高瀬隼子のレビュー一覧

  • 犬のかたちをしているもの

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    すばる文学賞。
    芥川賞を受賞した「おいしいご飯が食べられますように」が好きすぎたのでこちらも。

    人間模様の描写がすごい。
    彼氏が他の女性を妊娠させ、その子が産まれたら貰って欲しいと言われる。殴って断って別れて終わりのシチュエーションなのに、葛藤して気持ちが移り変わっていくのを見ていると、あり得るかも、と思わせられる。
    白と黒じゃない、女性にとってとても大きな結婚妊娠出産というテーマに対するグラデーションの心理が見事に表現されている。

    特に、ラストの複雑な心境の描写はすごい。

    最近の純文学には妊娠や生理やセックスの話が多い気がする。尖った内容にしやすいからだろうか。個人的には暗くなるから好

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    2025年08月11日
  • 犬のかたちをしているもの

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    ネタバレ

    たしかに人間の子供より犬ほうが絶対とてつもなく可愛い。ただ、まだ見ぬ我が子の可愛さは計り知れない。
    彼氏の浮気相手の作った子供を育てて欲しいとお願いされ、浮気相手と何度も会いやり取りを交わし、仕事や彼氏との日々をこなす中で子供を育てる決心をつけたが結局浮気相手は自分で産み育てると決める。彼氏に父親になって欲しいと浮気相手は頼んだが、彼氏は浮気相手と子供を選んだのか、私を選んだのかは明かされていない。

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    2025年08月08日
  • うるさいこの音の全部

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    高瀬隼子さんの小説家になるまでとなってからの周囲の反応に日々頭を悩ませる様子や小説家として生きていくと決意するまでが描かれている。その逡巡があって読んでいて共感できる部分があった。

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    2025年08月05日
  • 新しい恋愛

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    高瀬隼子さん初読みです。
    人に話すと軽蔑されるような本心を描いた作品でした。
    表題作の『新しい恋愛』で、主人公の知星が「ロマンチックは、いらない」という思いに関して、恋人の遥矢に対して醒めたのではなく、情だけが残り、だからこそときめくような言葉や行動に違和感を覚えてしまうところに「なんかわかる」感を感じました。
    どの作品も少しゾワリとするような読み心地でとても面白かったです。

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    2025年08月03日
  • 犬のかたちをしているもの

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    ネタバレ

    自分が女性だったらまた受け取り方が変わるのだろうかと感じた作品。
    私自身、著者と出身が非常に近く、同じく上京して生活しているため、故郷で感じる漠然とした閉塞感やそれでも変わらない家族への感情、変わってしまうことへのやるせなさなど読んでいて苦しい部分もあったがそれもこの著者に望むものでもある。

    この作品の終わらせ方については確かにその後どうなったのかなどのモヤモヤとした感情も少なからずあるが、
    『小説を終わらせる作者の手つきというものはどんな場合でも邪魔に感じられるものなのだ。』
    という奥泉光さんの解説は非常に秀逸であると感じた。

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    2025年07月29日
  • うるさいこの音の全部

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    【読まれたいのに「わたし」を知られたくないなどというのはずるいのだろうか】
    小説家デビューし、テレビに出演したことで、周りの世界が一変する。自分の知らないところで、不特定多数の人間が自分の事を話題にする気味悪さは計り知れない。たとえポジティブな内容だとしてもどこか気持ち悪く鬱陶しい。それは鳴り響いて止まることのない騒音、まるでゲームセンターに閉じ込められているみたいに。読後、以前とある芸名を使用する女優さんが「本当の自分と芸名の自分と演じている役の境目がわからなくなる」と言っていたのを、ふと思い出した。

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    2025年07月28日
  • 新しい恋愛

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    あれっ?普通に恋愛が核となる小説じゃん!
    と思ったのは、著者の芥川賞受賞作品である「おいしいごはんが食べられますように」から独特な話である印象があり、ギャップを感じたからです。
    短編にちょうど良く纏められており、丁寧に人物の心情が描かれているため、頭に入ってきやすく、心地よいリズムで話に没頭できた。
    100%綺麗とは言えないところが人間味があってリアリティがあって良い。

