君嶋彼方のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恋愛は相手を知るものだと思っていたけど、本当は“自分の醜さや弱さを知る行為”なのかもしれないと思わされた。
一番の恋人 は、恋愛の綺麗な部分だけではなく、欲望や不安、見返りを求めてしまう感情まで描いていた作品だった。
特に印象に残ったのは、「愛情」と「欲望」は綺麗に分けられないということ。
相手を大切にしたい。
裏切りたくない。
でも触れたいし、満たされたい。
そして、本当は関係ないはずなのに、不安や満たされなさが、“与えた量”を数え始めさせる。
だからこそ、
「人間はな、与えた分だけ与えられたい生き物なんだよ」
という言葉がかなり刺さった。
同時に、
「何かをしないっていう愛情もあると思うわけよ」
という言葉も印象的だった。
愛情というと、何かをしてあげることだと思いがちだけど、本作ではむしろ“自分の欲望を通さない”ことも愛として描かれていた。
触れたい気持ちがあっても抑える。
踏み込める場面で踏み込まない。
それは優しさでもあり、かなり苦しい行為でもあると思った。
この作品は、恋愛を通して相手を描いているようで、実際は「人間の弱さ」そのものを描いていたように感じる。
だから読後、自分の恋愛観だけじゃなく、“自分自身の感情との向き合い方”まで考えさせられる作品だった。 -
Posted by ブクログ
六十代以上の女性のみを対象にした風俗店「銀楼館」のキャスト・櫻。彼が相手をした女性たちの事情を描く6つの短編。
君嶋作品を読むのは「一番の恋人」「君の顔では泣けない」からのこれ。青春小説からいきなり老人の性と振り幅大きい。
ただ、どの作品も性を切り口にして、登場人物たちの人生そのものを描き出している。
年をとっても、いや、年を重ねたからこそ身のうちに積もる業のようなものが描かれていて、その重さに圧倒されるも、ピンク色の髪の櫻の軽やかさに救われた。
美しい男娼と女性たちという設定からドラマ「潤一」を思い出して、櫻は志尊淳くんに脳内変換。尊い。 -
Posted by ブクログ
男性を知らないまま生きてきた女性、自らの老いに苦しみながらも夢を追い続ける女性、誰でもいいから自分のことを覚えていてほしいと願う女性、夫に長年虐げられながらも歪んだ愛情を抱える女性、死に取り憑かれながら死ぬことのできない女性と、彼女のために死を諦めた女性。
そうした六十代以上の女性のみが利用できる風俗店『銀楼館』でキャストとして働く櫻のもとには、日々さまざまな依頼が寄せられる。
この櫻という人物が、なかなか掴みどころがなく、各話でキャラがぶれているなーと感じる点がありそこだけもやもやしながら読んでいたのだけど、最後の最後で合点がいった。男娼を描いた職業小説ではなかったが、櫻という天性の大嘘つきの哲学を見せてもらった。彼は、この物語の語り手であり傍観者であり、主役であり脇役である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ男性の同性愛の話らしいと聞いたので、読んでみた。
普段は女性が描くBL小説を読み、そのテンプレに則って、相手とどう結ばれていくかという話を読んできたので、今作は付き合った後の葛藤が描かれていて面白い。みんな悩んでるのが良い。
メインカプの二人の雰囲気は、年の差モノだが『としのさ夫夫 』を思い出した。引け目を感じているところとか。
祥太視点が無いのは、元ノンケが男を好きになる葛藤をあえて省いて読者に想像させるためかな、と思った。
「ヴァンパイアの朝食」
ゲイの柏木文也と元ノンケの西澤祥太。
日陰者であることをヴァンパイアに例えていて面白い。吸血して同属にしてしまった引け目。面白いな。
祥太は、元カノに「文也と手を繋ぎたい」と言っていたが、この話の最後に文也は祥太と手を繋いでいる。そして最後の日出シーンでも繋ぐ。良い終わりだ。
「自殺者の午睡」
祥太の元カノの美里と結婚相手の譲の話。
美里はこうあるべしという固定観念があり、目標があり、邁進してきて、順調だからこそ不安になる、というのが良い。マリッジブルーだ。
怠けたいという午睡。
「夕立に悪魔」
祥太と美里の後輩であり友人である宮川の話。
セックスで繋がろうとするのが面白い。
それ以外でも幸せを感じられる終わりで良かった。
同性愛を過剰に持ち上げたり同情を示すのはどうかなと思ってたけど、それを真っ向から指摘するのもどうかなと思った。その未熟さが人間らしさか。
不動産屋の彼女はリップサービスでしか言ってないわけだし。その接客良くないですよぐらいは有りかなあ。
「聖人たちの晩酌」
祥太の両親の話。
理想が叶わないとわかってしまったら、誰だって絶望するだろう。
受け入れようと、排他的にならないようにするだけ充分マシだなと思った。
モラルある善人を演じようとするだけマシ。
「醜いあひるが真夜中に」
文也と祥太が出会ったゲイバーのママの話。
浮気三昧だけど一緒に暮らしているのは孤独が嫌だからという相手を切れない幸継。
祥太に手を出すのは踏んだり蹴ったりだろうがダメだろと思うが、作中で散々そんなもんだと描写されてるから仕方ないのかな。でもやっぱダメだろの気持ち。
名前が幸継。幸福を繋ぐ者。良い名前だ。
「ヴァンパイアの夜明け」
また文也と祥太の話。
この先の見えない感じで喧嘩するのは、『窮鼠はチーズの夢を見る』シリーズでも見たなと思った。窮鼠でも、喧嘩しつつ一緒にいようエンド。
結局なんだかんだそうするか無いと思う。家族というのはそういうものでは。キレたりなあなあにしたり。無理になったら切っても良いし、やっぱり切れなくてズルズルになったり。
そんなもんだよ、と思いながら読んでた。
全編、希望とは幸せとは、というのにもがく人の話で、まあ良いじゃん程度の感想。
ミステリーとかの仕掛けが無いのですんなり読めたしまあまあな感動もあるけど、めちゃくちゃ名作!感動作!でもない。セカチュー未満、みたいな。
中高生にウケそうな同性愛の作品が出たら売れるのかな〜とか考えた。
二人なら夜が明るいというのは、『白夜行』も思い出すな。あれは照らしてくれたから歩けた、という話だが。
『白夜行』みたいな面白いBLも読みたいな。