阿部和重のレビュー一覧

  • アメリカの夜

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     「なにものかになりたい」そう思っていること自体、すでにすでに平凡に陥ってしまっていて、特別な“なにか”では無くなってしまう。
     撞着! 
     そう、うすうす気づいてはいるけれどもつい自分の中の経験やそれらから得たものの中に、輝く何かを見つけようとする。
     ガラクタをひとつひとつ拾い上げ、これはどうかとホコリをはらい、磨いてみる。そうやってオリジナルでスペシャルなやつを探し、見つからないまま半世紀も生きてきた、

    と作品の登場人物と重ねてみたが、狂人希望の男は結局『撮るひと』として、語りてとわかれ他次元の世界へと旅立つ。
    『個人的な体験』で大江が火見子という謎めいた女性に語らせる「多元的な宇宙”と相似している。

    特別への憧れはやぶれさり、結局、日常への凝視に回帰してゆくところは共感できる。

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    2026年09月06日
  • ULTIMATE EDITION

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    ネタバレ

    いずれの短編もエッジが効いています。

    殺し屋風味の男、ネグレクトを匂わせる家庭、拷問される双子、シリア内戦のある風景、ナワリヌイ氏、闇バイト(青年の部と中年の部)、北○鮮の指導者を思わせる話、ブラジル極右大統領、トルネードハンターなどなど、どことなく香ばしい物語が詰め込まれています。

    以前、有吉弘行さんがブレイク中の狩野英孝さんのことを
    「時代の歪みから湧き出た虫」と言っていましたが(ひどい言い様ですが笑)、阿部和重さんの小説のモチーフって
    「時代の歪から湧き出た闇」を切り口にしているように見えます。
    その闇を小説にすることで、ある意味では逆説的に光を当ててるように見えるんです。
    闇をそのまま表現してしまうと、陰湿な救いようのないものになってしまいますが、ロックのドライな雰囲気をまぶすことで人間の生きようとする魂を感じることができます。

    NEON ANGELS(闇バイト中年の部)なんかは映画にしたらとても面白そうです。

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    2026年08月10日
  • シンセミア(上)

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    ネタバレ

    最近、海外文学の大作(と思っている本)を読み終えたので、分厚い本が欲しくなってきていた。
    阿部和重の名前は前から知っていたものの、このシンセミアは「三部作」と銘打たれた一作目であり、一つの町を舞台とした重みのあるほんとのことなので、読んでみた

    男たちの下劣さを下敷きにしながら、ちょっとばかし横道にそれやすい女たちを横に並べて様々な出来事を入り組ませた作品、であった。

    どこがどうつながっていくのか、という期待感とともにぐいぐい読み進められた。
    最終盤の主格たちが退場していく場面は一種のカタルシスでもある。
    次作も見つけたら読んでみましょか。

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    2026年06月30日
  • グランド・フィナーレ

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    『グランド・フィナーレ』は、「視る」という行為を主題に据えながら、デジタルとアナログの対比を巧みに織り込んだ作品である。文章は驚くほど軽やかで読みやすい。しかし、その軽やかさの奥に不穏なものが潜んでいる。

    とりわけ印象的なのは、少女への偏愛というモチーフがあからさまには語られない点だ。むしろ書かれないことによって、その欲望の存在がかえって不気味な輪郭を帯びてくる。視線のあり方そのものが問われる作品だからこそ、この抑制された描写は効果的に機能している。

    一方で、第二部は最後まで可視化を拒むような構成を取る。読み終えてみると、最後まで視ることを欲した主人公は,本質的には何も変わっていないのではないかという疑念が残った。少なくとも私には、この物語を贖罪の物語として読むことはできなかった。

    曖昧さが作品の魅力でもあるがゆえに、周囲の登場人物たちが説明的で、あまりにも「まとも」に配置されていることが気になった。主人公の不透明さを際立たせるための装置として機能しているとも言えるが、その分だけ人物造形のバランスを欠いているようにも見える。

