【感想・ネタバレ】宗教学の名著30のレビュー

あらすじ

宗教学は経験科学の発達を背景としてヨーロッパで誕生した歴史の短い学問である。近代人は宗教に距離を取りながらも人類が宗教を必要としてきた理由を理解し、時に知的反省を加えてきた。本書は古今東西の知から宗教理解、理論の諸成果を取り上げ、現代人にとっての「宗教」の意味を考える決定版ブックガイドである。

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Posted by ブクログ

「宗教の歴史は長いが、宗教学は近代になって経験科学の発達を背景としてヨーロッパで誕生した比較的歴史の短い学問である。近代人は宗教に距離をとりながらも、人類が宗教を必要としてきたゆえんを直観的に理解し、時に知的反省を加えてきた。宗教学の知は西欧的近代学知の限界を見定めて、芸術・文学・語りや民衆文化の方へと開かれようとする脱領域的な知ともいえる。本書は古今東西の知から宗教理解、理論の諸成果を取り上げ、現代を生きる私たちにとっての『宗教』の意味を考える視点を養う決定版ブックガイドである。」
とあり、著者が名著として取り上げた30冊の書物で、新しい学問である宗教学を語ろうとしている。取り上げられる内容によっては、難解なものも含まれるが宗教学としての宗教が学べる素晴らしい本である。著者は執筆当時、東京大学文学部・大学院人文社会系研究科宗教学・宗教史学研究室教授。

「はじめに
P9宗教学とは
宗教学は発展途上の学である。宗教学はまだ若い。青い果実の段階だ。というのは、その望みが大きいからである。」
というように、宗教は昔からあるけれども、学問としての宗教学は新しい。

「P12名著を取り上げる場合も、狭く「宗教学者」の系譜をたどるよりも、広く宗教理解、宗教理論の諸成果を継承することの方がはるかにおもしろい。」
宗教を全体的に理解した方がおもしろいとある。

「P15宗教学のおもしろさ
宗教学はおもしろい。名著は世界について、社会について奥深い洞察を示した書物を期待してよい。
おもしろいということのもう一つの意味は、自分自身の生き方や考え方の核心に関わるようなことが考察されているということでもある。かっての哲学や文芸学には人間の生き方や考え方の根本につねに立ち返るような姿勢があった。」
社会について、自分自身の生き方や考え方の核心に関わるのが宗教学である。

このような導入で、紹介されている本は下記の30冊の本について解説。各個人興味深く読めるところもあれば、難解なところもあって、概して全体的に非常に面白い。

Ⅰ宗教学の先駆け
 空海『三教指帰』
 イブン=ハルドゥーン『歴史序説』
 富永仲基『翁の文』
 ヒューム『宗教の自然史』

Ⅱ彼岸の知から此岸の知へ
 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』
 カント『たんなる理性の限界内の宗教』
 シュライエルマッハー『宗教論』
 ニーチェ『道徳の系譜』

Ⅲ近代の危機と道徳の源泉
 フレイザー『金枝篇』
 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
 フロイト『トーテムとタブー』
 デュルケム『宗教生活の原初形態』

Ⅳ宗教経験と自己の再定位
 ジェイムズ『宗教的経験の諸相』
 姉崎正治『法華経の行者 日蓮』
 ブーバー『我と汝』
 フィンガレット『論語は問いかける』

Ⅴ宗教的なものの広がり
 柳田国男『桃太郎の誕生』
 ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』
 エリアーデ『宗教学概論』
 五来重『高野聖』

Ⅵ生の形としての宗教
 ニーバー『アメリカ型キリスト教の社会的起源』
 レ―ナルト『ド・モカ』
 エリクソン『幼児期と社会』
 ショーレム『ユダヤ神秘主義』
 井筒俊彦『コーランを読む』

Ⅶニヒリズムを超えて
 ヤスパース『哲学入門』
 バタイユ『呪われた部分』
 ジラール『暴力と聖なるもの』
 湯浅泰雄『身体論』
 バフチン『ドストエフスキーの詩学の諸問題』


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2025年09月27日

Posted by ブクログ

デパ地下の試食コーナー巡り的です。
後程、政治思想史を学ぶ上でも有益です。

①宗教学の先駆け
空海『三教指帰』―比較の眼差し
イブン = ハルドゥーン『歴史序説』―文明を相対化する
富永仲基『翁の文』―宗教言説の動機を読む
ヒューム『宗教の自然史』―理性の限界と人間性

