感情タグBEST3
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玉ねぎを剥いていくような読書体験であった。
剥ききった果てには当然何もない。しかしその何もないということが、我々を落胆させることはないでしょう。
その虚無に何を感じられるだろうか。
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テーマは、ありがちな若者の自分探しの物語だか、主人公は作者の分裂であり、分裂した自己との対話で本書は成り立っている。
誰よりも「特別な自分」であることを証明するために主人公。結局は「特別な存在」にはとうていなれないという虚しさを募らすだけと知りながらせっせと「特別な自分」の証明を試み続ける主人公。
日常生活の中での仮構を突き崩す、暑苦しくぶっきらぼうな暴力性を認識しながらも、なお書かねば落ち着かないという、書き手にとっての悲痛さを主人公に投影し、主人公と作者が対話をする。伏線も多く難解だが、面白い。
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今でいうところの中二病的思考なシネフィル青年の話。
「特別な存在」でありたいと願う唯夫は、昼と夜の長さが同一になる「秋分の日」生まれということに特別さを感じ、対する「春分の日」的なるものと闘う決意をする。何の冗談か!と!もうニヤニヤしてしょうがないw 唯夫を記述する筆者もまた唯夫自身の別人格で、それはどうやら小説自身の筆者=阿部和重らしく、虚構の中の虚構の虚構と構造が凝ってる。いきなり訳の分からないブルース・リー論から始まって予想のつかない展開も読みづらい文章も全て阿部和重の狙い通りか。
時代は90年代。そして非常に90年代的な小説。サブカルな若者の日常、バブル崩壊後の倦怠感、ネット以前の世界。まさに「小春日和の時代」だったバブル時代から「秋分の日」なる時代へと突入した日本。何と闘えばいいのかわからない90年代の若者の代表が唯夫だ。コーネリアスも「太陽は僕の敵」と歌う。当時、同年代だった僕の周りに唯夫は確かに存在したのだ。
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これは良いぞ。青臭いぞ。
こういうくさいやつのほうが、僕は好きで、たしかにぱっと見のタイトルは「アメリカの夜」のほうがよいのだけれど、
「生ける屍たちの夜」のほうが僕は好きです。
いえーい。
物語性というか、小説の箱をしっかりと意識していて、良いと思いました。
読みにくいですが。
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秋分の日生まれの中山唯生というもう一人の「自分」を通じて、特別なものを追いかける内面を描き出している。甘い幻想ばっかり追いかけてると死にたくなるよ、と解釈した。自分には何ができるのか、夜の暗闇で考えてみる。
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第37回群像新人文学賞受賞作,第111回芥川賞候補作および第8回三島由紀夫賞候補作。デビュー作としてはかなり注目度の高い作品。
ディック『ヴァリス』やセルバンテス『ドン・キホーテ』など数多くの文学作品からの借り物が,モチーフとして登場。ある種のメルヘンくさい私小説といえる。
ポストモダンの残骸から,映画やカメラの特性を拾い上げて再生しようという意欲が湧いてくる。
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特別でありたいと願えば願うほど、「『きちがいになりたい』ひと」「シネフィル」という『型』にはまってしまう若者がジレンマともがく姿を、小説という枠を何処までも自由に使ってあらわした作品。唐突に思想談義があったり、あらすじはあってないようなものだし、主人公は著者と話し始めるし、シリアスシーンも左右白黒に塗り分けた主人公のせいで台無しだし笑、すべてがめちゃくちゃ。しかし、その滅茶苦茶が著者の言いたい話の流れに従って並べられているから、読むうちにこころが引っ張られていってしまう。青さ、だけでは片づけられない一冊。
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初めて阿部和重作品を読んだ。ある男性(唯生)についての話。語り口調。一文が長くて改行が少なく、前の文章に引きづられて話がよく脱線するため、慣れるまでは少し読みにくい。話が進むにつれて、唯生の言動、挙動がどんどん面白くなっていく。後半は何度も笑った。
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84点。特別な存在でありたいと願う主人公は、ひたすらに体を鍛え、思索にふける。主人公と語り手は同一人物なんだけど分裂し、ひたすらに自己言及しまくる。タイトルはトリュフォーの映画そのままだが、主人公が至るところはこの映画、もっといえばヨーロッパ映画的な主題に通低するもの。現実の虚構化、日常の演劇化、みたいな。
映画や小説を「泣けたわ」「笑えたわ」とシンプルな感想を吐くだけの一娯楽として、あるいはコミュニケーションのネタとして消費する昨今の潮流に逆らい、批判的精神を常にもちメッセージを見い出すべき、みたいな一昔前の教養主義的なお寒い考えで映画鑑賞や読書にひねもす明け暮れながらも、目的があるわけでもないので、当然仕事なぞするわけもなく、のんべんだらりとした生活を送っているか、そうありたいと心から思っているタイプには強く共感できる内容。
なんと気恥ずかしくもピュアな青春小説だと思うに違いない。
