島薗進のレビュー一覧
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若松英輔さんと平野啓一郎さんの名前があるし、と軽い気持ちで手にした本。そして、長らく積読本。今回、ようやく読み始め、初めて世田谷事件の被害者家族である入江杏さん主催のミシュカの森という会があることを知った。そして、その会の講演をまとめたのがこの本であることも初めて知り、心して読まねば、との気持ちになって読んだ。
平野啓一郎さんの話では、死刑について考えさせられ、東畑開人さんの話では、居場所についてを考えた。特に居場所の話は自分レベルで考えられたと思う。そして、自分にとっての居場所について考えられた。もっと居場所を作らなくては、とも思う。居場所、座っていられる場所。立っている場所は落ち着かず、疎 -
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日本において新宗教がなぜ発展してきたのかを述べた論文で、研究書に近い位置づけです。機会あって宗教関連の簡単そうな本を何冊か読んでみましたが、これが一番内容的に難しくて重厚でした。
「世なおし」「心なおし」「病気なおし」という3つの側面をキーワードとして、各宗教の考え方や活動を捉えようとしています。
いわく、一般庶民に受け入れやすい心なおしや病気なおしのメッセージや、現世救済的な側面が大きいことが新宗教の拡大に寄与したと思われるとのこと。
大きく取り上げられているのは、創価学会、霊友会系(立正佼成会)、大本ですが、その他、天理教や世界救世教、エホバやオウム真理教など広く触れられています。
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宗教のうち、救済的な側面に着目して、なぜ宗教が発展・維持されてきたのか、その根底にある救いとは何なのかを考察した本です。
救済宗教あるいは救いを求める理由は、「人間には限界があるから」ということに尽きると思います。
科学や文明が進んでも、人間は死や苦悩などの限界に直面しなければならない。そのときに、今を生きる人間の精神は、科学や技術でコントロールできるものではないと思います。
そのときに、人間は救いを求め、ある人はより資本主義に邁進し、ある人は科学や技術に希望を見出し、ある人は救済宗教に惹かれていくのだろうと思います。
第1章では、物語や詩・歌詞の中に見られる「救い」のあり方を考察します -
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ネタバレ未解決事件の遺族である入江杏さんが主宰する集まりの場「ミシュカの森」。
そこへ招かれた方々が「悲しみとともにどう生きるか」をテーマに様々に語ったことをまとめた一冊。
六人の方それぞれの悲しみに対する向き合い方に考えさせられたり理解が深まったように感じたり。
第4章東畑開人さんの「アジールとアサイラムとパノプティコン」という話が興味深かった。避難所と収容所。シェルターと管理所。
そしてその後の対談の中で「自分の物語を物語ることによる癒し」という話がなされます。河合隼雄先生が物語によって生きる力や癒しを得られるというようなことをいくつかの著作の中で語られていたことを思い出しました。
読みながら -
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『大学4年間』シリーズの宗教学編。
『大学4年間の◯◯学が10時間でざっと学べる』というシリーズの宗教学編です。
タイトルにざっととある通り、一つ一つの項目を深く掘り下げるものではないですが、宗教とは何かから世界の宗教、新宗教の展開や宗教が必要とされる場についてなど、広い分野をこの一冊で学べます。
個人的に理解が薄いと思っていた、仏教の諸形態や宗教と歴史の関りについて学びなおせたのも良かったです。
日本に住んでいて日本的な宗教観に慣れていると感じにくいですが、やっぱり宗教は政治や歴史、心理など様々な分野と密接に関係していて面白い。
今後も色々な本を読むにあたり、宗教学の基本の書として手元 -
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安部元首相殺害で関心が集まる宗教、カルトの世界。容疑者家庭における母親の一億円寄付、家庭崩壊がいわれるが、ではなぜ宗教にそこまで入れ込んだかという視点も必要ではないか、というのが冒頭の問題意識としてあった。読んでいくと、本来宗教とは、そういうものではないんだな、と思ったね。ただ、宗教の力を利用して、そういうことをする集団もある、と。見分けるポイントは「恐怖」「搾取」「拘束」する集団であるかどうか。あと「嘘」をついていないか、ということも言われていた。
「宗教というのは、その扉に鍵がかかっていないはずなんです。もしなんらかの宗教画内側から鍵をかけるようなことがあれば、それは宗教と呼ぶには値しな -
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ネタバレ「カルトの子」に衝撃を受け、何度も読んでいる身としては読まずにいられないテーマ。宗教と発達障害の関係については考えたこともなかったけど、人生がうまくいかずに宗教に助けを求めることを思えば、生きづらさを感じやすい人たちがはまってしまうのはなるほどと思う。当事者のインタビューは読みやすかったけど、専門家のところはちょっと読み飛ばすところも。信田さよ子さん、久しぶりに読んだけど、やっぱ分かりやすかった。斎藤環さんとの対談のとこも。こういう本を読むと、あの高校時代のエホバの子を思い出す。今どうしてるんだろうなぁ。エホバの個別訪問が辛い思いをさせて、コミュニティへの帰依を高めるためだという意見にはなるほ
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ネタバレ宗教者、精神科医、ジャーナリストなどこの問題に向き合っている様々な専門家との対談や取材と2世当事者の声を集めた章が秀逸。
むしろそこだけでも良かったのでは、と思うくらい。
最後の方の章は著者自身の著作や宗教関連の文学や映像作品の紹介と見解が多く、興味を惹かれるものもあったが映像に関してはほとんど見ることのできないものが多いこともありちょっとうるさく感じてしまった。蛇足感がある、と言ったら言い過ぎだろうか。
p253で著者が創価学会について、エホバの証人のように2世問題を唱えてる人や宗教被害を受けたと言っている人が実数からすると多いと思えない、ゆえにエホバが2世問題を生み出しやすい宗教と言える -
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宗教学、死生学を研究分野とする島薗進 氏の著。
バイオテクノロジーによって人間の遺伝子や生殖に介入する行為、ES細胞などの「胚」を用いた科学的技術の発達について、「はじまりの段階のいのちを壊す」というキリスト教的な側面と東洋(日本)の「つながりのなかの命」を対比させて論じた本。
(イラスト、題名などから)生命倫理を中高生向けに発信する本のように思っていましたが、中身はガッツリ大人向け。大学生以降を想定して書かれているのかなと感じました。
序盤~中盤まではバイオテクノロジーが進んだ未来にはどんなことがありうるだろう? という話で、中盤以降はキリスト教的な視野から見た中絶・人工妊娠中絶につい