②彼岸の知から此岸の知へ
ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』―形而上学の解体の後に
カント『たんなる理性の限界内の宗教』―倫理の彼方の宗教
シュライエルマッハー『宗教論』―宗教に固有な領域
ニーチェ『道徳の系譜』―宗教批判と近代批判

③近代の危機と道徳の源泉
フレイザー『金枝篇』―王殺しと神殺し
ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』―宗教の自己解体
フロイト『トーテムとタブー』―父殺しと喪の仕事
デュルケム『宗教生活の原初形態』―宗教は社会の源泉

④宗教経験と自己の再定位
ジェイムズ『宗教的経験の諸相』―「病める魂」が開示するもの
姉崎正治『法華経の行者 日蓮』―神秘思想と宗教史叙述の地平融合
ブーバー『我と汝』―宗教の根底の他者・対話
フィンガレット『論語は問いかける』―聖なるものとしての礼・儀礼

⑤宗教的なものの広がり。
柳田国男『桃太郎の誕生』―説話から固有信仰を見抜く
ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』―遊びの創造性と宗教
エリアーデ『宗教学概論』 有限が無限に変容する時
五来重『高野聖』―唱導と勧進の仏教史

⑥生の形としての宗教
ニーバー『アメリカ型キリスト教の社会的起源』―持たざる者の教会
レーナルト『ド・カモ』―神話的な生の形
エリクソン『幼児期と社会』 母子関係と自立の試練
ショーレム『ユダヤ神秘主義』―神話的経験の再活性化
井筒俊彦『コーランを読む』―言語表現からの実存解釈

⑦ニヒリズムを超えて
ヤスパース『哲学入門』―実存・限界状況・軸の時代
バタイユ『呪われた部分』―消尽と無による解放
ジラール『暴力と聖なるもの』―模倣の欲望から差異創出へ
湯浅泰雄『身体論』―修行が開く高次システム
バフチン『ドストエフスキーの詩学の諸問題』―多元性を祝福する

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2020年10月03日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
宗教の歴史は長いが、宗教学は近代になって経験科学の発達を背景としてヨーロッパで誕生した比較的歴史の短い学問である。
近代人は宗教に距離を取りながらも、人類が宗教を必要としてきたゆえんを直観的に理解し、時に知的反省を加えてきた。
宗教学の知は西欧的近代学知の限界を見定めて、芸術・文学・語りや民衆文化の方へと開かれようとする脱領域的な知ともいえる。
本書は古今東西の知から宗教理解、理論の諸成果を取り上げ、現代を生きる私たちにとっての「宗教」の意味を考える視点を養う決定版ブックガイドである。

[ 目次 ]
1 宗教学の先駆け
2 彼岸の知から此岸の知へ
3 近代の危機と道徳の源泉
4 宗教経験と自己の再定位
5 宗教的なものの広がり
6 生の形としての宗教
7 ニヒリズムを超えて

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年10月28日

Posted by ブクログ

日本の宗教学は島薗先生を抜きにして語ることはできないでしょう。そんな大家が味わう30冊。
大学院入学後の資料収集に役立つかな、と思い読みましたが、読んでいてなかなか難解。歴史・文学・哲学…そういったところに精通していなければ、なぜ島薗先生がこの30冊をこれほどの熱量で語っているのかがわからないような1冊でした。
この辺りの基礎教養を身につけた上で、いつか再トライしてみたいです。

それはそうと、心理学関係の学者も多々紹介されており、やはり心理学と宗教には強い結びつきがあるのだなあ、と心理学部生としては思うところです。

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2020年02月10日

Posted by ブクログ

本の選択眼は確か。それぞれの紹介は浅いが、名著の可能性、限界を示した点は参考になる。今後、各書を読みたくはなった。

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2016年08月01日

Posted by ブクログ

島薗先生の思想が垣間見えるラインナップながら、しかし抑えるところは非常によく抑えられていて素晴らしい。宗教学をもっと掘り進めたい人に。

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2012年02月15日

Posted by ブクログ

近代以前には離れがたく密接だった宗教(特にキリスト教)と形而上学の関係が次第に分離していく経緯が1〜3章に書かれており、これが面白かった。哲学者であるカントやニーチェが本書で取り上げられるのは意外であったが、その訳を知って興奮を感じた。本書には他にも社会学者や思想家、文学評論家などが取り上げられており、宗教というものの人間との関わりの広さと深さに想いを馳せることができる。

