高瀬隼子のレビュー一覧

  • いい子のあくび

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    ネタバレ

    *公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作*

    とてもとても不思議な読後感。

    「いい子」でいることの必要性や優位性は十分わかっているけど、「いい子」でいることの割に合わなさ、理不尽に摂取され、消費されることに対して疲れ果ててしまう気持ち…わかるなあ。
    我慢の限界と静かな怒りがじわじわと沁みてくる様がリアル過ぎて痛い。

    決してキレイなお話ではないけど、読んで

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    2025年09月18日
  • 犬のかたちをしているもの

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    私の心の中の、
    言語化できない“それ”が
    はっきりと書かれていてぎくっとした。

    女性の中の一つの期限。
    それにとことん向き合う小説。

    しばらく性行為をしていない恋人が他で子供を作ってきた。
    許せるか許せないかを超えて、
    その産まれてくる子をもらうか別れるか。

    そんなことある?って内容。でもあるかも。

    犬のが可愛い。本当にそう思う。
    でも娘が子どもを産めば親が喜ぶかも。

    そんなことで産めない。産み落として幸せな世界になるかなんて責任を取れない。

    葛藤葛藤。
    そんな感じの私の心を代弁してくれるようで
    一気に読んだ。

    答えはでなかったけど、お守りみたいな一冊。
    私、このままでいいって思

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    2025年09月13日
  • 犬のかたちをしているもの

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    犬の話だと思って読み始めた。
    そうしたら、犬はあんまり出てこなくて、あまりにも私の頭の中を言語化したものがそこには書かれていた。

    薫も郁也もミナシロさんも、皆私だと思った。
    子供が欲しくて、でも可哀想だから産もうとは思えなくて、でも女として産んでみたいという願望はある。
    全員が全員を傷つけていて、痛くて、血なまぐさくて、可哀想なお話だと思った。絶対に手元に置いておいて何回も読み返したい本。

    好き嫌いが明確に分かれる本だと思うし、好き嫌い以前にこのお話を「理解できるか、受け入れられるか」というところからかなり分かれそうだなと思った。

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    2025年09月07日
  • いい子のあくび

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    相変わらず容赦のない火力で…ええ、もう、ほんとに…。罪とは言わない、でも善良とは言えない感情。わたしにも絶対心当たりがある。おかげでぐさりと横腹を刺された気分。現代的で生々しい心理描写はもはやちょっとグロくて変な笑い声が出る。善良なまま生きていけるわけがない。

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    2025年09月06日
  • 水たまりで息をする

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    あらすじを見てずっと気になっていた本。
    主人公の気持ちはわかるようでわかりたくない…と虚しさを感じて、読後は「うわぁ…なんだこの読み終わった後の感情…むずいぞ…」と呟いてた…笑
    ただ、この手のお話は自分は好きで、話自体はアブノーマルなように感じるけれども、ふとノーマルな人間の理性について述べられる箇所があって、現実とリンクしてハッとする、本作はそういうイメージ。読んでいて苦しいときもあるけど、「それが人間だよね」って楽にさせてくれる時もある。

    夫婦によってそれぞれの愛の形はあるんだろうし、というか愛があると信じながら生きていくんだろうし、本当に人と人が生きるって、第三者も絡んできて、難しいと

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    2025年09月05日
  • 水たまりで息をする

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    ネタバレ

    高瀬隼子さんの本はこれが初めて。もう好きです。
    水上さんの解説で正常と逸脱というモチーフを挙げておられて、私も読みながら、その価値観の狭間で葛藤するシーンがしんどかったと思いました。
    主人公は他者の弱さを許容できない人間なのだけど、私も主人公のような強さを一部持ち合わせて生まれてきた側だから、弱さを跳ね除けてしまいたくなる気持ちが少なからず理解できてしまってしんどい気持ちになった。
    地方で他者からの視線に付き纏われながら生きてきた主人公は、東京という他者に無関心な街に出てきてもその性質を持ち合わせていて、夫の異常性を厳しく見てしまうところが、辛かった。
    印象的だったのは主人公がほぼ放置の状態で

