あらすじ
日照り続きで、給水制限中の街。酷暑にあてられて意識を失った川村千波(かわむら・ちなみ)は、豊かな水にあふれる村で、少年と老人に出会う夢を見る。祖母に夢の話を聞かせた千波は、意外な言葉を聞く。「それ……ばあちゃんの昔の家じゃないかねぇ」また行きたい──そう願った千波が目を覚ましたのは、夢だと思っていたあの村。そして再会した少年・スミオから、この村では雨が降り止まないことを知らされる。『蟲師』漆原友紀が描く、人々の想いと忘れえぬ記憶の物語。
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蟲師の作家の作品。ダム建設によって水底に沈んだ村を舞台に、雨が振り続ける夢の世界と雨が降らない現実の世界、娘と息子、母、お祖父さんとお祖母さんの美しい絆の物語。現代と過去が繋がり、絆を見つけて行く。美しい水の描写、やさしい会話。どこか物悲しくて、切ない気持ちになる。本当に居るべき場所と、帰るべき場所を知る。現代の環境破壊や開発にただメスを入れようというような作品ではなく、自然や自分自身が本来いるべき場所とはどこなのか、健やかに過ごす時間とは何なのか、そんな事を考えさせてくれる名作。
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今月の17日に読んだ・・・ 「フィラメント~漆原友紀作品集~ (2004)」振りに 漆原友紀さんの作品『水域(2011)』の”上”を読んでみた。 あーこっちも素晴らしい。 おいらはこの作品を読んで、生まれ育った、地元をもっと、知りたくなりましたね。”下巻”?も楽しみだなー。
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読みにくい物の後は、やっぱりコミックだね。この人の物は独特の色があるよね。繊細な人なんだろな、蟲師でアタリ過ぎてかわいそうな気もする。好きだけど、急かしたくない。新作、気長に待ってよっと。
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「蟲師」の作者のものと知って読みました。主人公の女の子が、
ダムの下に水没した村と繋がります。無意識の世界で。
村が水没することが、土地への想いを浮かび上がらせます。
見開きで広がるダム湖の絵が迫ります。
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雨の降らない町、雨が降り続ける町、二つの町を舞台として少女は不思議な人物と出会ってゆく。「蟲師」で幻想的な謎を描き続けていた、非常に漆原らしい作品展開。本作を貫くキーワードは「水」であり「人」である。
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この作者の現代物はどうかなぁと読む前は思っていたのだけど、下巻の最後周辺は泣いてしまいました。この絵だからこそ表現出来るあちらの世界がとても綺麗。
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ダムのお話で、自然の豊かさや厳しさや人間の勝手さや人の愛温かさなど、いろんなものがひっくるめられたドラマがある話でした。泣けた。
絵もこの話にとてもぴったり。著者漆原さんの「蟲師」が有名らしいので、そちらも読んでみようと思った。
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このひとは本当に故郷などひとや生き物の根源を思い出させるものを描くのがうまい。それが蟲師のときみたいに、人や動物ではないあの世に近い蟲であったり、今回はスミオであったりした。泣いてしまった。あと水に投げ打つ感覚は水泳経験者には特別のもの。
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おもしろさは、単に笑えるって言うものだけではなくて、考えさせられる物、人の背景を考えるものもおもしろさと呼べると思う。故郷が存在し続けることに幸せを感じることがあるか。それを問われる。
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蟲師と同じ感覚で読めた。読んでると自然の匂いがしてきたり、色彩がぶわっとリアルに目に焼き付くような気がする。不思議。独特の世界観に引き込まれ、泣ける。
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中学3年生の千波に、夏休みにおこった不思議な出来事。
千波は夢の中で、山深く水豊かな村に住む小学生の男の子と出会う。そこは、どこか懐かしいような風景で、雨の降り止むことのない不思議な場所だった。
