鈴木エイトのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ山上徹也
この名前を聞いて、誰か分からないと思った人にも「安倍元総理を銃撃した人物」、そう言えば伝わるだろうか。
2026年1月27日、山上被告に奈良地裁で検察の求刑通り無期懲役が確定した。現在は再審請求中である。
裁判官は判決の理由の一つをこう述べた。
世の中には被告人と同等やそれ以上に不遇な生い立ちを抱えながら逆境に耐え、自ら撥ね返して、自分の人生を築き、犯罪に及ばす生きている人も数多くいる。
被告人の生い立ち自体を大きく考慮すべきではない。
「アンビバレント」p214 求刑より
どの犯罪だって、犯罪を犯した人と似た境遇で犯罪を犯さない人はいる。
でも、統一教会がなければ、山上被告の母親が統一教会に入信していなければ、統一教会が多額の金銭を母親に寄付させていなければ、山上被告の父親が自殺していなければ、山上被告の兄が重い病気を患っていなければ、山上被告の兄が自殺していなければ、山上被告は今回のような犯罪を起こさなかったのではないか。
社会が放置していた統一教会の問題を、山上被告個人の問題としてしまってもいいのだろうか。という疑問が私の中には湧いている。
私が小学生の頃、母がある新興宗教に足を突っ込みかけた。
週に1度、家には信者(当時の母と同い年くらいで30代半ばの女性)がやって来て、勉強会のようなことが行われていた。私たち姉妹には子供用の本が配布され、母と一緒に教義を聞いていた。
私たち姉妹が、参加する、しない、の意思を確認されることはなく、母と一緒に聞くのが「当たり前」と言う空気がそこにはあって、私自身もそれが何かも分からず、新しいことが始まった新鮮さに少しワクワクしている部分があった。
しかし程なくして、母が急にその宗教を辞めると言って、週に1回の勉強会は無くなった。
当時のことを大人になって母に尋ねると「言ってることが矛盾していたから」と言っていた。
良いことを言っていると思って始めたけど、教義内容を知るにつれ、矛盾点に気がついたらしい。母のように意志が強く、途中で断れる人はそう多くはない。
そんな経緯もあって、私は山上被告が起こしたこの事件を、どこか他人事のようには思えずにいる。
著者の鈴木エイトさんは2002年から統一教会による組織的な偽装勧誘の阻止活動を始め、その実態を追ってきた。
エイトさんが山上被告本人に接見することができたのは、統一教会について長年 実態調査をし、山上被告からの信頼を得ていたからである。
そして、これから書く山上被告の重大なメッセージに気がつけた唯一の人物だと思われる。
読解力のある人であれば違和感を覚えるかもしれない言い回し。
でもメディアは素通りをし、その真意を汲み取ろうとはしなかった。
山上被告が第14回公判で述べたその内容は
「安倍元総理が亡くならなければならなかったのは、殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思っております」
もし、自分が殺害したことが間違いだと思っているのならば
「殺害したのは、間違いだったと思っております」
でいいはずだ。
山上被告は判決後の弁護士との接見でこう述べていた。
「安倍元首相を失ったことで国益を損なった。非常に大きな責任を感じています」
その言葉を聞いたエイトさんはこう考えた。
彼にとって安倍元総理は「亡くならなければならなかった」「殺害されなければならなかった」のであり、安倍元総理が統一教会と関係を持ったことを「間違いだった」と彼は法廷で述べたのではないか。
中略
自分自身を自虐的に<右翼>と呼称する彼にとって、安倍元総理の殺害は<国益>を損ねる行為である一方で、安倍氏が<亡くならなければならない><殺害されなければならない>行い、つまり統一教会と深い関係を持ち、韓鶴子を礼賛するという国益を損ねる行為をしたこと自体を<間違い>と表現した。
「アンビバレント」p249 山上被告との対話より
どのくらいの人が認識しているのかは分からないが、山上被告は安倍元総理の(熱心な)支持者であった(安倍元総理を殺害した当日、彼は安倍氏が応援演説をした佐藤啓候補と比例代表は自民党に投票していた)。
その安倍元総理が、自分が最も嫌悪感を抱く統一教会に礼賛するようなビデオメッセージを送っていた。それは統一教会が政治によって保護されているに等しい状況とも言える。
これを知った山上被告の心中はどんなだっただろう。
「安倍元総理が亡くならなければならなかったのは、殺害されなければならなかったのは、間違いだったと思っております」
多くのメディアではこの言葉を
「(山上被告が)安倍元総理を殺害したのは間違いだった」
と発言したという内容で報道された。
山上被告はこの言葉をダブルミーニングとして使っている。
鈴木エイトさんが気がついた「安倍元総理自身の間違い」と各メディアが伝えた通り「自分が殺害したことが間違い」。
どれだけの人がそのことに気がついただろう。
自分はいつも目にする言葉のうち、どのくらいの意味を正しく理解できているのだろう。と不安になった。
アンビバレント。
人は日常のいろいろな場面で相反する感情を同時に抱くことがある。
