嶽本野ばらのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
10年以上前に読んで面白かった記憶があり再読した。
高校生のロリータ魂で生きる桃子と、ヤンキー魂で生きるイチゴが茨城県下妻市で出会う。
きっかけは桃子のダメ親父が大量生産したVersaceのバッタものをイチゴが買い求めに来たことから始まる。
普通に生きていたら交わることのなかったロリータとヤンキーだが、筋の通った生き方をする桃子と、頭脳は弱いが正直で真っ直ぐなイチゴはお互いを認め合う仲に。
しかし桃子は決してイチゴを友達だとは認めない。
その答えを明確な言葉にしてイチゴがミコさんに言い放つシーンは爽快で、イチゴが周りを良く観察し、よく考えて生きていることが窺われる。
しかしお互いに信頼できる存在というのはこの上なく羨ましい。
桃子もイチゴもお互いのファッションを心の中で『ダサい』と感じていたり、桃子はイチゴを『オツムが弱い』と思っているのに、それを傷つく言葉で相手に伝えたりはしない。
それぞれを個として尊重し、距離感が絶妙に良い。
序盤、状況説明が長いと感じたが、イチゴが現れてからの2人のやり取りが面白くあっという間に読み進んだ。
桃子とイチゴの今後はどうなるだろう。
エネルギーいっぱいのちょっと変わった熱い友情物語。
爽快さと純粋さと若さを味わいたい時に。 -
Posted by ブクログ
とある裕福な一族にて、女児だけが感染する遺伝病「鱗病」。発症は性器周辺から始まり、やがて全身の皮膚に魚のような、あるいは龍のような鱗が広がっていく……というエロ・グロ・ホラー要素が入り混じった怪作。
主人公の楼子の、自らを「ウルトラ・スーパー・お嬢様体質」と言い切ってしまう気位の高さが良い。美しい肌を保つため、教師に叱られようといつ何時たりとも日傘を欠かさない美意識の強さにも平伏せざるを得ない。(わたくしは太陽盛んな夏場に日傘どころか日焼け止めを忘れる愚民でございます……。)常に楼子目線で物語が進むため、某お嬢様Vtuberを彷彿とさせる「ですわ〜」口調や文体に抵抗があったという感想を見かけたが、個人的にはこういうものだろうなという感覚で特に違和感なく読めた。このクセの強さが嶽本野ばらワールドって感じだ。
突如奇病を発症し戸惑う楼子を導くナビゲーターとして、楼子の父親の妹である黎子叔母様という存在が出てくるのだが、この人がまた良いキャラクターをしている。鱗病は一族の女児だけに発症するのだが、鱗病の女性と性交渉を行った男性にも感染するという設定だ。なのでこの黎子叔母様、なんと45歳になっても衰えない美貌で数多の男を引っ掛けては感染させ、特に有効な治療法もない病で彼らの人生が崩壊していく様子を楽しんでいるかなりの悪女である。きっととんでもない美魔女なんだろう。外出時はディオールの顔半分を覆い隠すデカいサングラスをはじめ、全身ハイブランドで固めているそうなので、個人的には叶姉妹みたいな女性を想像していた。ちなみに感染した男性は当然、男性器周辺から鱗に包まれていくらしい。やっぱり絵面が相当グロい。
物語のラスト、楼子に付き纏っていた気狂いストーカーを殺すという罪を犯し、共犯者という絆で結ばれた楼子と"お兄様"。しかしこの二人、許されざる罪はもう一つあると言わんばかりに、いままで秘めてきたお互いの気持ちを告白し、そのままセックスに雪崩れ込んでしまう。血縁関係にある兄妹が殺人共犯となり、最後はただの男女としての情で結ばれるという近親相姦エンド。刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる耽美な結末だろう。血痕飛び散る惨劇の現場で、身体を重ねて悦に浸る美男美女の兄妹という構図はなんとも不道徳だ。死体が既にセメント処理済みで、彼らの横に転がっていなかっただけマシだろうか。
