阿部和重のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『キャプテンサンダーボルト』 阿部和重 × 伊坂幸太郎少年野球でバッテリーを組んでいた相葉と井ノ原が、大人になって再会し、蔵王の御釜を舞台にテロリストと戦う冒険譚。相葉は熱血タイプ、井ノ原は巻き込まれ体質で、関わらないようにしても結局巻き込まれる。その心理描写が面白い。村上病という架空の感染症、生物兵器、東京大空襲のB29墜落など、歴史とフィクションが絶妙に絡み合う。「村上病はあるけどない」という言葉が物語の鍵。登場人物や犬も個性的で、特に犬は自由気ままで愛らしく、『ハウルの動く城』の犬を思い出した。ストーリーは一見大味でも、伏線回収やテンポの良さに伊坂さんらしさが光る。阿部さんの作品も読ん
-
Posted by ブクログ
訳者後付けでも解説されているように、一葉の作品には句点、段落があまり見られない。もちろん当時はカギ括弧のような様式も主流ではなかったのだろうが、21世紀の我々が馴染んだ文体ではない。
しかし、訳者の努力の賜物なのだろう。非常に読みやすかった。「たけくらべ」はロマンスともジューブナイルとも分類できない複雑さがあり、充分に面白い。
「たけくらべ」以外の短編たちもよい。「うもれ木」なんかは私の好みだった。恋愛:人間的成長=8:2くらいの混ぜ具合。当時の主流だっただけなのか、一葉が個人的に恋愛を関心事としていたのかはわからないのだが、何はともあれ良い作品だと思った。 -
Posted by ブクログ
実際に存在する山形は東根市の神町を舞台に、信じられないくらいの登場人物の多さに(解説によると60名だそう)入り組んだ相関関係を、戦後の混乱期から現代まで、町史的に描いているフィクション。構成も年代記であっても、ただ年代を追っているのではなくて、手法が凝らしてあるのもよい。
ところどころ臭気ふんぷんの場面が参るし、そんなのありか?という漫画的なドタバタ展開があるが、それが妙味になり、効いてきておもしろくてやがて深く考えさせられる。なるほど現代はそういう戦後のどさくさの上に成り立っているのだと。この町の創造の出来事は架空であって架空でない、日本中がそうなんだ、今でも、と言うような。
上下巻合わ -
購入済み
身につまされるかも
パン屋の歴史的な裏付けとか、よく調べてるなって
感心する一方、あるはあるは、エロビデオに
出てきそうなものや、アニメの驚きの展開に使われそうな
ものとか、次々と、あああ、自分もこんなものを
日常目にしているから、世界のことを
しっかり心配して、自分の行く道を考えたり
してないんじゃないか、って、
安穏として、なるようになれでだらしなく
生きている自分が恥ずかしい。
これほど、悪い人ばかりの町って
とんでもないけど、うかうかしてると
なりかねないよね。
最後のところもギクッてした。
まあ、よくもこんなって、
何代も続いてこうなってきたってのも
恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
本作は神町トリロジー三部作の二部作目に当たる。前作の『シンセミア』とは少々違った書かれた方がされており、一貫して回想形式のような語りになっているが、その理由は記憶を操作する術を代々受け継ぐ菖蒲家が舞台であるからであろう。
その菖蒲家が記憶を操作する以上、何を語られても信用していいものなのか疑惑が残るはずだが、それが最小限に抑えられてるように感じるのは、語り手が重層的に変わるからである。主に語り手は菖蒲家の二女の菖蒲あおばと書店の経営者の石川の2人であるが、最後は、また別の怪しい組織が調べた菖蒲家についての報告書のような形式の文章で終わる。
第三者からの視点が複数あるために、記憶を操