    と思ったが、後半から急にアクが強くなる。やはり、著者の芥川賞受賞作品が過ぎりました。
    私としては前半の話が好きだけれど、後半の話も嫌いではなく、とても楽しめました。

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    2025年07月25日
  • 新しい恋愛

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    5つの「恋」を描いた短編集。恋愛小説と呼ばれるものはあまり得意じゃないのだけれど、それとは違う、恋の話なのだなと。共感するのはなかなか難しいかも。
    「お返し」が1番好みだったかな。毎年バレンタインのチョコをくれる幼馴染。それだけで、特別仲が良かったわけでも、元恋人でもない。それなのに大人になって別の人と結婚しても覚えてるって確かにすごい。ずっと私のことを忘れられないだろうっていうダメ押しっていう奥さんの解釈がなるほどと思った。
    それぞれ人には人の、恋のかたちがあるんだろうな。

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    2025年07月12日
  • 犬のかたちをしているもの

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    犬好き、本をフィーリングで選ぶわたし。
    タイトルに惹かれて読みました。

    セックス/子供/家族/愛について女性視点の「問い」が書かれている。
    女性視点といえど、一辺倒ではなくさまざまな感じ方や、考え方があることを2人の女性を通して表現しているのが良かった。

    子供を育てる気がなかったミナシロさんが最終的に親権を求めたのは予想通りだったし、犬に対しての愛情と人に対しての愛情の違いは何か考えるなど、自分でも経験のある内容。なるほど、というよりも「分かる」の連続で強制的に自分と向き合わされる。

    新しい何かを得るというよりは、アラサー子なしの自分が知りうる感覚を言語化されたような小説だった。

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    2025年07月09日
  • 新しい恋愛

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    ネタバレ

    高瀬隼子が描く『新しい恋愛』なら、よっぽど変なもののはず! と期待して読んだので、若干の拍子抜け感があった。でも、次のところが好きだった。

    41ページ
    自分が好きだと思った人の、仕事上の他者評価を耳にして、それは自分が直接感じていることではないのに、「そう思っている」他者がいる事実だけで、ほんのり、またほんのり、好きが削られていく。

    100ページ
    遥矢のパソコンの小さな画面で映画を見る時、映画館で一人で見る時よりもわたしは泣いた。あの頃はそれを、彼の前では素直な自分でいられる、みたいに思っていたのだけれど、はたして、我慢できる涙まで流す必要があっただろうか。

    つくづく、見てほしくないとこ

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    2025年07月03日
  • うるさいこの音の全部

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    自分の心がわからず、他人の目ばかり気になって、ウケようとして嘘に嘘を塗り重ねたり近所の外国人店員にちょっかいかけたりする主人公のこと、読んでて呆れつつもなんかちょっと分かるなとも思う。普通に会話をしていたのに主人公の中学校時代からの友人(名前を忘れた)の機嫌を急に損ねてしまうところがめちゃくちゃ怖かった。

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    2025年06月23日
  • うるさいこの音の全部

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    どっちの世界の話か分かんなくなってしまった場面がありました、、、読解力鍛えます。
    作家さんのお話興味深かったです。作家の自分と本当の自分と区別がつかなくなってしまうなんて一般人の私は共感はできるはずがないのですが、うんうんとなっていました。ゲームセンターに死人が集まってるところとかサービスエリアで連絡取れなくなってしまうところとか自分で想像しながら解像度高く読めてすごく楽しかったです。

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    2025年06月14日
  • 犬のかたちをしているもの

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    私は浅い考えで子供は可愛いからという理由だけで欲しいと思っていましたが、これを読んで女性は産むだけでなくてそれまでも色々節制したり精神状態も不安定になったりするのを改めて知って男性に比べたら「割に合わない」って言ってたのめちゃ分かったし、実際に産んでしまうと子供嫌いとか関係なく、育てたいって思うのは産んだ人にしか分からないなーと思った。
    大学で働いてる人達の話のとこでああやって大学生に対して親みたいに見てくれてるの凄くいいな。