そこはかつて祖父母や母が住んでいた村で、今では、川が堰き止められダムの底に沈んでしまったはずの場所。出会った少年は、死んだ母の兄 澄夫だった。
澄夫は、その村と人を守ると伝えられていた龍神に守られ、時が止まったままのその村で、たったひとり家族を待ち続けていた。龍神の力が弱くなり、雨が泥水の雨に変わり、村が水に飲み込まれはじめた。龍神の力が尽きた時、それは、澄夫との本当の別れだった。千波は、龍神とともに空のかなたに昇っていった澄夫の姿を見送った。
ある夏の夢のような出来事は、それぞれの人の心の中に、水域となって、優しく深くいつまでも心にあり続けるような思いとなった。
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漆原先生らしい、良い意味で湿度の高いお話でした。絵から川や森、雨いろんな水の香りがしてきそう。
みんなそれぞれが切ないのだけれど、特に澄夫と竜巳じいちゃんが。
もう生きてはいなくて、思いだけが残った澄夫が一人残されるのが可哀想で。最後は成仏?したように描かれてますが、何故突然消えてしまったから本当のところはどうったのか気になってしまいます。
そして澄夫の事が頭から消えなくて家族の元に戻る事ができなかったじいちゃんの気持ちを思うと切ないです。
泣く訳ではありませんが、最後まで悲しかったなぁ。それでも引きつけられるお話でした。
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すごく引き込まれる世界観。昭和っぽい田舎の一昔前の日本の風景・人物画が綺麗すぎて隅々まで見渡してしまう。現実と仮想世界が混ざったような不思議なお話。
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おばあちゃんの回想シーンでの若かりし頃のおじいちゃん(旦那さん)とのやりとりで泣いてしまった。
はっきりとしたプロポーズはないのだけれど、とても大切なものを預けるというところにおじいちゃんの覚悟が感じられた。
一体どれだけのカップルが戦争によって別れることになったのだろう。
結婚していたならまだしも、結婚もしていない人のことを健気に待ち続けられるだろうか。
韓国で男子に義務付けられている兵役の約二年間で多くのカップルが別れるようですが、戦時中の日本はどんな感じだったのでしょうね…。
そもそも恋愛結婚自体が珍しかったのかしら。
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上下巻共に満足。
何気ない日常のなかで、考えさせられる事が多くあった。
描かれる人間のなかでも、他に原作があるんじゃないかっていうくらい、人間の本音までもが描かれていた気がする。
そして漆原さんの画力の御陰で一段とトーリーにのめり込まれよすい。時間を忘れて読んでしまった。
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雨が降らない。降水確率0%。
取水制限も発令され、暑い暑い夏が続く街。
毎日あきもせずに降る雨。しかし降った雨は溜まらない。
そこは、男の子とお祖父さんの2人しか住んでいない村。
この二つの世界を一人の少女「千波」が、行きつ戻りつ繋ぐ。
雨は降ったほうが良いけれど、毎日は…
日差しは注いだほうが良いけれど、やっぱり雨には降ってほしい。
そんな中庸なバランスを求めるのは人間だけなのかもしれない
人間は自分が生活し生きるために、丁度良い状態を神に願うのだが
願われた神に丁度良さなど解るはずもない。
ダムを作るために水の底へ沈んだ村と、そこで生活していた人達の話
蟲師を描いた漆原友紀の新作。本屋で見つけて、少し嬉しかった(笑)
蟲師の唐突な終わり方がなんとも腑に落ちなくって、
体調でも壊したんっじゃないかと心配してたから、新作が出たのは彼女が元気という証拠。
今回の作品も、相変わらず…湿った匂いがした(笑)
でも嫌いな匂いじゃない、湿っているけど爽やかな水の香りがする。
地震で原子力発電所のモロさと怖さをあらためて実感したが
水力発電も、大きな場所が必要になり、大勢の人が悲しい思いをするのだの。
人間っぽい中庸さを求めるのなら、火力発電が良いのかもしれないけれどこれはお金が掛かる。
危険を承知しながらも原子力に頼るしか、やっぱり道はないのだろうか
なんとなく、工事が中断されている八っ場ダムを思い浮かべてしまう
最初は、そんなにお金が掛かるのなら中断して止めた方が良いのだろうと思ったが
そこに住んでいた人達の「気持ち」を私は考えたこともなかった。
この「水域」を読み、そこに暮らしていた人達の思いに触れた気がした。
決断を迫られ、その決断を飲み込み、全員で移住したのに
家や学校や人々が工事でバラバラになったにも係らず、そこにダムが出来なかったら…
いったい自分達は何のために、あんなに考えて悩んで移動を決意したのか?っと
思わずには居られないんじゃないだろうか?
