阿部和重のレビュー一覧
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「ぼく」という幻想。
この本は『インディヴィジュアル・ブロジェクション』と
『ニッポニアニッポン』という
阿部の代表作を1冊にまとめたものである。
感じたのは人称の問題だ。
それは「ぼく」という幻想のありかを
突き詰めていくことになる。
1作目のは主人公は自分をスパイだと思う映写技師だ。
「ぼく」という一人称で書かれることで、
本当にスパイなのか、
身の回りに危機が迫っているのかどうかが
曖昧なままで物語は進んでいく。
「ぼく」の実は平凡な日常が
Гスパイ行為」というフィルターを通すと、
非日常へ様変わりしていく。
本当の「ぼく」は何なのか?
存在自体が揺らいでいく。
これは今を生 -
Posted by ブクログ
84点。特別な存在でありたいと願う主人公は、ひたすらに体を鍛え、思索にふける。主人公と語り手は同一人物なんだけど分裂し、ひたすらに自己言及しまくる。タイトルはトリュフォーの映画そのままだが、主人公が至るところはこの映画、もっといえばヨーロッパ映画的な主題に通低するもの。現実の虚構化、日常の演劇化、みたいな。
映画や小説を「泣けたわ」「笑えたわ」とシンプルな感想を吐くだけの一娯楽として、あるいはコミュニケーションのネタとして消費する昨今の潮流に逆らい、批判的精神を常にもちメッセージを見い出すべき、みたいな一昔前の教養主義的なお寒い考えで映画鑑賞や読書にひねもす明け暮れながらも、目的があるわけで -
Posted by ブクログ
先に進めるまでまさに巻を惜く能わずの面白さがありながらも非常に不快で好きにはなれない小説。再読だけど1度目は登場人物の多さに圧倒されて2度目の今回でようやく人物たちの最後がわかったという次第。群像劇だがほんとに登場人物が多い。山形県の仮想の町を舞台に、最初は町の歴史から、続いて現代の登場人物たちが織りなす人間模様がこれでもかと描写される。それがまた醜いながらも一部には細かく正義や相手への純愛さも入り混じる。100%好きにはなれなくてもわずかに感情移入できる人物たちにせめて最後はいい思いをと期待しながら読むとほぼ全てが裏切られるという。舞台の神町三部作だが次作はファンタジー色が強いと。読むかは微