阿部和重のレビュー一覧

  • シンセミア(上)

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    こういう多くの人が出てくる群像話は好きです。
    はじめのうちは人の把握に疲れますが、読み進めると各登場人物のキャラが際立ってきます。
    偏った性癖を持つキャラが多くて楽しめました。

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    2013年08月21日
  • シンセミア(下)

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    山形県に実在する神町という町を舞台に、一筋縄ではいかない曲者達が巻き起こす様々な事件を描いた群像劇。
    あえて感情移入を排するためか、登場人物がみな人格的に壊れていて、上巻は読み進めるのに少し苦痛を感じる程だったが、ストーリーが大きく動き出す下巻の半ばあたりから俄然面白くなり、ラストもこれしかない感じの結末で、道徳心のかけらもない人物ばかりの小説でありながら、読後感は意外と悪くなかった。
    いずれにしても、戦後の日本社会の一面を象徴する、「神町」という町そのものがこの群像劇の真の主人公のような印象を受けたが、そういう意味では同じく「神町」を舞台とする「ピストルズ」という作品も是非読んでみたい。

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    2013年07月29日
  • グランド・フィナーレ

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    2005年芥川賞受賞作。作品全体の暗さ、不気味さが体に残る。前半は主人公の気持ち悪さが際立つが、意外と自己反省的で、自分の悪い部分を分析する一面も見られる。掴みどころがない。掴みどころのなさから多少の人間味が出ていて(とても魅力とは呼べないけど)、憎みきれない。

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    2014年10月18日
  • シンセミア(下)

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    これはなかなかの読み応え。
    がつんと言うのとも違うけど、物語力があって、
    堪能させていただきました。

    阿部和重、多分初めてと思いますが、少なくともこのシリーズは
    独特の世界構築がされてて癖になりますね。

    ピストルズも(ちょっと満腹気味だから間をあけてから)読みたいと思います。

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    2013年06月19日
  • アメリカの夜

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    特別でありたいと願えば願うほど、「『きちがいになりたい』ひと」「シネフィル」という『型』にはまってしまう若者がジレンマともがく姿を、小説という枠を何処までも自由に使ってあらわした作品。唐突に思想談義があったり、あらすじはあってないようなものだし、主人公は著者と話し始めるし、シリアスシーンも左右白黒に塗り分けた主人公のせいで台無しだし笑、すべてがめちゃくちゃ。しかし、その滅茶苦茶が著者の言いたい話の流れに従って並べられているから、読むうちにこころが引っ張られていってしまう。青さ、だけでは片づけられない一冊。

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    2016年01月17日
  • 映画覚書vol.1

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    『青山真治と阿部和重と中原昌也のシネコン! 』(リトルモア)にはかなり笑わせてもらったが、本書はそれよりやや真面目(!)に映画について論じている。読んでいて新鮮だったのは、ハリウッドの洗練されたスタジオ製作システムが崩壊し、映画の表現方法(あるいは技法)がリアリズムに近接するようになったとい「時代の流れ」について言及している部分だ。70年代に入ると、ルーカス、スピルバーグ、デ・パルマ、スコセッシといったニュー・ウェーヴが登場し、アクションを機軸とした展開の速い作品がもてはやされるようになるわけだが、たしかに僕らも「生々しい映像」が映画の醍醐味と考えるムキがあるように思う。そういう意味では、19

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    2012年11月18日
  • グランド・フィナーレ

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    私は佳作だと思います。
    設定から奇を衒う内容を思わせます。しかし本作品では普通に、大人から見た子供、大人になったが故遠く感じてしまう子供、その純粋なものに触れたい気持ちを抑えられない不純な大人が描かれているのです。
    設定のマニアックさのバイアスがあるので酷評されている感がありますが、普通の純文学と見ていいのではないでしょうか?

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    2012年11月16日
  • IP/NN 阿部和重傑作集

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    個人的にIPが星3つ、NNが星4つ半ぐらいかな。やー面白かったです、ニッポニアニッポン。主人公のぶっとび具合がもう、一周回ってアホ可愛く思えてしまいます。勝手にトキを守ろうと決めたくせに、トキの交尾に逆ギレしてるあたりが笑える。

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    2012年09月03日
  • グランド・フィナーレ

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    シンセミアほどの衝撃はないが、ありそうにない話でいながら、リアリティのある、筆者の真骨頂が発揮された作品であると思う。救われない内容でありながら、何か心温まるものが感じられて、とても味のある作品ではないかと思う。

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    2012年07月10日
  • 幼少の帝国―成熟を拒否する日本人―

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    著者のフィクション作品などまるで触れたことなくいきなり本作を読んだ形。成熟拒否をテーマとし、多ジャンルの先端の人へのインタビュー&論評。普段触れることが少ない領域ばかりで面白かった。簡潔でわかり易さを重視する昨今の本と比較し冗長に感じる向きもあろうが、個人的には久々に贅沢に文章を読むことができた方を評価したい。

