漆原友紀のレビュー一覧
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“不思議”を描かせたら一等素晴らしい、漆原先生の新作。
「フロー」という不思議現象と、現代を組み合わせた、人情劇のような。
いまのところは一話完結。
フローを解決する業者・広田フローを視点に、人々の悩み危うさなどを描いている。
不思議×等身大の人間たち。
主人公一味の【(株)広田フロー】は、
フローの匂いに敏感な猫・しゃちょう、
フローの考察や予測をたてる広田、
フロー現象に遭い若返ってしまったチマちゃん。
最低限の登場人物でじゅうぶんに物語をまわしていく。
広田が白黒だと、前作のギンコにちょっと似てるのが気になる。でも元々描きわけそんなにしない作家さんだしいいか…。 -
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日蝕にまつわる蟲のお話。
そういえば、蟲師で蝕ってなかったっけ。満月と双璧を為すぐらい、妖の気配臭いプンプンの出来事なんですけどね。
日蝕の思い出。温度の変化がすぐに感じられることでしょうか。日が翳れば涼しくなるのはかわってましたが、曇りのときよりも明るいのに、感じている温度が涼しいということに、びっくりした覚えがあります。
少しの時間で、はっきりわかるぐらいの温度変化あるのですから、核の冬ややら隕石衝突やらで、完全にさえぎられてしまったとき、どうなるのでしょうかね。そんな世界崩壊後のフィクション読むたびに、日蝕で感じた涼しさ思い出して、恐くなります。 -
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生命の原体に近い「もの」である蟲。その蟲が人間に影響を及ぼした現象を解決する蟲師ことギンコの物語。
僕がこういう妖怪のような存在が出現する和風ファンタジーでいいなと思うのは、結構理屈っぽいところだ。きちんと現象に対して原因を示す。その前提を踏まえて各作品の色が出ているように思う。
現象を人間に限りなく近づけ、かつその「理屈」を強くフォーカスしたのが『当て屋の椿』ならば、この『蟲師』は現象を引き起こす側に焦点を当てている。最大の特徴は蟲たちを「生き物」として見せている点だ。前者が人間同士の関係ならば、後者は人間と蟲、つまり現象を引き起こすものの関係。そんな見方をすると、自分の好みがどちらかわか -
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“ばあちゃんの始めた この店で 私は育った
岬の端 バスの終点そばの 一軒家
遊ぶ相手も 近くにおらず たいてい店で過ごした
二時間に一本 岬を巡る バスが来る
やる事のない 休日には バスの客を 数えて 退屈をしのいだ
他に 交通機関も なかったから バスで来た人は バスで戻るのが ふつうだった
けれど 時折 降りた数より 乗った数が 少ない日があった”
ショートストーリの詰め合わせ。
個人的に少し内容が読み取りにくいのもあった。
虫師良かったなー。
漆原さんの作品の空気が素敵。
“「それで虫師に なったんだろうが 普通の昆虫じゃ 食ってけんだろ」
「ん ......うん」
「つーわけで -
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ネタバレダムに沈んだ村に住んだ一家の時間軸が微妙に乱れた不思議なノスタルジーのお話。
渇水でダムが干上がったことをきっかけに、爺さん婆さんと、龍神の祠で神隠しにあった長男と、妹、妹の娘が沈んだはずの村で多分に重層的な邂逅を果たす。
神域、村、時代、そういったものにとらわれたり、決別したり、それでも別れ難かったり。忘れ難い思いを静かに書いている印象がある。長男の神隠しと、彼の囚われた時空に紛れ込んでしまう孫娘が中心になるが、長男を捉えたと思しき龍神の直接的な描写はなく、なんとなく焦点の定まらない、霞のかかったような話になっている。
蟲師の頃から、読者の捉え方は読者次第というような、ある種突き放した書き