柿原朋哉のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ちゃちゃっとライトに読める本と思っていたので、読後の刺さり方についてはそんなに期待していなかったのだが(ド失礼)、読んでみると思ったより深く、面白かった。SNSやハッシュタグにまつわる4つの短編が収録されているのだが、どの話にとってもSNSは良い意味で脇役、あくまでモチーフでしかなくて、主体はきちんと主人公に据えられているのが良かった。カツセマサヒコさんは相変わらず「理屈じゃないけどそういう気持ちになること確かにあるよね」という心情を見つけて、見つめて、言語化するのがめちゃくちゃ上手い。木爾チレンさんについてはこれを読んで初めて知った作家さんだったのだが、エモくて素敵な話を書くなあと思った。フィクション性がありつつ、それでいてどこかリアルなエモさの塩梅が素敵だった!思いがけずな良本で、感謝。
-
Posted by ブクログ
麻布競馬場さん、柿原朋哉さん、カセツマサヒコさん、木爾チレンさんの短編小説4集。
ハッシュタグというものが市民権を得てどれぐらいがたっただろう。
元々は、SNSで特定の言葉を目立たせたり、検索しやすくするものだったかも知れないが、時に真正面から見せると気恥ずかしい言葉も、ハッシュタグを添えるとその言葉が突然誰にも聞こえる独り言のように、意味を持つようになった。
この4編はそんなSNS世代と呼ばれる人たちや、テーマを扱った作品である。
いずれの作品も短編なので、もう少し読んでみたいな、この設定は少し爪が甘いなと感じることはあれど、気楽に読めるのでおすすめ。
-
Posted by ブクログ
若い世代の作家さんを読んでみようと、内容はまったくわからないまま手に取ってみましたが、読みやすく面白かった……というか、苦しい小説でした。
文量はさほどあるわけじゃないんですけど、いじめの被害者の思い、そして中心ではないけれど加担して加害者側になった者の思い、毒親と呼ばれてしまいそうな親子関係までも、繊細に描かれてるんですよね。それが読んでてとても苦しかったし、そして私が若い世代だった頃に読んだ小説や、過去に読んできた古典的な文学らがいくつも頭をよぎった。結局、いくら時代は変わっても、根本的なところでは普遍的なテーマなんだなあと。人は繰り返すんだなあと、やけにしんみりと思ってしまった。
Fという覆面の歌い手さんは、Adoやyamaが浮かんだんだけど、歌声はUruみたいな優しく包み込むような、けど悲しい感じなのかなぁと、勝手にイメージして読んでた。 -
Posted by ブクログ
自分と向き合える勇気はありますか?
そんなメッセージ性を感じる作品でした。
YouTuber「ぶんけい」さんこと、柿原朋哉さんデビュー作『匿名』の概要と感想になります。
「あと一歩のところまで来た。」の一文から始まる本作は、本当の自分と向き合えないまま周囲の同調圧力に息苦しさを感じ続ける女性と、過去の自分から生まれ変わろうと歌手を目指す女性の視点が交互に描かれる作品になります。
対照的な二人が「歌」によって過去と未来に向き合っていく姿は、SNSが日常に溶け込んだ現代的なリアリティを感じさせる作品でした。前向きな終わり方であったものの、どこか物足りなさを感じる読後でしたが今後の作家としてのご活躍に期待したいです。