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    2025年08月31日
  • 犬のかたちをしているもの

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    学生時代に卵巣の手術を受け、それ以来性交渉に対して消極的になった薫。彼氏の郁也ともプラトニックな関係を保っているのだが……。
    すべてが私の好みでした。私も卵巣の手術を受けたことがあるので、薫には共感します。ミナシロさんのキャラが濃くて良い。

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    2025年08月29日
  • 水たまりで息をする

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    ネタバレ

    お風呂に入らない

    毎日の当たり前にすることを止めた旦那と妻の話。妻視点で描かれる本作。
    お風呂に入らない理由もよく分からないがそれを責めずにじっと旦那側に寄り添い試行錯誤する妻がすごい。お風呂に入らなくなるのはうつ病の症状として有名だがお風呂入らないだけが変わったことでそれ以外は普段通りだから病院には行かずサポートに回る。雨を浴びたり川で体を洗ったりと理解に苦しむが愛した人だからこそ許容できるのかと考えさせられた。ラストは曖昧な表現ではあるが川に流され亡くなったのだと受け取った。解放されたとしても仕事や失った友人、一緒に生きていく覚悟はどこにぶつけたら良いのだろう。旦那は勝手に仕事をやめ、勝

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    2025年08月26日
  • 新しい恋愛

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    恋愛にまつわる短編集。
    各作品に「こういう一文のために小説を読んでるんだ」と思うような文章があった。
    どの話も、ラストがよい。そこにたどり着くまではずっともやもやしたり行ったり来たりしている思考が、最後そうやって締めるのかという感じ。

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    2025年08月23日
  • いい子のあくび

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    「いい子のあくび」周りからいい子だと思われている主人公が心の中で感じている黒い気持ちがキレキレで面白かった。歩きスマホしてくる人を避けずにぶつかっていくスタイル尖ってるなーと思った。望海と会う時は口悪く、自分に起きた出来事を面白おかしくして話すのに、圭さんと会う時は圭さんの人柄に合わせて健気な心優しい女の子を演じているところ、彼氏の大地にも彼氏での前の自分があってというところが少し極端だけど分かるなと思った。誰といる時の自分が一番好きなのかが大事なのかもと思った。
    「お供え」会社のデスクの上で個性が出るところとか、描写が想像でき過ぎて面白かった。会社の創業者のフィギュアをデスクの上に置いて配ら

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    2025年08月17日
  • 新しい恋愛

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    それが自然の摂理というように、多くの人が誰かとつがいになって生きていくことを選ぶのに
    沢山の人がそれについて言葉を尽くして語ってきただろうに
    それでもなお"正解"が見つからないのが恋愛

    この本の中では、私自身が言葉にできなかったあれこれが腑に落ちるかたちで表現されていて
    私にとっては"正解"に近いものだったかもしれないけど、他の誰かにはまったく理解し得ないものかもしれなくて
    よくもわるくも「あてられた」(毒にあたるような意味で)と思った作品集だった

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    2025年08月03日
  • 新しい恋愛

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    抉らないで。

    日菜子さんはあちこちくたびれていて、それは悪口とかじゃなくて実際にそうで、だって人間の身体は老いていくから。津野の身体も同じように老いていっている。皺とかシミとか目に見えるものだけではなくて、隣の席から漂ってくるにおいも、やっぱり昔とは違う。お気に入りの香水は何年も変わらないけれど、その奥から漂う芯のにおいが、くさいのではなく歳を重ねて深まっている。

    (花束の夜/お返し/新しい恋愛/あしたの待ち合わせ/いくつも数える)

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    2025年07月30日
  • 犬のかたちをしているもの

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    怖かった。高瀬さんの作品に出てくる「図々しいことが受け入れられて当たり前」みたいな顔をした女が本当に怖い。

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    2025年07月29日
  • 犬のかたちをしているもの