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淡々とした語り口で厨二とも言えるカオスな精神世界が表現されてて、でも実際何が起こってるのかというと特にこれといったことは起こってない。それでも読んでる人間の脳内をぐるぐるさせる位の色々な何かが確実に存在してるのです。ってな感じに文章が巡り巡って結局一文の到着点がとこか分からない様な文字群が嫌いな人は読みにくいであろう本。
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最後は結局そうなるのか、とただただ面白く読めました。
最初文に入りこむまでは抵抗があったけど、読んでしまえばあっという間でした。全体的に若さを前面に押したような文章だった。かな
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新しく作家の本を読み始める時、ぜったいにデビュー作から見るようにしてます。
大概、その作家のスタイル、書きたいものが見えるから。。
それで、そのあと気に入れば読み漁るわけだけど、ま、失敗も多いよね。。
俺の恩師が「文学とは本の時代を読むこと」って言ってたけど
まさしくそうだね。。
この作品はその意味ですごく良かったです。。
これから阿部和重がどうなっていくのかが楽しみ楽しみ★
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第37回群像新人賞受賞作品。
阿部和重は好きな作家の一人だが、『アメリカの夜』は彼のデビュー作。
何というか彼の原点がすべて詰まった作品のように思える。
いわゆる「おもしろい小説」を望む読者は読むべきではない。それを望む読者が読んだならば、まぁ5分もしないうちに読むのが苦痛になるだろう。
主人公の内面をひたすら描き続ける。
かぎ括弧付きの会話は一切登場しない。
章分けも一切無い。
『現代小説』に欠かすことが出来ない『比喩』も一切排除されている。
でもおもしろい。新しい。
そんな作家が阿部和重だ。
何度も言うけど、ストーリーで小説を読む人が読んでも時間の無駄だ
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デビュー作ということでこの作品を評価する人に対して予防線を張りまくったために記述がまどろっこしい。後の作品に比べるとやはり内容がまだ弱い感じがした。
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阿部和重はこれで三作目だが、いわゆるテクスト論的な眼を嘲笑うかのような露骨さと自己言及が相変らずで、ここに描かれるどうしようもない自意識は滑稽であるけれどもああわかるなあとも思う。
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「特別」でありたいと願い、「春分のひと」であることに「特別」を見出して、Sホールでアルバイトをする美大生の中山唯生。「春分」と「ドン・キホーテ」と「ブルースリー」のモチーフがちょくちょく出てくる。
前半が難しく、というか論文調だけど語彙が噛み合わないのかリズムが悪いのか、ぎこちなくなんとも読みにくかった。後半の特訓の話、映画撮影のドタバタになるとするする読めるようになり、唯生の有り余った自意識過剰さが「哀れ」で面白かった。「春分の日」たる「小春日和」の理論はいまいち謎。
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いきなり「ブルース・リーが」で始まる冒頭は唐突であった。唯生の造詣は面白い。脇役たちもいい味出している。唐突な印象は各所にみられたが、こういう文学もアリとなんか感じるものがあった。タイトルもいい。
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主人公の青年、阿部和重が、自分は特別であるということを証明するために、様々な論理的アプローチをする長編小説。卒業した映画学校で出来た知りあいとのやりとりと、自分の内部での葛藤との2つの軸が走っていく。中山唯生という別の人格を作ったり、自分の誕生日である秋分の日に関する仮説を立てたり、ドンキホーテよろしく物語の主人公になりきったり、ブルースリーのように体を鍛えたりする。彼は世間から徐々にずれていき、周囲とトラブルを起こして関係を断ち切る。最後には、本来の自分はバイトを続け、唯生がフランスへ行き、映画の手法、アメリカの夜を用いて、昼の風景を夜に変えた映像を取りへ行ってしまう。
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一言で言えば存分に「痛い」小説だ。
そして、この痛さが分かってしまう自分も、
十二分に痛々しい青春を送っているまっただ中なのだと思い知らされる。
けれど、そこからしか見えないものもあるはずだ。
それは、そう。
私が自分で捜して行かなくてはいけないことなんだと思う。
青春は、自分がある限り、どうしようもなく痛いものなのですね。
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◇訂正
読み進めていくうちに以外にテンポになれてきました。
以外に面白かったでした。
(以前の)
・自己愛性人格障害(統合失調症?)チックな主人公の一人称形式の小説。
・蓮實重彦風の文体だけど、リズムあまり良くない気が。。
・構成は結構面白いかもしれない。
・一般的に病的と見られている人の心情を書くのは上手いと思う。
・心情的にあまり寄り付かせず、男の人向けな気がする。