【感想・ネタバレ】一番の恋人のレビュー

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Posted by ブクログ

デビュー作『君の顔では泣けない』が良かった君嶋彼方さんの三作目となる本作も素晴らしかった。

「何事にも一番になれるように」という父の願いで付けられた名を持つ道沢一番は、父親の「男らしく生きろ」の言葉に囚われ続けている。

恋愛感情も性的欲求も抱く事がないアロマンティック・アセクシャルの神崎千凪。

そんな二人が出逢い同じ時を過ごし始める。

一番と千凪、其々の視点で交互に描かれる事で二人の心の揺れや葛藤が痛い程伝わり、切なさで胸が締め付けられた。

互いに相手を必要とし、共に生きたいと願うならばそれは紛れもなく愛だと思う。

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2024年06月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

個人的に最近いち推しの作家さん。今回はアロマンティックアセクシャルの女性と、男性性に縛られる男性の物語。
"普通"になりたくて自分を愛してくれる人を利用したと自覚する千凪、自分の愛する人がマイノリティだと知って受け入れられない一番、息子2人に理想の男性像を押し付ける父、どの人物の言動も自分に心当たりがあるから刺さる。この人たちは自分とは違う、間違っている、と非難できるほど完璧な人間はいないだろう。狡いところも弱いところも誰にでもあると思うから。
アロマンティックだからといって、人に拒絶されても平気なわけじゃない、孤独が平気なわけじゃない。自分を理解して受け入れてくれる場所を必要としているんだよね。"愛"には恋愛だけじゃなくて親子愛や兄弟、友人への愛もある。千凪も一番も、曲がりなりにも親から愛情を注いで育てられたと感じているからこそ、理解してほしいと思うんだろうな。「この世界に、二人だけなら良かった」という言葉が切なくて涙がでた。
みんなに理解してもらい祝福されてハッピーエンドのお話ではないけれど、それこそが現実だし、2人はこれからも葛藤しながら、お互いの幸せを模索しながら、一緒に生きていくんだろうな。この作品を読んで、自分の周りの人を自分の不用意な言葉で傷付けてしまうことだけはしないようにしようと強く思いました。読んで良かった!

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2024年06月10日

Posted by ブクログ

『好きになれなくてごめんって、言ったんだよ、俺に。俺はそれだけで充分なんだ。そう思ってくれるだけでいいんだ。他の誰が、そんなもの愛でも恋でもないって言おうが、知ったこっちゃない。俺にとっては、愛以外の何者でもないんだよ』

愛の在り方について深く考えさせられる話だった。愛は与えるものだと思いがちだけれど、何もしないっていう愛情表現もあると描かれていて、確かにその考え方もあるなと今までの愛についての考え方が覆された感じがした。
誰になんと言われようと自分たちにしか分からない愛の形もあって。後ろ指をさされようと、馬鹿にされようと、どんな状況でも一緒にいたいと思えることって最大の愛なんじゃないかなぁと思う。

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2024年06月10日

Posted by ブクログ

性的マイノリティ「アロマンティック・アセクシャル」ー恋愛感情も性的欲求も抱く事ができない性質ー を主題とした、作品

男性は、父親に“一番”と名付けられ、幼児期から男性性を強く求められてきた
大人になってもそれは続いていた
珍しく父息子関係の毒親系でしょうか
女性は、友人達の恋愛感情と自分の感覚との距離に思春期から違和感を持っていた
誰も恋愛的に好きになれない

そんな二人が 知り合い寄り添って生きたいと思う 普通の幸せを望む周囲にも応えたい
それが二人にとっての幸福なのか
朝井リョウさんの「正欲」ほど厳しさはないけど
こちらのカップルは、恋愛にならなくても 労りあえる様な別の種類の愛情がある
二人の関係性の帰着どころは良いなと思いました
ストーリーとしては、ちょっと反復が多いかな

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2024年06月22日

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