個人的にひときわ興味深いと思ったのはブーバーで、ブーバーに影響を受けたというバフチンも非常に気になる。ジェイムズとエリアーデも読めたら読んでみたい。

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2018年01月13日

Posted by ブクログ

無神論者が「先進諸国」を支配したかのような情勢だが、それは仮の姿である。幕をあげれば、神仏精霊が語られない日は1日として存在しない。イスラム国しかり、年中行事しかり、冠婚葬祭しかり、映画や文学作品しかり、漫画やアニメしかり。ありとあらゆる場に宗教は躍動する。それを否定しようとしまいと、人は真に宗教を無に帰すことはできない。なぜなら、デュルケムに言わせれば、神は社会それ自体であるからである(ということになるようだ)。(はてこの解釈でよいものだろうか、原著にあたる必要はある。)
宗教、ないし信仰とはなにか。これは人間の持つ根源的な問いのひとつなのか。それは人間とはなにかと問うことに近い。宗教学とはすなわち、人間学であると言えるかもしれない。実際、本書に選出された30の著作の多くは、社会学・心理学・歴史学・民俗学・文化人類学・哲学等々の名著にも数えられる。これはすなわち、知性がいかに宗教と闘ってきたのかを示す。解きえぬ謎なのであり、そうであればこそ、新たな理論を育む肥沃な土壌でもあるのだろう。

さて本書を読んでの感想だが、豊作を期待できる未開の地に読者を誘う試みに感謝すると同時に、全体としてとりとめのない感を覚えずにはいられなかった。自分で学べよ横着するなとは思うが、30ではなく10くらいでとどめてもと思わずにはいられない。解説をいただいておいてなんとも申しあげづらいが、素直な意見としては以上だ。

諸著を比較して読んでいたわけではないし、原著を読まずして比較すべきではないが、やはりウェーバーの理論には抗いがたい魅力を感じた。人類の歴史は、超越者やその世界を想うこととともにある。絶対的な他者とひとつになることへの不可能な願い。しかし、近代はその願いを自ら消滅させることに目覚める。醒めた近代人は、しかし残念なことに、醒めれば醒めるほどに、宗教や信仰と人の分かちがたい緒を露呈させる。わたしたちは宗教を否定して、それでどんな未来を描こうというのか。近代の偉大なる虚無を、ウェーバーはいち早く指摘する。

・・・文化発展の最後に現われる「未人たち」》letzte Menschen《にとっては、次の言葉が真理となるのではないか。「精神のない専門人、心情のない享楽人。この無いもの(ニヒツ)は、人間性のかつて達したことのない段階にまですでに登りつめた、と自惚れるだろう」と。

また、彼の提唱したありえるはずのない世界像ー「プロテスタンティズム」が「資本主義」を生むーは、今なお鮮明な色彩を失っていない。批判はいくらでも可能だが、彼の織りなす理論は傑出して独創的である。原著に一度挫折しているため、今一度挑戦したい。

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2016年10月21日

Posted by ブクログ

ちくま新書の『〜の名著30』シリーズは前作の社会学がなかなかの面白さだったが、本屋で今回の『宗教学』というタイトルを見た時、門外漢の自分としては「一体どんな著作が取り上げられてるんだろう、まさか無味乾燥な専門的研究書だらけじゃなかろうな…」などという思いが一瞬よぎった。だがその不安は杞憂だった。
者の「来るべき宗教学を展望する」という目標のもとに選ばれたラインナップは、ウェーバーやデュルケムのような定番のみならず、フロイト、ホイジンガ、エリクソン、井筒俊彦、ヤスパース、バタイユ、さらには一見宗教論と関係なさそうなバフチンのドストエフスキー論(!)まで取り上げられる幅広さ。著者の懐の深さが感じられ、宗教学に無縁な者にとっても実に面白いブックガイドとなっている。
このラインナップの何冊かは自分の蔵書にもあった(ただし積読状態)ので、これを機会に読んでみようかな…とそんな気にさせられた1冊だった。

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2009年10月07日

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