【感想・ネタバレ】シンセミア(下)のレビュー

あらすじ

未曾有の洪水に襲われ水没した神町。二つの死体と共に、終戦直後にこの町で起きた忌まわしい惨劇が浮かび上がる。不穏な噂が町を覆い尽くし、やがてそれは町を二分する勢力の全面抗争へ。神の町の狂態の行き着く果ては。小説のあらゆる可能性を追求し、毎日出版文化賞、伊藤整文学賞をダブル受賞した傑作。

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Posted by ブクログ

実際に存在する山形は東根市の神町を舞台に、信じられないくらいの登場人物の多さに(解説によると60名だそう)入り組んだ相関関係を、戦後の混乱期から現代まで、町史的に描いているフィクション。構成も年代記であっても、ただ年代を追っているのではなくて、手法が凝らしてあるのもよい。

ところどころ臭気ふんぷんの場面が参るし、そんなのありか?という漫画的なドタバタ展開があるが、それが妙味になり、効いてきておもしろくてやがて深く考えさせられる。なるほど現代はそういう戦後のどさくさの上に成り立っているのだと。この町の創造の出来事は架空であって架空でない、日本中がそうなんだ、今でも、と言うような。

上下巻合わせて1000ページ、ぴっしりと活字が並んでいるけど、文章は平易。長編の世界文学を(例えば『カラマーゾフの兄弟』など)スイスイ読んでいた高校時代を思い出した既視感。こういう作品が世界に通じる文学じゃないかと思う。解説によるとフランス語には訳されて好評だったとか。ノーベル文学賞が目的ではなくても、英語訳は必須アイテムなんだね。

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2021年12月11日

Posted by ブクログ

胸が悪くなるような、暴虐なシーンの連続。

戦後の混乱期、町の顔役となった田宮家。
一家への血の粛清がはじまっていく。
町の均衡を破ったのは、しかし田宮家だけではなかった。
戦後の混乱で凄惨なリンチの末命を絶った女性の孫である隈本光博が町にやってきたことによって、大崩壊が齎される。
「阿部和重」を騙って彩香に近づこうとする、盗撮グループ唯一の生き残り、金森が描かれて小説は終わる。
非常に不穏な感じが残る。

上巻で動き始めた数々の事件、事故、犯罪が、次々と関係者の死や、大事故などによって「回収」されていく。
内容のおぞましさを超えて、小説の構想力に圧倒されてしまう。
結末を知らずにいられないような気分になる。

たしかに、これはすごい小説だ。

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2020年08月29日

Posted by ブクログ

山形県に実在する神町という町を舞台に、一筋縄ではいかない曲者達が巻き起こす様々な事件を描いた群像劇。
あえて感情移入を排するためか、登場人物がみな人格的に壊れていて、上巻は読み進めるのに少し苦痛を感じる程だったが、ストーリーが大きく動き出す下巻の半ばあたりから俄然面白くなり、ラストもこれしかない感じの結末で、道徳心のかけらもない人物ばかりの小説でありながら、読後感は意外と悪くなかった。
いずれにしても、戦後の日本社会の一面を象徴する、「神町」という町そのものがこの群像劇の真の主人公のような印象を受けたが、そういう意味では同じく「神町」を舞台とする「ピストルズ」という作品も是非読んでみたい。

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2013年07月29日

Posted by ブクログ

これはなかなかの読み応え。
がつんと言うのとも違うけど、物語力があって、
堪能させていただきました。

阿部和重、多分初めてと思いますが、少なくともこのシリーズは
独特の世界構築がされてて癖になりますね。

ピストルズも(ちょっと満腹気味だから間をあけてから)読みたいと思います。

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2013年06月19日

Posted by ブクログ

先に進めるまでまさに巻を惜く能わずの面白さがありながらも非常に不快で好きにはなれない小説。再読だけど1度目は登場人物の多さに圧倒されて2度目の今回でようやく人物たちの最後がわかったという次第。群像劇だがほんとに登場人物が多い。山形県の仮想の町を舞台に、最初は町の歴史から、続いて現代の登場人物たちが織りなす人間模様がこれでもかと描写される。それがまた醜いながらも一部には細かく正義や相手への純愛さも入り混じる。100%好きにはなれなくてもわずかに感情移入できる人物たちにせめて最後はいい思いをと期待しながら読むとほぼ全てが裏切られるという。舞台の神町三部作だが次作はファンタジー色が強いと。読むかは微妙だな。ともあれ面白かったは面白かった。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

複雑に絡み合った小さな町の中で起きた事件や人間関係が大団円へと向かって進む。緻密に練られた作品で、読み終わってため息。
面白いけど、読んでいて辛い。疲れてしまった。

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2024年05月20日

Posted by ブクログ

最後まで読んだけど…笑

壮絶です。言葉を失います。
この群像劇に登場するのは、感情移入することが難しいしょうもない人たちばかりですが、読み進めてようやく「この中では比較的マシ」程度に認められるようになった人たちがふたり続けて亡くなって絶句しました。

あとは涙なくして読めなかった。

阿部さんがこの小説で伝えたかったテーマなんて特にない気がするし(笑)、エロとグロが満載で目を逸らしたくなるほどお下劣だったり残酷な箇所もあるけど、僕はこういう小説大好きです。
意味のなさや下品さを含めて、「人間」が存在することが肯定されている気がするので。
知的で勿体ぶった文体もGood。

神町トリロジーは制覇するつもりです。

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2023年04月06日

Posted by ブクログ

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2014年07月19日

Posted by ブクログ

地方の一都市を舞台にした群像劇です。登場人物が誰一人として他の人のこと慮ることはなく、自分の欲望のままに突き進みます。数々の登場人物とエピソードが折り重なり、不気味な胎動を感じさせる上巻です。

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2013年09月25日

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