本書で雨が降らずダムの水が干上がってしまい
自分達の住んでいた家や学校が、ダムの底から見え出したときに
なんとも言えない焦燥感を感じたけれど…
また雨が降り、満々とした水が溜まったダムの姿を見て
主人公の千波の母が「こうして見ると綺麗なのよね。くやしいけれど」っと
思わず言った言葉を聞きつつ、
千波の祖母が「不思議だね こんなに近くに来たのに もう…行けないんだ
あんなに深い、水の底にあるんだ」っといった言葉が印象深い。
どちらの言葉も本音なのだろう。
自分達を苦しめたダムだけれど、自分達の苦労が誰かの役にたっていると思う自負もある
その気持ちが支えとなって、故郷は水の底だけれど、別の地でも新たに頑張れるのだと思う。
完成したダムを見たからこそ、諦めもつき、
前に前進する気持ちも生まれたのだと感じた。
それなのに八つ場ダムのように、何時までも無意味に破壊された村を見つめる日々となったら
なんとも言えない虚しさが心に重しのように何時までも残るような気がする。
ところで、関西の電圧は60ヘルツ、関東は50ヘルツ…なぜ同じ日本で違うの?
っと思ったので調べてみたところ
なんと関西はアメリカのGE社から60ヘルツの発電機を購入し
関東はドイツのAEG社から50ヘルツの発電機を購入した違いらしい。
まさかっ!?という真実にビックリした。
もちろん関西と関東で電気を送り合うことも出来るのだが、変換施設が3ヶ所しかない
EUですら他国と手を結び同じ規格にしているのに、なぜ日本はしないんだろう???
これからの電力は、作るうえで誰かを悲しませるような施設ではなく
太陽の光で使う分を自分で作るという方法が主流になるかもしれんな~。
そういえば北海道の実家では、屋根にソーラーパネルを貼っていたっけ。
実家から1時間程度の所に支笏湖という湖がある。透明度の高い湖なんだが
そこにボートを浮かべ、水底を覗くと自分が空中に浮かんでいるような錯覚がおこる
水底に沢山の樹木が見えるからだ。
ダムに溜められた水の透明度が高かったら、水底に家や道路が見えるのだろうか
そんな色々なことを考えさせてくれた漫画であった。
機会があれば是非、一読あれ~
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ファンタジーだけどホラーでもある。「水」に対する感情(畏怖・静謐・神聖視etc...)は日本人ならではの感覚なのかもなー。と。水神伝説は嘘か真か。
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漆原さんの作品は、じわ〜と染みが広がっていくような話の進め方なので、読んでいてとても気持ちがいい。
この作品もまさにそんな感じだった。
読んで損は無いと思う。
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泣けた。失われていく故郷。愛しい子との別れ。親を求める子の想い。誰も悪くないのに、皆心のどこかに深い深い悲しみを湛えた水域を持つ。もし澄夫に出会ったのが母親なら、きっと澄夫を一人にはできなかっただろう。もし子を失ったら。その想像は子を持つ母親には想像することさえ忌まわしいほどの恐怖だ。
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けっこう面白かった。淡々と静かな絵柄での群像劇。故郷が消える…切ないんだろうな。今の福島県人しかり。ふと、東京が消えたとしてもあまり切なさを感じない気がして、故郷とか郷土愛とか愛着ってなんだろう、と寄り道で考えてしまった。
Posted by ブクログ
ダムに沈んだ村に住んだ一家の時間軸が微妙に乱れた不思議なノスタルジーのお話。
渇水でダムが干上がったことをきっかけに、爺さん婆さんと、龍神の祠で神隠しにあった長男と、妹、妹の娘が沈んだはずの村で多分に重層的な邂逅を果たす。
神域、村、時代、そういったものにとらわれたり、決別したり、それでも別れ難かったり。忘れ難い思いを静かに書いている印象がある。長男の神隠しと、彼の囚われた時空に紛れ込んでしまう孫娘が中心になるが、長男を捉えたと思しき龍神の直接的な描写はなく、なんとなく焦点の定まらない、霞のかかったような話になっている。
蟲師の頃から、読者の捉え方は読者次第というような、ある種突き放した書き方をする作者だが、それが更に進んだような印象もうける。雰囲気変わってないし、好きな人は好きだと思うが、穏やかすぎてなかなか迫らない、とも思えた。
もののけ姫みたいな感覚、かもしれない。