高瀬隼子のレビュー一覧
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確とした輪郭を持たない感情。
愛だか恋だか欲だか気の迷いだか分からないものを掬い出した物語。
思い起こせば、そのうちのどれかだったんだろうなあとは思うのかも。
私は今年56歳になりました。
愛だか恋だか欲だか気の迷いだか。
が、あんまり体のなかから湧き上がらない予感がします。残念ながら。
ところで。
「いくつも数える」
歳の差のある関係への違和感。
いろいろある「差別的な感情」の中で、男性高年齢者に対する差別を、少し相対的に扱っていることに筆者のバランス感覚を感じた。
進歩的であることと、現代的であること。
それは決して、生きやすい、より優れた社会になることと同義ではないのだろうと思う。 -
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後味悪さにゾクゾクします!
いい意味で!
小説を読むようになってからと言うもの、
好きなジャンルは優しい物語だったり、
再生の物語だったり、少しの悲恋が混ざる恋愛小説や、
歴史小説、ミステリーなど。
人に薦められたものはどんどん読んでいきたいし
少しでも自分の中の選ぶ選択肢を増やしたいと思っています。
遅咲きの読書家であるが故、
まだまだ知らないものの多さに心が躍る日々ですが、
高瀬隼子さんの「おいしいごはんが食べられますように」
は、
いやー人間関係って本当に嫌だなー、と素直に思わせる一方で、
小説としての読み応えに読む楽しさを味わえるものでありました。
読み手の心情をこんなにも抉ってく -
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学生時代に卵巣の手術をしてから、性行為に消極的な薫。彼女の恋人で薫の事情を受け入れて性行為なしの半同棲をしている郁也。しかし郁也は、お金を払って知人のミナシロさんと性行為をした結果ミナシロさんは妊娠。ミナシロさんも郁也をお金の関係と思っていて堕胎したくないけど育児もしたくないからと、薫に「あげる」ことにする。薫はその提案に対して悩み…
というお話。すばる文学賞受賞作。タイトルは、子どもよりも飼っていた犬のほうがかわいいと感じる薫の心情。婚姻とか出産とか、地方出身の薫にとっては重荷となる人生の選択よりも、単純に飼っていた犬への愛が勝るという。この薫は家族のことも愛していて、でも子どもについては -
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ネタバレこれまでの高瀬先生作品で一番癖を感じず読みやすかったなと振り返ってみると、いややっぱり特殊めな設定だなとも感じる。
ラストの歳の差婚の話は、自身もそう言われる歳の差の夫がいるので、あまり他人事には思えず。
気持ち悪いって思うのもわかるし、でも私たちは歳の差の部分じゃない所に重きをおいて結婚してるんだよ、というかじゃないと幾ら若くてもこの妻は扱いにくすぎるだろと思う。
若い子がいいという世の中の風習?が広まりすぎてるからこそ逃れられない呪縛だよな。歳なんて所詮数字で、その歳になるまでどれだけのものを積み重ねてきたかはその人次第なのに、インパクトが強いからそれだけで物事が語れてしまう。
表題作 -
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ネタバレ「おいしいごはんが食べられますように」の高瀬隼子さんらしい、恋愛短編集なのにぞくぞくもやりとさせる現実的な描写が面白かった。
結婚はしたいけどプロポーズはされたくない気持ちの奥にある欲望とか、歳の差恋愛に対する反射反応とか。身近にありそうでない、なさそうである状況なんだろうなあ。
恋バナは万国共通だけど誰も自分以外の恋愛を本当に知ることはできないんよね。人から聞く恋バナ以上に、この本の5つの恋愛は登場人物の恋愛を深く知ってしまった感覚になった。
やーーこの人の本いつも感じたことを言葉にするのが難しい。
あと、他人で関係ないのだから気にしなかったらいいのに勝手に嫌悪してしまったりこれはひどく -
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ネタバレ「花束の夜」ひそかにつきあっていた先輩社員が退職。その送別会の夜に…。
飲み会終わりの空気感の描写がすごい既視感あり過ぎて面白かった。ようやく帰れると並んだ顔のうちのいくつかが正直に言っているっていう文章好き。
「お返し」バレンタインデーに渡されたのは、チョコレートだけではないかもしれない。
好きだった人の記憶に十何年と経っても残り続けることができるのは確かに一番のお返しかもと思った。
「新しい恋愛」プロポーズされたくない25歳の私と、まっすぐに恋愛を語る中学生の姪の2日間の物語。ロマンチックな言葉でプロポーズされたくないけど結婚はしたい主人公はちょっとワガママと思った。言葉に責任をとって -
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すばる文学賞。
芥川賞を受賞した「おいしいご飯が食べられますように」が好きすぎたのでこちらも。
人間模様の描写がすごい。
彼氏が他の女性を妊娠させ、その子が産まれたら貰って欲しいと言われる。殴って断って別れて終わりのシチュエーションなのに、葛藤して気持ちが移り変わっていくのを見ていると、あり得るかも、と思わせられる。
白と黒じゃない、女性にとってとても大きな結婚妊娠出産というテーマに対するグラデーションの心理が見事に表現されている。
特に、ラストの複雑な心境の描写はすごい。
最近の純文学には妊娠や生理やセックスの話が多い気がする。尖った内容にしやすいからだろうか。個人的には暗くなるから好 -
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ネタバレ自分が女性だったらまた受け取り方が変わるのだろうかと感じた作品。
私自身、著者と出身が非常に近く、同じく上京して生活しているため、故郷で感じる漠然とした閉塞感やそれでも変わらない家族への感情、変わってしまうことへのやるせなさなど読んでいて苦しい部分もあったがそれもこの著者に望むものでもある。
この作品の終わらせ方については確かにその後どうなったのかなどのモヤモヤとした感情も少なからずあるが、
『小説を終わらせる作者の手つきというものはどんな場合でも邪魔に感じられるものなのだ。』
という奥泉光さんの解説は非常に秀逸であると感じた。 -
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犬好き、本をフィーリングで選ぶわたし。
タイトルに惹かれて読みました。
セックス/子供/家族/愛について女性視点の「問い」が書かれている。
女性視点といえど、一辺倒ではなくさまざまな感じ方や、考え方があることを2人の女性を通して表現しているのが良かった。
子供を育てる気がなかったミナシロさんが最終的に親権を求めたのは予想通りだったし、犬に対しての愛情と人に対しての愛情の違いは何か考えるなど、自分でも経験のある内容。なるほど、というよりも「分かる」の連続で強制的に自分と向き合わされる。
新しい何かを得るというよりは、アラサー子なしの自分が知りうる感覚を言語化されたような小説だった。
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高瀬隼子さんといえば、現代社会に於けるリアルすぎる程にネチネチとした人間模様や、特殊な設定にしてまでも訴えたい多様性のあり方と、主にこの二つが主要なのではないかと私が思う中、本書はどちらも満遍なく取り入れた意欲作で、これは内容とは裏腹にとても気合いの入った作品なのではないかと感じたのも、私にはまるで高瀬さんが何かと闘っているような印象を受けたからなのだが、その物語は、お世辞にも人間の可能性や素晴らしさを謳ったものではない、寧ろ、その真逆に近いものである点に、また彼女の反抗心を見たような思いがしたのである。
ゲームセンターで働く小説家「朝陽」の物語は、この設定を見るだけでも特殊性が高いよう