君嶋彼方のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレすごく面白かった。一万人に一人能力者がいる世界っていう設定が興味深くて買ったけれど、思っていたような派手な話ではなく等身大の思春期の悩みを描いていて好みだった。
個人的には天くんの描写が好きだったなぁ。
天くんは旭くんや皆の「ヒーロー」で在りたかったけど、自分が何も出来ない場面に打ちのめされて、旭くんも自分を必要としないで楽しく学校生活を送っていて、家庭にも居場所を感じられなくなって、その苛立ちとか無力感で出てしまったあの言葉だったのかな。そんなこと思ってないのに、自分以外の何かの所為にしたかったのかな。
天くんだけではなく、旭くんも我妻くんも篠宮さんも、榎本くんや毛利くんも柔らかいものを抱えていて、それを爽やかに乗り越えていく様な素敵な話だった。あのラストのその先で、天くんもその弱さとかもどかしさを乗り越えていって欲しいなぁ。 -
Posted by ブクログ
読んでよかったなと、心の底から思う。
色々な立場の心情。どの意見が正しい、とかないだろう。親世代だから理解できないことも、当事者の想いも、当事者でないからこそ持つ意見も、様々である。でも、それが普通なのだと思う。色々な意見があって当然で、だから人を傷つけていいとは全く思わないけれど、何に対しても誰もが同じ意見を持って、完全に理解することなんて、むしろおかしい。当事者の想いを決めつけたり、同情したり、特別扱いしたり。理解しようとする気持ちはあるべきなのかもしれないが、勝手な想像は危ないものを生んでしまう。
私の考えもただ一人の考えでしかない。一人ひとりそれぞれの生きづらさがあって、それぞれの幸せがある。自分の幸せを幸せだと胸を張って言える世の中であってほしいし、そう言える自分の人生を歩みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアロマンティック・アセクシャルの千凪×男らしさを強要された一番のラブストーリー
①近年、自分のセクシャリティ(性的指向や性自認)を他者に開示する(カミングアウト)をする人が増えてきている。
しかし、自分のセクシャリティがわからないと感じている人は多いのではないか。
私自身、''性的欲求を他者に対して抱くことはありえない"と思っていて、
本作を読んでいても、「なぜそんなに一番はキスやセックスをしたくなるんだろう」と生々しい行為のシーンを読みながら、そう感じてしまった。
もし、今後、彼氏を作るとなった時のために、自分のセクシャリティを診断して、しっかり自己理解をしておきたいなと思った。
②一番と千凪の当人がうまくいったとしても、家族や友人など、周りの人の理解を得るのはかなり大変なんだろうなと思った。
今は、多様性の社会と言ってはいるものの、道沢家の様子を見て、いざ自分が当事者になるとなかなか受け入れられないというケースは多いのではないだろうかと感じた。
わたしは、「普通かどうか」、「周りがどう思うか」に囚われず、柔軟に判断ができる人になりたいなと感じた。 -
Posted by ブクログ
面白くて一気見してしまった。
アロマンティックアセクシュアルの千凪と、男らしさを植え付けられてきた一番のラブストーリーだ。千凪は、一番と付き合ってから結婚の話が出るまでの2年間、「恋人らしいこと」に大きな嫌悪感を抱きながら我慢していた。しかしプロポーズされた時、自分がアロマンティックアセクシュアルだと気づき、プロポーズを断る。
千凪の「一番の愛には応えられないが、周りと違うことが苦しい。できるだけ普通でいたい」という思いと、一番の「千凪と一緒にいたい。結婚したい」というお互いの利害が一致し、偽装結婚を始めた。
しかしやはりうまくいかず、一番は千凪を衝動的に襲ってしまう。この時が本当に苦しかった。好きな人に欲のままレイプまがいなことをしてしまう一番の辛さ。そして、嫌なのをわかってされる千凪の苦痛。2人の偽装結婚はすぐに破綻した。
その間に千凪は同じ境遇の人と話したりして視野が広がり、誰も愛せないと思っていたが、一番のことを考えて行動していたことが「愛」だと気づく。最終的に、お互いに性的なことがなくても一緒にいることを選択する。
私は恋愛感情をちゃんと持つタイプだから、世の中にはこんな人もいるんだ、こんなに苦しいんだ、と思った。確かに好意のない人からのそのような行動は、とてもじゃないが苦痛に感じる。好きな人とイチャイチャすること自体が苦痛なんて、どうしたら良いのだろう。
でも、夫婦になったらいずれは性的感情がなくなることもあると聞く。それでも愛していると言える人たちは、日々のコミュニケーションや無償の愛で繋がっているのだろうか。千凪と一番はその領域に入っているように感じた。もし自分が付き合って結婚する人が、体が不自由だったり、様々な事情で触れ合えない人だとしたら、その人の内面をしっかりと見て好きだと思え、思いやることが最高の愛なのだろうと感じた。
君島彼方さんの本は、価値観を広げてくれる素晴らしい作品だった。
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Posted by ブクログ
朝からちょっと泣きそうになった。
とあるクラスの子達を描いた短編集。
最後の1話までは、学生の微妙な人間関係を突いてるな、って感じだったんだけど、ラスト1話の男女の友情話にぐうっっっっ、って持っていかれた。
純粋な男女の友情を信じられなかったり、心地悪かったり、恋愛に結びつけようとする周りのせいで、その幼さに大切な時間を失いかけた人たち。
そしてそれを救ってくれた大人たち。
そしてここで、二つの時代の話が混じっていることに気が付かされる。
彼らの未来、こうなってるのか!含め最後ではぁぁぁ!!!ってさせてくれてありがとう
2025.9.11
175 -
Posted by ブクログ
もぅ〜!!
