阿部和重のレビュー一覧
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ネタバレ今でいうところの中二病的思考なシネフィル青年の話。
「特別な存在」でありたいと願う唯夫は、昼と夜の長さが同一になる「秋分の日」生まれということに特別さを感じ、対する「春分の日」的なるものと闘う決意をする。何の冗談か!と!もうニヤニヤしてしょうがないw 唯夫を記述する筆者もまた唯夫自身の別人格で、それはどうやら小説自身の筆者=阿部和重らしく、虚構の中の虚構の虚構と構造が凝ってる。いきなり訳の分からないブルース・リー論から始まって予想のつかない展開も読みづらい文章も全て阿部和重の狙い通りか。
時代は90年代。そして非常に90年代的な小説。サブカルな若者の日常、バブル崩壊後の倦怠感、ネット以前の世界 -
Posted by ブクログ
阿部和重作品への勝手なイメージで、物語中で細部へのこだわりを持った描写がなされる、というものがあります
ホントに自分がなんとなく感じただけのふわっとした印象ですけど
で、過去作『インディヴィジュアル・プロジェクション』だと、フリオ・イグレシアスの歌詞への執拗な考察シーンがでてくるんですよ
そんな流れで今作を読んだ時に気になっちゃうのが「グラフィティ/チャーチズ」です
実在の曲なので、検索からの和訳をかけてみたらこれがもう作品にぴったりで
上で例に出した『インディヴィジュアル・プロジェクション』でのフリオの歌詞のように執拗な考察をするわけでもなく、ただ単にgoogleパワーで翻訳をかけたも -
Posted by ブクログ
自称ドナルド・トランプの隠し子
南北朝鮮に所属する国家職員の秘密の会合
……などが物語序盤から描写されるのですが、基本は主人公横口健二の大冒険といった内容です
知り合いのヤクザから仕事を押し付けられ、北朝鮮からの密入国者ハナコと一緒に謎の映画雑誌を探し出すはめになった横口健二、そんなお話
スラスラと読めるし、内容も面白い
でも改めてストーリーを思い返してみるとお話の進展はほぼないような気もします
でも読んでいると面白いんですよ、すごい、なにこれ
上巻の最後の最後になって急に物語がアクセル全開になって、なんだかんだで下巻が読みたくてしょうがないです