池波正太郎のレビュー一覧
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『鬼平犯科帳』第2巻、これもするすると、水が引く気に流れるが如く読んでしまった。思うに、TV版でもそうだが、欲に捉われた人がもたらす思わぬ結果やその空しさ、呆気なく失われる命の儚さとそれへの哀惜に、日々の生活の中で「諸行無常」を感じている私の心が感応してしまうからだろう。そして、何故か「こういうものだ」と安堵してしまうのである、人も生命体であるのだから、と。そのなかで「兎忠さん」こと、木村忠吾の有り様は、何処か明るく微笑ましい。そして、その無邪気と言っていいぐらいの仕事以外への欲が、事件解決へと繋がっていく。世上の欲が事を起こすのだから、それに通じている者がそこに近くある(自覚的かどうかは別
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冴えない浪人だった。
小男で醜男、だが滅法強かった。
長谷川平蔵の息子の辰蔵が出会った浪人に持ち込まれた殺しの依頼は…。
/霧の七郎
客の金を持ち出し逃げた女。
五年後、別の生活をしている女の前に現れた男の狙いは…
/五年目の客
平蔵の妻の叔父から持ち込まれた秘密の依頼。
屋敷の男が金を持ち出し逃げ出したという。
屋敷を見張る平蔵の部下たち。
…という捜査物かと思ったら、一人の女を巡って三人の男の本性があらわになるというお話でした。
/密通
平蔵の女密偵おまさが捕えられた。
荒屋敷を見張る平蔵。
出てきた男、身のこなしに寸分の隙がない、相当の手練れどもだ。
おまさを救うため一人忍 -
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これまで、二代目中村吉右衛門さんが主役を演じるTVドラマが好きでよく見ていたのだが、去年の年末の特番でそれが終了し、それでは、と原作の小説を読もう、とこの夏ふと思い立って読み始めた。そうしたら、するすると止まらず、遅読の私が、珍しくあっという間に読み終えてしまいました。その出自と生い立ちから、市井の人々の心に通じ彼らの為す諸事に寛容でありながらも、若い頃に鍛えた剣の腕を心の奥底にある正義感から、いざという時には活かし苛烈に処断する。「赦すものは赦すが、赦さぬものは赦さぬ」、現代的ともいうべき江戸の町の中で、軍政の名残りを残す火付盗賊改方という武断的な治安組織の長官として、まさしくそういう心持