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    2025年06月14日
  • うるさいこの音の全部

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     高瀬隼子さんといえば、現代社会に於けるリアルすぎる程にネチネチとした人間模様や、特殊な設定にしてまでも訴えたい多様性のあり方と、主にこの二つが主要なのではないかと私が思う中、本書はどちらも満遍なく取り入れた意欲作で、これは内容とは裏腹にとても気合いの入った作品なのではないかと感じたのも、私にはまるで高瀬さんが何かと闘っているような印象を受けたからなのだが、その物語は、お世辞にも人間の可能性や素晴らしさを謳ったものではない、寧ろ、その真逆に近いものである点に、また彼女の反抗心を見たような思いがしたのである。

     ゲームセンターで働く小説家「朝陽」の物語は、この設定を見るだけでも特殊性が高いよう

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    2025年05月23日
  • うるさいこの音の全部

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    主人公の思考や性格がリアルでちょっとしんどくなる部分もあった。最初の方が面白くて一気に読み進めれた。

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    2025年05月11日
  • うるさいこの音の全部

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    高瀬隼子さんの作品は三冊目。
    この方の本は、何かを学ぶというより人間や世間のあるあるという感じかも。
    職場の人の無駄に盛り上がってる感じとか、田舎の母親の近所付き合いとか世間が狭い感じ、勝手に作り上げたインタビューに対して勝手に自分のことだと思い込んでる人とか、読書好きだけど作家背景には興味なかったはずの友人の結婚式でスピーチさせられる感じも。
    作家さんもだけど表舞台に立つ人って自分が何を求められているか考えすぎてそのための軽い嘘が重なることってあるあるそう。
    表舞台に立ってなくても日常で周りに求められているものとか周りからの評価を気にしすぎると自分の足が浮いてる感じもするし。
    学生時代の4人

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    2025年05月06日
  • うるさいこの音の全部

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    変な前評判なくこのお話を読めたのはかなり幸運だったかも。

    世の中にあることに対して、そのまま受け止められる人と、何も意図を持ってない誰かの行動をずーっとぐずぐず考えてぐるぐる人がいるとして、私は後者なんだけど、朝陽と高瀬さんはそういうタイプなんだろなと。

    人から見たらなんとも思わない当たり前のことを一生1人で考える。なんでなんだろ、って思うし、自分がどう見られてるのかと気になってしょうがない自意識の塊。誰にも見られてないのに。

    嫌な意味で共感できて結構心地よかった。

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    2025年04月22日
  • 犬のかたちをしているもの

    QM

    ネタバレ 購入済み

    タイトルの「犬のかたちをしているもの」、これは主人公の愛の形なのかなぁ。話の主旨とは違うかもしれないけどミナシロさん最後ちゃんと離婚してくれたのかしら、そこだけめっちゃ気になる。

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    2024年09月19日
  • 水たまりで息をする

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    描かれるのは夫婦の壊れていく日常。

    夫婦とも受け身で、できることと言えば環境を受け入れることだけ。
    夫は水の代わりに雨水を、妻は生活できなくなった都会と仕事に代えて引越しを。
    どちらも積極的な取捨選択や強い寄り添い意思もなく、ただ淡々と追い込まれ消極的に判断し受け入れる。

    二人は一緒だが、でも蔑ろにされていることに気付きつつ平気なふりをして生きていける妻と、そうできずにどうしようもなく壊れていく夫。
    その違いが無性に悲しかった。

    結末は明確に描かれないものの、救われた訳ではないその結末すら、妻は淡々と受け入れ、生活を続けていくのだろう。
    台風に拾った魚のように。

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    2025年08月13日
  • いい子のあくび

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    「あたりまえの日常」を過ごしながら、その「あたりまえ」に違和感を感じ、いらつき、傷ついている人たちの物語。繊細で考えすぎてしまう人たちにとって、いまの社会は生きにくい。

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    2025年12月07日