島薗進のレビュー一覧
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「宗教の歴史は長いが、宗教学は近代になって経験科学の発達を背景としてヨーロッパで誕生した比較的歴史の短い学問である。近代人は宗教に距離をとりながらも、人類が宗教を必要としてきたゆえんを直観的に理解し、時に知的反省を加えてきた。宗教学の知は西欧的近代学知の限界を見定めて、芸術・文学・語りや民衆文化の方へと開かれようとする脱領域的な知ともいえる。本書は古今東西の知から宗教理解、理論の諸成果を取り上げ、現代を生きる私たちにとっての『宗教』の意味を考える視点を養う決定版ブックガイドである。」
とあり、著者が名著として取り上げた30冊の書物で、新しい学問である宗教学を語ろうとしている。取り上げられる内容 -
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《宗教を正しく理解し、自分と相手のことを理解してみよう》
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「私たちの何が怖いのですか?」
駅前や玄関先で宗教家の方にこう聞かれた時、あなたはどう答えるでしょうか?
「今急いでいるので、失礼します。」
「すみません、結構です。」
こう答えつつ、自分が何を恐れているのか分からずモヤモヤした気持ちを抱えていた時、こちらの本に出会いました。
こちらの本では、「宗教学とは何か」という問いかけから始まり、様々な宗教についてや、現代の宗教観に至るまで、様々な観点から宗教について簡潔に分かりやすく解説されています。こちらの本を読んで、今まで「何となく怖いな」と思っていた新しい宗教や宗 -
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宗教とカルトは本当に難しい問題で、おそらく「答え」はないのでしょう。
こういう問題を考えるうえでは、このような複数人での対話が重要になる気がします。
「理解できないと重んじられない、ではなくて、理解する前に重んじる」「宗教的要素を教育から排除してきたことを見直す」といった、自分が普段から考えていることが述べられていて、深く共感しました。
若松さんが「拘束」はカルト化の原因だと述べたあとに、川島さんが宗教においてある程度の拘束は避けられないと、自身のキリスト教徒としての経験から正直な感想を述べていたのが印象的でした。では何が問題なのか、互いに共存できる考え方は何なのか。こういうのは対話によっ -
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NHK「こころの時代」を興味深くチェックするようになったのは、本書のもととなった放送を見て以来。よって、本書の購入は記念的な意味だったが、各先生が放送で語られたことを一歩深めて書き下ろしているコラムが追記されていて、より深まった。
”カルト”について考察を進めると、宗教と国家、社会における個人へと問いがつながっていく。その過程が平易な語りでなされているのは、どの先生方も当事者として、危機感をもって関わってきてたからだろう。こうした番組が多くの人の目に留まり日本社会の宗教リテラシー向上につながることを願う。
①カルトの定義②宗教と国家の歴史的把握③宗教間対話の可能性④宗教の意義、役割 -
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統一教会関連のトピックを丹念に詳細にまとめた好著だと思う.自民党と統一教会の関係に関してはこれまで読んできた内容と特に異なることはなかったが、創価学会・公明党の歴史や立場の解説は圃場に面白かった.時に参考になったのはフランスの状況を記載している第4章だ.良心の自由と礼拝の自由と保障するライシテの原則を堅持している国で、反セクト法がどのような過程で成立し、どのように運用されているかが述べられている.セクトのとりあえずの定義として「何らかの正統の観念が存在する多かれ少なかれ集権的な社会において、異端的な社会的行動によって公共の秩序や個人の生存を脅かすと問題視されうる組織」を挙げているが、法案自体に
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○予定説と資本主義
西洋の近代化が進んだ原因は、プロテスタント・カルヴァンの「予定説(*)」の影響が大きい。
職業労働に専心し、自分は救われているとの確証を得たいとする態度が広がった。
*人間が死後、天国に行けるか地獄に落ちるか予めすべて神によって定められており、どんなに神に祈ったり、祀ったとしても、救われない者は救われないものとした。
○宗教と生命倫理
人工中絶への考え方
○宗教とエコロジー
アニミズムの再評価
○正教分離
・宗教に友好的な政教分離(宗教の自由を守るための政教分離):イングランド、スコットランド、ギリシャ、ドイツ、アメリカ
・宗教に非友好的な政教分離(国家は宗教に関わっ -
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コロナ禍によるいわゆる「ニュー・ノーマル」って産業構造やライフスタイルの問題だけじゃなく、人の心にも大きな影響を与えることになるでしょう、きっと。だから芸術だとか宗教を求める力も大きなってくるんだろうな、となんとなく思っていました。芸術はみんな大っぴらに語るとするとして、時代の要請に応じて宗教がどんな変化をしていくのか、そもそも時代の変化に合わせて生まれてきた新宗教って何?というモヤモヤ感によって手に取ったのが本書です。かなりスッキリしました。プロレス団体の集散離合のように新宗教の相互関係が初めてわかりました。同時に公明党とか日本会議とか現在の政治を語るうえでの重要な要素としての新宗教の大きさ