    総じて、優れた作家による意欲作であることは疑いない。だからこそ、その卓越した筆力に比して目につく疵が、かえって強く印象に残る作品だった。

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    2026年06月21日
  • 幼少の帝国―成熟を拒否する日本人―

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     インターネットやSNSなどの発達による社会変化があまりに急激なので、2010〜12年に書かれた連載をまとめたこの本は、数十年も前のことのように見えてしまうが、実際は15年しか経っていない。福島第一原子力発電所の事故後は、今後原発政策は息詰まるだろう、国民は原発を認めないだろう、というのが一般的な認識だったことを改めて思い出した。
     1951年マッカーサー「アメリカ人ドイツ人が45歳だとすると、日本人は12歳だ」と発言したとか。(だから原爆も落とせるわけだ) そこからスタートした連載で、日本人は成熟拒否で、小さいことが善で、マンガやアニメが世界に輸出されていて、というふうに、著者の思う日本人=こどもの例が挙げられていく。日本発の工業製品も軽量短小の分野で世界に冠たる実績を持っているという。失われた30年の渦中でも、まだ「ものづくり日本」の栄光の残滓が感じられる時代だった。一世を風靡した仮面ライダーとバンダイの協業も興味深く読んだ。
     ショート動画や短文主体のSNSによって、読書や長編映画が避けられるようになり、深く考えたり議論したりできない人が増えれば、この幼少の帝国は幼稚化の一途をたどるんだろう。
     

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    2026年05月18日
  • アメリカの夜

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    推定枚数250枚
    主人公の唯生=私という書き手を分けて書く不思議な書き方。映画を撮る撮らないで物語はほぼ進まないけどずっとギャグ的な展開。映画や洋書の有名作から引用も多い

    とにかく唯生は「特別な存在」になりたい。それゆえ気違いにもなりたいし、「秋分の日」生まれにこだわりを持ち、アメリカの夜=昼でも夜として撮影する方法に関心を持ち……

    最後の結論めいた箇所はとても難しくややこしく何を言いたいのかはわからなかった。でもわざとわからなく書いていて、何も理解しなくていいような気がした。

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    2026年04月02日
  • キャプテンサンダーボルト 新装版(新潮文庫nex)

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    まるで映画を観ているようなスピード感満載な話です。伊坂幸太郎作品とも違う阿部和重さんとの合作ならではの物語でした。

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    2026年01月17日
  • キャプテンサンダーボルト 上

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    阿部和重さん、伊坂幸太郎さんの合作。登場人物の話が平行に進められて合流するいかにも伊坂さんっぽいなと思いつつも合流までが早いなと思いました。。阿部さんの作品を読んだことないので阿部さんっぽさは解らないが、、、読み易い本でテンポよく読めました。まだ上巻のみしか読んでないので下巻が楽しみです。それにしても合作ってどうやって書くんだろう?

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    2025年11月27日
  • キャプテンサンダーボルト 下

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    ふむふむ。
    こーなったのね。









    五色の水は、浄化します。を体現する息もつかせぬエンタメ。という感じ。野球との絡みは良いと思った。

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    2025年11月11日
  • キャプテンサンダーボルト 上

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    どんな伏線回収があるのか、後半に期待




    御釜の水は浄化します。なんか、二十世紀少年を思い出した。主人公たちの過去の話と今の話がいい感じにミックスされて、あれこの謎は?となるお話。

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    2025年10月31日
  • キャプテンサンダーボルト 上

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    少年時代の仲間と思い出とトラウマをバックボーンに
    大人になって出会い奇想天外な事件に巻き込まれる
    といったよくある物語
    読めなくもないが、進んで読みたい本でもない
    登場人物がなにか物足りなく
    物語の展開が分かりやすすぎる

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    2025年10月27日
  • シンセミア(上)

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    自分の中で面白いんだけど不快な小説といえばこれ。上巻の描写はほんとに辛い部分もあり。とにかく登場人物が極端に多い群像劇なので読み上げ機能で聴いているとこんがらがることこの上なし。

