阿部和重のレビュー一覧
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終わり、それとも始まり……神町を巡る物語「グランドフィナーレ」という名の終わりの始まり。毎日出版文化賞、伊藤整賞W受賞作「シンセミア」に続く、二人の少女と一人の男を巡る新たなる神町の物語。
自分の過去をまるで他人事のように小さく語る主人公。刑事事件になっていないからなのか、それとも思考を停止しているだけなのか。クライマックスもこじんまりしていてサイコパス感が出ていて良かった。阿部小説は文体にかなり特徴があるらしい。とある芥川賞作家は、この作品についてこう書いていた。「多くの読者は疲れるだろう」と。だけどグランドフィナーレを読み終えた直後の感想は「普通に読めるし面白い」だった。 -
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ネタバレ3.5
戦時からの陰謀も含めた冒険小説。口が悪くお調子者の行動派で憎めない相葉時之とその旧友で落ち着いた物腰の井ノ原悠の逃亡劇。ライター桃沢瞳、コシキヌマの水、謎の疫病村上病、新規致死ウィルス、ワクチン、謎の組織、鳴神戦隊サンダーボルト。様々な要素・謎が絡みながら話が進みワクワクさせられる。村上病なるウィルスの話などコロナのことと重なる。コピー機営業マンの井ノ原が、各社のコピー機に自身のPCにスキャンデータを送る設定をして情報屋をしている設定も面白い。
井ノ原の上司とのやりとりなど伊坂っぽい面白描写も。
井ノ原の上司とのやりとり。営業部ではなく「ぐっとこらえる部」にしたら?その提案もぐっとこ -
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伊坂幸太郎と阿部和重の共作小説。エンタメと純文学を代表する作家のコラボということもあって、期待に胸を膨らませて読んだ。単行本が発売された当初から話題になっていて読みたかったが、結局文春文庫になっても読まずに新潮文庫の新装版になってから読むことになった。阿部和重の陰謀的な要素と伊坂幸太郎のストーリーテリングが合わさって面白いエンタメに仕上がっている。伊坂作品をベースにして比較すると伏線回収の量はそこまでないが、陰謀や謎の組織の計画など気になる謎に引っ張られて一気に読んだ。また本編には「村上病」という感染症が登場するのだが、新型コロナのこともあってタイムリーに感じた。
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購入済み
この時期だから導かれたのか(笑
読み進めていくうちに、登場する病気とコロナが重なっていました。
2人の作者は今の状況を予想たにしてなかったでしょうに。
近くにいてもおかしくない主人公ふたりが、あり得ないような人(組織)を敵に回して…
解説を読むともう一回読むたくなりますよ! -
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小説ではなく、まるでアクション映画を観たよう。
それくらいにぶっ飛んだ設定。
未知のウイルスにB29墜落に日本政府に戦隊ヒーロー。
そこに昔、小学生の時にバッテリーを組んでいた二人組が加わり、様々な要素が絡み合う。
この二人のコンビが本当に最高で、重たい状況の中、物語にユーモアを添える。
純粋に面白い。楽しめる。先が気になってページをめくる手は止まらない。
阿部和重さんの作品は初めてなのだが、極上のエンタメ小説でした。
特に元バッテリーコンビの二人組はまさに、合作で手を組んだ阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの息の良さを感じさせる。
書き下ろし短編もボーナストラックも良かった。 -
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胸が悪くなるような、暴虐なシーンの連続。
戦後の混乱期、町の顔役となった田宮家。
一家への血の粛清がはじまっていく。
町の均衡を破ったのは、しかし田宮家だけではなかった。
戦後の混乱で凄惨なリンチの末命を絶った女性の孫である隈本光博が町にやってきたことによって、大崩壊が齎される。
「阿部和重」を騙って彩香に近づこうとする、盗撮グループ唯一の生き残り、金森が描かれて小説は終わる。
非常に不穏な感じが残る。
上巻で動き始めた数々の事件、事故、犯罪が、次々と関係者の死や、大事故などによって「回収」されていく。
内容のおぞましさを超えて、小説の構想力に圧倒されてしまう。
結末を知らずにいられないよ -
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ネタバレ芥川賞を受賞した「グランドフィナーレ」はその評価に悩んだものだけど、一方でシンセミアは紛れもなく力作だと思った。
神町の共同体としての描写はとても濃密。創作だとはとても信じられないような気持ちになった。
この本を読んでいる間だけは、自分もこの町の中にいて、人々の有り様を近い目線で観察しているような没入感があった。
登場人物は悪い意味で癖の強い人々ばかり。
インモラルな性癖や暴力性が包み隠さず描かれるので、苦手な人は苦手かも。
人間の剥き出しで汗臭い欲望を書くのに長けた作家だとは認めつつ、それに少し食傷気味になってしまった。果たして下巻はどうなっていくのか。
あと、登場人物が多すぎて、間