高瀬隼子のレビュー一覧
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ネタバレ*公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作*
とてもとても不思議な読後感。
「いい子」でいることの必要性や優位性は十分わかっているけど、「いい子」でいることの割に合わなさ、理不尽に摂取され、消費されることに対して疲れ果ててしまう気持ち…わかるなあ。
我慢の限界と静かな怒りがじわじわと沁みてくる様がリアル過ぎて痛い。
決してキレイなお話ではないけど、読んで -
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私の心の中の、
言語化できない“それ”が
はっきりと書かれていてぎくっとした。
女性の中の一つの期限。
それにとことん向き合う小説。
しばらく性行為をしていない恋人が他で子供を作ってきた。
許せるか許せないかを超えて、
その産まれてくる子をもらうか別れるか。
そんなことある?って内容。でもあるかも。
犬のが可愛い。本当にそう思う。
でも娘が子どもを産めば親が喜ぶかも。
そんなことで産めない。産み落として幸せな世界になるかなんて責任を取れない。
葛藤葛藤。
そんな感じの私の心を代弁してくれるようで
一気に読んだ。
答えはでなかったけど、お守りみたいな一冊。
私、このままでいいって思 -
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あらすじを見てずっと気になっていた本。
主人公の気持ちはわかるようでわかりたくない…と虚しさを感じて、読後は「うわぁ…なんだこの読み終わった後の感情…むずいぞ…」と呟いてた…笑
ただ、この手のお話は自分は好きで、話自体はアブノーマルなように感じるけれども、ふとノーマルな人間の理性について述べられる箇所があって、現実とリンクしてハッとする、本作はそういうイメージ。読んでいて苦しいときもあるけど、「それが人間だよね」って楽にさせてくれる時もある。
夫婦によってそれぞれの愛の形はあるんだろうし、というか愛があると信じながら生きていくんだろうし、本当に人と人が生きるって、第三者も絡んできて、難しいと -
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ネタバレ高瀬隼子さんの本はこれが初めて。もう好きです。
水上さんの解説で正常と逸脱というモチーフを挙げておられて、私も読みながら、その価値観の狭間で葛藤するシーンがしんどかったと思いました。
主人公は他者の弱さを許容できない人間なのだけど、私も主人公のような強さを一部持ち合わせて生まれてきた側だから、弱さを跳ね除けてしまいたくなる気持ちが少なからず理解できてしまってしんどい気持ちになった。
地方で他者からの視線に付き纏われながら生きてきた主人公は、東京という他者に無関心な街に出てきてもその性質を持ち合わせていて、夫の異常性を厳しく見てしまうところが、辛かった。
印象的だったのは主人公がほぼ放置の状態で -
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ネタバレお風呂に入らない
毎日の当たり前にすることを止めた旦那と妻の話。妻視点で描かれる本作。
お風呂に入らない理由もよく分からないがそれを責めずにじっと旦那側に寄り添い試行錯誤する妻がすごい。お風呂に入らなくなるのはうつ病の症状として有名だがお風呂入らないだけが変わったことでそれ以外は普段通りだから病院には行かずサポートに回る。雨を浴びたり川で体を洗ったりと理解に苦しむが愛した人だからこそ許容できるのかと考えさせられた。ラストは曖昧な表現ではあるが川に流され亡くなったのだと受け取った。解放されたとしても仕事や失った友人、一緒に生きていく覚悟はどこにぶつけたら良いのだろう。旦那は勝手に仕事をやめ、勝 -
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「いい子のあくび」周りからいい子だと思われている主人公が心の中で感じている黒い気持ちがキレキレで面白かった。歩きスマホしてくる人を避けずにぶつかっていくスタイル尖ってるなーと思った。望海と会う時は口悪く、自分に起きた出来事を面白おかしくして話すのに、圭さんと会う時は圭さんの人柄に合わせて健気な心優しい女の子を演じているところ、彼氏の大地にも彼氏での前の自分があってというところが少し極端だけど分かるなと思った。誰といる時の自分が一番好きなのかが大事なのかもと思った。
「お供え」会社のデスクの上で個性が出るところとか、描写が想像でき過ぎて面白かった。会社の創業者のフィギュアをデスクの上に置いて配ら -
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ネタバレ夫が「お風呂には入らないことにした」と言った。
妻は、先週、夫が全身ずぶ濡れで帰ってきた日のことを思い出す。会社の後輩が、酔った勢いで水をかけたらしい。
それ以来、夫は2Lのミネラルウォーターで頭と体を軽く流すだけになった。しかし、それさえもしだいに拒むようになり、最終的には大雨の日に外へ出て、全身で雨を浴びるようになった。
もちろん、石鹸も使わない。
お風呂に入らなくなって五ヶ月。夫の体からは、雨では洗い流せない汗と尿と垢が混じったような、形容しがたい悪臭が漂っていた。
妻は考える。
狂ってしまった夫を許したい。でも、許せない。
お風呂に入らないだけで、それは病気と言えるのだろうか?
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自由と権利の尊重が謳われる現代。そんな個人裁量の幅の広がった今に生きる人たちの恋愛模様を描いた「恋愛」短編集。
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送別会がお開きになり、水本は部屋の中を見て回っていた。忘れ物がないか確認するのは、いちばんペーペーの水本の仕事だ。
今夜は倉岡の送別会だった。倉岡は退職までの3ヶ月間、新入社員の水本への引き継ぎを兼ねて指導してくれた中堅社員である。
倉岡は明るく元気な体育会系らしい男だ。誰にでも気さくに接するし、面倒見もよい。それだけに距離の詰め方もうまく、水本はいつの間にか倉岡と男女の関係になっていた。
店の前で部長による一本締めの音頭と倉岡への花束贈呈があり -
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切ない恋やどうにもならない恋を経験すると、ひとつひとつの描写に敏感になる、その感覚を見事に呼び起こすような文章でした。短編集なので、さくさくと読み進められました。あと僕、とか私とかではなく客観的な書き方も好みです。
歳の差婚について、自分の場合、きっと、私に関係のない人たちがそれをするのであれば、当然自分の人生には全くもって関係ないので、どうぞお好きなように、と言える。だけど、自分が長く関係を築いてきた人、好きな人、魅力的に感じている人など、ある意味で性的な魅力を感じる相手であればあるほど、受け入れることは難しいのかもしれないなー、と。
歳の差について嫌悪感を感じるというより、その人の趣向