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    2025年10月18日
  • シンセミア(下)

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    先に進めるまでまさに巻を惜く能わずの面白さがありながらも非常に不快で好きにはなれない小説。再読だけど1度目は登場人物の多さに圧倒されて2度目の今回でようやく人物たちの最後がわかったという次第。群像劇だがほんとに登場人物が多い。山形県の仮想の町を舞台に、最初は町の歴史から、続いて現代の登場人物たちが織りなす人間模様がこれでもかと描写される。それがまた醜いながらも一部には細かく正義や相手への純愛さも入り混じる。100%好きにはなれなくてもわずかに感情移入できる人物たちにせめて最後はいい思いをと期待しながら読むとほぼ全てが裏切られるという。舞台の神町三部作だが次作はファンタジー色が強いと。読むかは微妙だな。ともあれ面白かったは面白かった。

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    2025年10月18日
  • キャプテンサンダーボルト 新装版(新潮文庫nex)

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    若き高校時代の青春が20代でも続いている。フィクションだからあるあるのお話だが、ちょいと無理があるが楽しく完読。しかしこの無茶な想定だから面白いかも(笑) 男の子ならではのロマンもあり、夢もあり憧れもある仲間達のヤンチャな小説でした。

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    2025年08月23日
  • キャプテンサンダーボルト 新装版(新潮文庫nex)

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    ボーナストラックを読みたいが為だけに購入し、本編を再読し、ボーナストラックを楽しむ。

    そうそう、「ガイノイド脂肪」で始まるだったよね!と思いながら読み進める。

    ハードカバーを読んだ時もガイノイド脂肪には気を付けないといけないなぁと思ったが、あれから何年経ってもやはりガイノイド脂肪から目が離せない。

    お話もそんな事あるのかよ!と思いながらも流石伊坂幸太郎と阿部和重だぜ、と思わせる。つまりは退屈しない。

    ボーナストラック目当てで再読したが、楽しめた。

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    2025年04月10日
  • ミステリアスセッティング

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    現代版マッチ売りの少女、だそうだ。

    爆弾からの展開が唐突で、シオリの不幸が半端ないが、退屈はしない。

    とりあえず、星は3つつけておく。

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    2025年04月07日
  • キャプテンサンダーボルト 新装版(新潮文庫nex)

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    一見ただの雑談のような会話が後々効いてくるのが心地よかった。
    特に、私は、主人公達とほぼ同じタイミングで「はっ」とすることがいくつかあって世界観を楽しむことができた。

    敵はまぁ悪い奴らなんだけど、それ以外はなかなか愛すべき点のあるキャラクターだった。

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    2025年03月31日
  • グランド・フィナーレ

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    表題作で芥川賞受賞作であるグランド・フィナーレはなんというか、読みやすい作品でした。小児性愛者ということでもっと気持ち悪くなるような描写も出てくるのかなと思ったけど、なんというか普通にスルーできるような軽い文体というか。終盤への繋がり方もやや強引か?と思う印象もあったり。
    それよりかは他の三作品のほうがちょっとぶっとんでるっていうか、面白さという意味では勝ってました。ちょっと気になるので他の作品も機会があれば読んでみたいなという気持ちになりました。

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    2025年03月20日
  • キャプテンサンダーボルト 上

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    コロナ前の作品なのに、感染症に対する政府の対応やワクチンのことがコロナの事を思い出させました。
    疑問が疑問をよんで、ジリジリ、モヤモヤしましたが、下巻に期待です!

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    2025年03月07日
  • キャプテンサンダーボルト 新装版(新潮文庫nex)

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    伊坂幸太郎さんが大好きで、共同執筆という形にも惹かれて読んでみました。
    いつもの伊坂さんの作品の特徴もありつつも、テンポや状況描写には違いを感じました。
    伏線回収とか痛快感が少し物足りなくて、それでいて長編だったので、読むのにやや時間がかかってしまいました。
    そういえばポンセの名前は結局何なのか!笑

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    2025年01月14日