楼子の台詞や独白から察するに、この性交渉をきっかけに今後はおそらくお兄様も鱗病に感染するだろうし、この二人の間の子どももまた、呪われた血と病の代償として、楼子や黎子叔母様に比肩するような、類稀なる美しさを持って生まれてくるだろう。鱗病は遺伝病という設定だが、感染方法が性的接触というのがなんとも……あくまで性病ではないというのが、うーん……。結局この世界の医療現場では鱗病の進行を遅らせることはできても治す手立てはないようなので、この一族が今後どう生きていけば良いのかといったところは謎のままである。
そう考えると、黎子叔母様のように「私はセイレーン(人魚)の末裔よ。セイレーンは歌声で魅力した人間を海底へ引き摺り込む不幸の象徴。だから私も関わった男達を不幸に陥れていくのだ」と開き直って綽々と生きていくのもひとつの答えである気はする。綺麗な薔薇には棘があると言うし、綺麗な女性がセイレーンの末裔で、身体に鱗を隠し持っている可能性は否めない。知らず知らずのうちに不幸な運命に導かれぬよう、気をつけるしかない。 -
Posted by ブクログ
実在する純喫茶(カフェー)を舞台に、様々な男女の恋愛模様が描かれる短編集。どの話にも恋や人生に懊悩する僕(主人公)と君(ヒロイン)が登場し、その中には晴れて成就する恋もあれば、叶わぬ恋もある。彼らはある時はカフェーで出会い、またある時はカフェーで逢瀬を重ね、親密になってゆく。そして勿論、カフェーで別れを告げられて終わる恋もある。むしろ破れた恋の話の方が多い気がするが、個人的にはそれが良いと思っている。常に人で賑わう大衆的なカフェと違い、ひとりもしくは気心の知れた友人や恋人とふたりでひっそり訪れて、一杯の珈琲を片手に、共に過ごす「時間」を味わう純喫茶には、燃え盛るような熱い恋よりも、静かに落ちゆく線香花火のような恋が似合うと思うからだ。この本では、恋の始まりや最中、そして終焉にも必ず彼らの側にはそれぞれの"カフェー"が寄り添っている。様々なカップル、様々な恋愛の形と共にそれらの甘さも苦さも全て詰め込んだ"カフェー"が存在し、実際に足を運ぶことが出来るのはニクい演出だ。なぜならそこで読者は紙面で味わったほろ苦い恋を、追体験することが出来るのだから。
また著者の取材を元に書かれた、それぞれの「恋」の舞台となったカフェーの沿革や店内の内装の描写の細かさも素晴らしい。オーナーによって選び抜かれたアンティークの家具や食器が並び、レコードから奏でられるのは重厚なクラシック音楽……読んでいるとそうした純喫茶特有のメランコリックな空間が瞬時に脳裏に思い浮かんでくる。登場するカフェーでもそうでなくても、レトロな雰囲気の喫茶店で読めば更に没入感に浸れると思われる。外出時の鞄にそっと忍ばせておきたい一冊。
個人的には鎌倉の「ミルクホール」は何度か訪れたことがあり、思い出深いカフェーのひとつである。お店のクラシックな雰囲気や内装も好きなのだが、現地に辿り着くまでの道筋から既に非日常への入り口が始まっているようで、毎回ワクワクしながら足を運んでいる。もしもまだ訪れたことのない方がいればオススメしたい。メニューの「オペラライス(白いオムライス)」は見た目の美しさと味、どちらも楽しめる名品なので、ぜひ。 -
Posted by ブクログ
ファッション用語が多く、ロリータファッションにも疎かったので、想像が大変な部分がありましたが、知らなかった世界をのぞかせてもらった感覚です。
ロリータとロリコンを混同されるとか、着ているだけで軽蔑的に見てくる人がいるとか、目立つ人や偏見を持たれやすい人共通の大変さがここにもあるのかと思いました。
2篇とも軸は恋愛小説で、スキャンダラスな状況下の純愛がドラマチックでした。
設定もさることながら、展開もインパクト大です。
特に表題作の方は、2人の関係性が報じられたところで、状況が状況なだけに、周囲としては冷静な視点で反応するのはとても難しいだろうなと思います。
この本はYouTubeチャンネルの「ほんタメ」で、MCのあかりさんが紹介されていたのを見て気になり読んでみたのですが、あかりさんのお好きな「恋愛×地獄」とはこのことか!と分かった気がします。ちょっとハマりそうです。