられても、自分の思いをうまく伝えられず、苦しみを抱え込んでいた。しかし伊豆原と出会い、自分を信じてくれる大人の存在に支えられたことで、少しずつ心を開き、自分の本心を言葉にできるようになっていく。そして、痴漢事件の目撃者として勇気を持って証言し、冤罪を晴らすための大きな力となった。その姿からは、人は誰かに信じてもらうことで前へ進む勇気を得られるのだということを強く感じた。
タイトルの『霧をはらう』が意味するのは、事件の真相を明らかにすることだけではない。人々の心を覆う偏見や思い込み、過去の傷という「霧」を取り払い、本当の真実へとたどり着くことでもあるのだろう。巧みな伏線回収や緊迫した法廷での攻防に加え、「真実に向き合う勇気」と「人を信じることの大切さ」を教えてくれる、深い余韻の残る傑作だった。
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