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デパ地下の試食コーナー巡り的です。
後程、政治思想史を学ぶ上でも有益です。
①宗教学の先駆け
空海『三教指帰』―比較の眼差し
イブン = ハルドゥーン『歴史序説』―文明を相対化する
富永仲基『翁の文』―宗教言説の動機を読む
ヒューム『宗教の自然史』―理性の限界と人間性
②彼岸の知から此岸の知へ
ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』―形而上学の解体の後に
カント『たんなる理性の限界内の宗教』―倫理の彼方の宗教
シュライエルマッハー『宗教論』―宗教に固有な領域
ニーチェ『道徳の系譜』―宗教批判と近代批判
③近代の危機と道徳の源泉
フレイザー『金枝篇』―王殺しと神殺し
ウェーバー『プロテスタンティ -
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今まで「宗教は胡散臭いから苦手」と毛嫌いしていたが、どうやらそうでもないようだ。
科学と宗教の意外な関係性を知ってしまったら、宗教の歴史を学ばずにはいられなくなった。
宗教は、何をおいても秩序に関心がある。宗教は社会構造を創り出して維持することを目指す。
科学は、何をおいても力に関心がある。科学はその「力」を、研究を通して獲得することを目指す。
科学と宗教は、真理よりも秩序と力を優先する。
したがって、両者は相性が良い。
ーユヴァル・ノア・ハラリ
宗教、芸術、科学はすべて、
同じ一本の木から生える枝である。
ーアルベルト・アインシュタイン -
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筆者の島薗さんは小説への造詣が深い。
古い小説から新しい小説まで、日本、海外、子供向け、大人向け、様々に、バラエティー豊かに紹介されていることがうれしく、飽きない。
紹介文に、各小説への愛を感じる。
この本を読むと、
(言われてみれば、当然だけど)宗教と物語は非常に近い関係にある。
ということがよく分かる。
宗教とは、人が生きる上での苦難に対して、なんとか生きていけるように、寄り添ってくれるものだと思う。(人は一人では弱くて生きられないので、寄り添って、支えてくれるものがあれば、生きていける。)
物語は、読者が自分と違う登場人物と同化し、物語世界を疑似体験することで、今の囚われている自分 -
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序章 宗教は物語のなかにある 第一章「死」を超える 第二章「弱さ」と向き合う 第三章「悪」に向き合う 第四章「苦難」を受け止める 終章 重なり合う宗教と物語の力
「物語好きの方、また、宗教に関心があるが、宗教教団や教義は敷居が高い、親しみづらいと感じている方に楽しんでいただきたい」との著者の想定読者層にピタリとはまり、どの章のどの参考文献からの引用も興味深く考えさせられるものばかり。
『きりこについて』『想像ラジオ』『わたしを離さないで』など既読のものも改めて読み直したくなったし、遠藤周作『深い河』は読まなければ、という気持ちにさせられる。読書案内としても素晴らしい。 -
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著者は、1997年にクローン羊のドリーが誕生したことを受けて、当時の橋本首相が設けた生命倫理委員会に参加し、それ以降生命倫理の問題について第一線で取り組んできた、現・上智大学神学部教授である。本書は、NHKテレビテキスト『きょうの健康』に2013~2015年に連載された「いのちとモノ」をもとに加筆・再構成されたもの。
本書は、「現代のバイオテクノロジーや最先端の医療が目指しているものが、ほんとうに私たち人間の幸せをもたらすのだろうか」という問いをテーマにしており、著者は次のように考察を進めていく。
◆現代のバイオテクノロジーと医療は、私たちの欲望を限りなく満たす方向、即ち「幸福に満ちたいのち」 -
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[ 内容 ]
宗教の歴史は長いが、宗教学は近代になって経験科学の発達を背景としてヨーロッパで誕生した比較的歴史の短い学問である。
近代人は宗教に距離を取りながらも、人類が宗教を必要としてきたゆえんを直観的に理解し、時に知的反省を加えてきた。
宗教学の知は西欧的近代学知の限界を見定めて、芸術・文学・語りや民衆文化の方へと開かれようとする脱領域的な知ともいえる。
本書は古今東西の知から宗教理解、理論の諸成果を取り上げ、現代を生きる私たちにとっての「宗教」の意味を考える視点を養う決定版ブックガイドである。
[ 目次 ]
1 宗教学の先駆け
2 彼岸の知から此岸の知へ
3 近代の危機と道徳の源泉
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