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    2012年07月08日
  • 幼少の帝国―成熟を拒否する日本人―

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    これまで阿部和重さんの著作は全て購入しており、評論という今までにない切り口や、「幼少の帝国」というタイトルからしてデリダ(だっけ?)の「表徴の帝国」のオマージュといったところに、期待十分というで購入。
    が、読後の感想としては、なんとまぁ切れ味の悪いというか普通の評論でしたー。

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    2012年06月16日
  • アメリカの夜

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    初めて阿部和重作品を読んだ。ある男性(唯生)についての話。語り口調。一文が長くて改行が少なく、前の文章に引きづられて話がよく脱線するため、慣れるまでは少し読みにくい。話が進むにつれて、唯生の言動、挙動がどんどん面白くなっていく。後半は何度も笑った。

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    2014年10月19日
  • IP/NN 阿部和重傑作集

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    「ぼく」という幻想。

    この本は『インディヴィジュアル・ブロジェクション』と
    『ニッポニアニッポン』という
    阿部の代表作を1冊にまとめたものである。

    感じたのは人称の問題だ。

    それは「ぼく」という幻想のありかを
    突き詰めていくことになる。

    1作目のは主人公は自分をスパイだと思う映写技師だ。
    「ぼく」という一人称で書かれることで、
    本当にスパイなのか、
    身の回りに危機が迫っているのかどうかが
    曖昧なままで物語は進んでいく。

    「ぼく」の実は平凡な日常が
    Гスパイ行為」というフィルターを通すと、
    非日常へ様変わりしていく。

    本当の「ぼく」は何なのか?
    存在自体が揺らいでいく。
    これは今を生

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    2012年04月28日
  • アメリカの夜

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    84点。特別な存在でありたいと願う主人公は、ひたすらに体を鍛え、思索にふける。主人公と語り手は同一人物なんだけど分裂し、ひたすらに自己言及しまくる。タイトルはトリュフォーの映画そのままだが、主人公が至るところはこの映画、もっといえばヨーロッパ映画的な主題に通低するもの。現実の虚構化、日常の演劇化、みたいな。

    映画や小説を「泣けたわ」「笑えたわ」とシンプルな感想を吐くだけの一娯楽として、あるいはコミュニケーションのネタとして消費する昨今の潮流に逆らい、批判的精神を常にもちメッセージを見い出すべき、みたいな一昔前の教養主義的なお寒い考えで映画鑑賞や読書にひねもす明け暮れながらも、目的があるわけで

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    2012年03月04日
  • ミステリアスセッティング

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    「グランド~」はあれでしたが、今作は非常に読み易かったです。
    音痴でありながらも歌い人を目指すシオリ。彼女がとことん不幸に苛まれる。
    荒唐無稽でありながらも現実味のあるストーリーです。最後に何を見出したのか。それは読者次第ではないかと

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    2010年09月17日
  • グランド・フィナーレ

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    幼女ポルノのビジネスに手を染めた冴えない中年の話です。
    離婚され、最愛の娘と引き剥がされ、でも未練たっぷりで。

    さて困りましたね。
    面白いかと聞かれれば「そこそこ」です。さらに文学性も高いと思います。どこがと言われても困るのですが。
    しかし、何が書きたかったのか良く判らない。少なくとも表面を流れている物語では無いような気がするのです。どこかに何かのバックグラウンドが存在しているように思えます。しかしぞれが何か判りません。
    どう評価すべきなのか悩んでしまう、そんな作品でした。

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    2016年07月31日
  • 映画覚書vol.1

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    ひたすらマニアック。映画ってこんなに深く見るもんだんだなーとお勉強になった本。ただ、この本が冒頭で褒めているブライアン・デ・パルマの「ファムファタール」。観てみたいと思ったものの、他の本では酷評されてたり、どうも手が出せてない。

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    2009年11月23日
  • アメリカの夜

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    淡々とした語り口で厨二とも言えるカオスな精神世界が表現されてて、でも実際何が起こってるのかというと特にこれといったことは起こってない。それでも読んでる人間の脳内をぐるぐるさせる位の色々な何かが確実に存在してるのです。ってな感じに文章が巡り巡って結局一文の到着点がとこか分からない様な文字群が嫌いな人は読みにくいであろう本。

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    2009年10月04日
  • グランド・フィナーレ

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    表題作もスキだけど、
    『馬小屋の乙女』がよかった。

    ええ、あの人が乙女?なのかなぁっていう。

    『20世紀』も『新宿ヨドバシカメラ』も企画モノらしいけど、良かった。

    書きたいものしか書かないって言うのも作家だなぁって思うけど、こういう企業とのコラボレーションなんかでも文体の特徴なんかを損なわないで見事に書けていると実力を感じる

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    2009年10月07日
  • アメリカの夜

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    最後は結局そうなるのか、とただただ面白く読めました。

    最初文に入りこむまでは抵抗があったけど、読んでしまえばあっという間でした。全体的に若さを前面に押したような文章だった。かな

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    2009年10月07日