阿部和重のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「グランド・フィナーレ」「馬小屋の乙女」「新宿ヨドバシカメラ」「20世紀」の4本からなる短編集。
この本を読んで最も印象に残ったのは阿部和重の「時間」というものに対する感覚。ロリコン犯罪者の、子供にとっての「時間」と大人にとっての「時間」はまるで別のものだという認識。ある年齢まで、ビデオカメラによって生活を詳細に記憶された女性の「時間」に対する感覚の歪み、すごく面白かった。思えばわたしは時間の経過による思い出の美化、風化といった、「時の欺瞞」とも呼べる何かに対して、ずっと疑問を抱いて来た。こういった時間に対する感性に出会えてとても興味深かったです。 -
Posted by ブクログ
離婚したせいで愛娘ちーちゃんと会えなくなってしまった。
DVと言ってもたった1回妻を突き飛ばしてしまっただけなのに。
その原因も妻が勝手にわたしのデータをコピーしたからだ。
ちーちゃんや他の女の子の写真のデータを。
田舎に帰り大人しく実家の文具屋の店番をしていると
2人の女の子が演劇の指導をして欲しいと訪ねてきた。
小学生は避けていたのにどうしたものか。
「グランド・フィナーレ」ほか全4編。
装丁:スタジオ・エス・アンド・ディー 装画:さわのりょーた
どこか壊れている。自分のしたことが社会的にどう見られるか
わかっているのに抑えきれないのは自己愛なのか。
いろいろなことを予感させる文章が散り -
Posted by ブクログ
第132回芥川賞受賞作。表題作のほか「馬小屋の乙女」「新宿 ヨドバシカメラ」「20世紀」の3編を併録。
離婚して職を失い、故郷へ戻って古い木造の一軒家に住み、仕事もせず、妻に引き取られた一人娘の形見の品であるジンジャーマンのぬいぐるみを抱っこしながら、あてもなく町をブラブラしている、37歳のロリータ・コンプレックスの男のお話。もともと東京で教育映画の監督をしていた彼は、地元の小学生の女の子2人に請われて、演劇の指導をすることになりますが・・・・。
この本に収められた小説は、どれも一読しただけでは理解不能なものばかり。けれど、ちょっと硬めの文体と、内容のアンバランスさが面白く、なぜかしら一気読み -
Posted by ブクログ
とりあえず文庫版の高橋源ちゃんの解説がすごい、あざやか。評価が割れがちな作品を解説させたら彼の右に出る人はいないんじゃないだろうか。その上で評価がイマイチなのは、これが阿部和重の決定版ではないと思うからである。以下、各編のあらすじ。
「グランド・フィナーレ」は事情により離婚に追い込まれ、愛娘と会うことを禁じられた映像作家が、故郷・神町へ逃げ帰り新しい「希望」を見つけるまで。まわりの人間が感情を爆発させるのに対して、主人公はいちじるしく欲望や感情を欠いているように見える(けど、やってることは異常そのものだ)から、彼の見た希望が本当に希望なのか、答えは宙吊りにされる。
ちなみに物語中、トキセンタ -
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作である表題作を含む4つの短編集。
表題作は、作中で書かれているある諸事情によって離婚させられ、愛娘の親権も妻に奪われ、娘に会うことすら不可能な「わたし」が故郷へ帰り、双子のような二人の女児に出会う。
すべての話を読んだ限りでは、私のごくごく個人的な感想をいえば、この文章はあまり好きになれない。どちらかというと苦手なタイプである。まるで早口でまくし立てられているような感覚。実際に、登場人物が相手に相槌もなく、早口に言いたいことを言っているだけの描写がある。コミュニケーションとは言いがたいようなコミュニケーションしかとれないのが「わたし」なのかもしれない、なんて思ったりもする。