最高の1冊!!
文庫本で読ませていただいていいのか!?って心のなかで叫びました
お買い得だと思います、この1冊
恋と食のある10の景色のサブタイトルもすてきですが、わたしとしては恋よりもひととひととのつながりを強く感じました
誰かと出会うこと
誰かと寄り添うこと
誰かと愛し合うこと
それはとても簡単なようで、簡単ではない
いっしょに食事することも相手が違えば、高級であっても味気なく、カップ麺でもおいしく感じるように
最後の山田詠美さんの『恩讐の彼方のトマトサラダ』まで、どの作品も好きですが
しいて!!
強いて、好きな作品は
君嶋彼方『ヴァンパイアの朝食』
奥田亜希子『白と悪党』
原田ひ香『夏のカレー』 -
Posted by ブクログ
ネタバレとある高校の、とある教室。冬木先生を担任にもつ生徒たちの、ままならない学校生活が連作短編になっている。
大人でも子どもでもない十代後半、みんないろいろあるよねーなんて半ば退屈しつつのんきに読み進めていたのだが、最終話を読んで驚愕することになった。
え、え、10年前にLINEを使ってたような高校生が、もう26歳になって学校の先生をしてるってこと!?
種明かしというか、その時の流れの速さにひっくりかえりそうになった。信じられなくて調べたら、LINEがサービス開始したのは13年前なんですって……。そうかぁ、そんなに昔かぁ。
時代が交錯するタイプの叙述トリックとして使われるほどの年月が経って、それにまんまとひっかかるなんて、年老いるってこういうことなのか……なんて、衝撃を受けてしまった。
そして、姫ちゃん先生と芥川先生だけじゃなく、他の短編にでてくる生徒も同じように10年前のクラスメイトで、一冊のなかで交互に時代が行き来していたなんて二度目三度目の驚きだった。
慌ててページを遡ってみると、伏線もちゃんと綺麗にちりばめられておりました。
たしかに少しひっかかる部分あったもんなーというのは負け惜しみか。まさか冬木先生が水先案内人とはね。
けれど、その事実を知るまえも知ったあとも、ストーリーに違和感はまったくない。
読みながら、ついつい自分が高校生だったころの姿もこのクラスの中に投影していて、あのころの感情や景色がよみがえってきた。
だから結局のところは、高校生っていつの時代も変わらないものなのかも。
時代を超えて、そこに集う者たち。どれだけの月日が経ったとしても、私たちはいつでもまた帰ってくることができる。タイトル『春のほとり』は、そういう普遍性を言い表しているように思えた。
「十代のあなたに会いにいこう。」は名キャッチコピーで、きっと現役の高校生が読んでも、大人が読んでも何かが響いてくるはず。司書として、図書室で薦めたくなるような一冊だった。
君嶋彼方という作家は、今の若手の中ではもっとも感性が鋭いというか、センサーやアンテナのようなものの精度が高いような気がする。
時代を反映させるのが巧いというか、こういった多様性とかジェンダーを題材にする作品において、完成度がいずれも頭ひとつ抜けてる印象。
恋愛、友情、家族、そういう既成の名前がついていない関係性を、こうやって小説という形にしてどんどん開拓していってほしい。これからも読みつづけます。