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    うわぁっていう生々しい心理描写
    なんとなくモヤモヤ思っていることを全て言語化してくれている
    ミナシロさんみたいな人いるよなあって思うし自分もその要素あるよなあって思う
    このお話の諸悪の根源は愛されたい、愛したいっていう気持ちなんだろうなと思った
    そこまでプラスにもマイナスにも働く愛という感情?物質?って不思議だと思う
    ただそこのあるものに対してそれぞれがどのように反応するか、捉えるか次第ではあると思うけど、、
    それ自体は何も変わらないという。
    なのです捉え方次第で良い方向にすることは可能なんじゃないかなと思う

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    2025年07月25日
  • 新しい恋愛

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    ネタバレ

    色んな恋の形についての短編集。どの話もあまり共感できなかった。

    表題作は、登場人物の1人が実はソシオパスで倫理観がズレており、結末がホラーだった。と、書いていて認識したが、全編で倫理観は欠如してる人物は多いかも。その目線で読めば面白いかな。どちらにせよ共感できないが。

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    2025年07月09日
  • うるさいこの音の全部

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    評価低くて驚き、めちゃくちゃ面白いやろ…
    でも、主人公の属する社会の嫌な感じとか、理解できない登場人物とか、の要素が少なめで高瀬さんらしくない作品かもしれない

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    2025年05月03日
  • 水たまりで息をする

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    ネタバレ

    夫が「お風呂には入らないことにした」と言った。
    妻は、先週、夫が全身ずぶ濡れで帰ってきた日のことを思い出す。会社の後輩が、酔った勢いで水をかけたらしい。

    それ以来、夫は2Lのミネラルウォーターで頭と体を軽く流すだけになった。しかし、それさえもしだいに拒むようになり、最終的には大雨の日に外へ出て、全身で雨を浴びるようになった。
    もちろん、石鹸も使わない。
    お風呂に入らなくなって五ヶ月。夫の体からは、雨では洗い流せない汗と尿と垢が混じったような、形容しがたい悪臭が漂っていた。

    妻は考える。
    狂ってしまった夫を許したい。でも、許せない。
    お風呂に入らないだけで、それは病気と言えるのだろうか?

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    2025年09月09日
  • うるさいこの音の全部

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    面白かった。小説のなかのことが嘘か真実かあり得ないのか有りうるのか考えるときりがない。そのキリのなさにどんどん吸い込まれる感覚

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    2025年01月08日
  • 新しい恋愛

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     自由と権利の尊重が謳われる現代。そんな個人裁量の幅の広がった今に生きる人たちの恋愛模様を描いた「恋愛」短編集。
              ◇
     送別会がお開きになり、水本は部屋の中を見て回っていた。忘れ物がないか確認するのは、いちばんペーペーの水本の仕事だ。
     今夜は倉岡の送別会だった。倉岡は退職までの3ヶ月間、新入社員の水本への引き継ぎを兼ねて指導してくれた中堅社員である。

     倉岡は明るく元気な体育会系らしい男だ。誰にでも気さくに接するし、面倒見もよい。それだけに距離の詰め方もうまく、水本はいつの間にか倉岡と男女の関係になっていた。
     店の前で部長による一本締めの音頭と倉岡への花束贈呈があり

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    2024年12月15日
  • 新しい恋愛

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    切ない恋やどうにもならない恋を経験すると、ひとつひとつの描写に敏感になる、その感覚を見事に呼び起こすような文章でした。短編集なので、さくさくと読み進められました。あと僕、とか私とかではなく客観的な書き方も好みです。


    歳の差婚について、自分の場合、きっと、私に関係のない人たちがそれをするのであれば、当然自分の人生には全くもって関係ないので、どうぞお好きなように、と言える。だけど、自分が長く関係を築いてきた人、好きな人、魅力的に感じている人など、ある意味で性的な魅力を感じる相手であればあるほど、受け入れることは難しいのかもしれないなー、と。
    歳の差について嫌悪感を感じるというより、その人の趣向

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    2025年07月29日