いや、常にそういう感情に翻弄されているのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
統一教会に徒手空拳で立ち向かい続けるジャーナリスト、鈴木エイトさんの戦いの記録。
安倍晋三襲撃事件を得て、本当にようやく日の目が見れた感じで、ここに至るまでの果てしない苦労と努力、そしてそういった中で得た言動の一貫性というものが本書からもグッと伝わってきた。
本書の読みどころは後半に集約されている気がする。
本書の中に「政治家は保身の為なら警察などあらゆる権力を使ってくる」とあるが、自分さえ良ければよい、霊感商法等の悪行に何にも思わずむしろ手を組む政治家...、一般人には強く出て権力者にはへりくだる(一部)警察官...、そういった奴らと戦う著者を今後とも注目しつつ応援していきたい。 -
Posted by ブクログ
私も宗教2世、いや、正確には3世です。
皆さんの体験談は、自分と重なるところも多く、改めて、自分もいろんなことを我慢してきたんだろうな、本当の自分を出すことができずに大人になったんだろうなと感じました。
せっかくなので、私の記録も(長くなりますが)ここに残します。
私は、父方の祖母、母方の祖父母が創価学会に入会し、父と母は子どもの頃から学会員で、学会活動の中で出会って結婚し、私が生まれました。
父母は地元でちょっと有名な活動家だったので、その長女である私も期待されていると(勝手に)感じていました。
小学生になる頃、母から勤行唱題を教わり、土日には未来部として会合や合唱団の活動に参加しました。
かなり真面目でいい子で、勤行唱題も活動も休むことはほとんどありませんでした。
思い出もあるし、活動を率いるお姉さんたちも優しかったし、そこで教わった宗教的な考えに、今でも救われると思うこともあります。
でも、土日に予定があることが多かったこと、特に中学になると休みの日でも制服で学会活動に行くので、友だちに会うと気まずかったこと、修学旅行では他宗のお祈りはできないということで、クラスメイトが参拝中、外で待っていたことなどが、苦い思い出として残っています。
活動したいとか、したくないとかの前に、自分が本当にしたいことというのは、小さい頃からよく分からず、全ての行動はやるべきことだからやる、という感じで、学会活動以外は、勉強ばかりしていました。
なので、成績もよかったです。
学会は関係ないですが、高校の時は留学もしました。
それも、母が話を持ってきたからで、私は「ああ、留学すればいいのね」と思ったことを覚えています。
その後、地方の大学に行き、転勤のある職に就いたので、各地の学会員にお世話になりました。
知らない土地でも、学会活動を通じて仲良くなれるのはありがたいことでした。
基本的に、いい人が多いので、引っ越しても安心ではありました。
けれど、結婚し、子育てをするようになって、母に子育ての相談をしたりする中で、違和感を感じるようになっていきました。
もともと生きづらさがありましたが、自分はアダルトチルドレンなのかもと思うようになり、最近ようやく、宗教を強いられたことも原因なのかなと思うようになりました。
そうはっきり思ったから、というわけではありませんが、少しずつ活動から距離を置くようになりました。
母も母でいろいろな思いから活動から距離を置くようになったようですが、それは、私には意外で、この本の中でもどなたかの体験にあったように、母は活動から離れないでほしかった、とも思います。
だって、私が創価学会から離れようと思ったのに、だって、母が信じていた学会活動で私が傷ついたのに、、、うまく言えませんが、ずるいというか、裏切られたというか、そんな気持ちがあります。
結局、母も流されていたのかな、と思うこともあります。
一方、父は生涯を学会活動に捧げたと言ってもいいほど、熱心な活動家でした。
父の大切な居場所であり、生き甲斐だったのだと思います。
欠点もある人だったとは思いますが、私は父のことが大好きで、だから、父が亡くなって、学会活動から離れた母のことが許せないのかもしれません。
父のことは二言もなく好きだと言える一方、母には複雑な思いがあり、ただ、宗教活動という面で言えば、父が母に与える影響も大きかったと思うので、私の思いは複雑です。
まだまだ抑圧していることがたくさんあるんだろうと思います。
でも、このような本のおかげで、少しずつ、私の中に閉じ込めたものも解放されるかもしれません。
そんな影響力のある本だと思います。 -
Posted by ブクログ
一貫して統一教会を取材して来た鈴木エイト氏の本作。恥ずかしながら、エイト氏の著作を初めて読ませていただきました。衝撃の事件から一年半、次々と政治家の不正も起こり、安倍晋三襲撃事件もヒトの口にのぼらなくなった今日この頃だが、改めて読んでみると、正直山上被告への同情を覚えます。ずいぶん前から、街頭での怪しい募金活動をしている団体、統一教会=勝共連合ということは知ってはいました。桜田淳子などの合同結婚式が大いに話題になったことも憶えています。エイト氏には引き続き頑張ってこの問題を追求して、世に知らしめて欲しいし、社会の関心が向け続けられ、世論の力で解散まで持っていって欲しいと思います。
暴力では解決しない、しかし、正直この事件がなければ、、、何も明るみには出なかったかも、と考えるとやりきれない思いです。