高瀬隼子のレビュー一覧
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芥川賞を受賞して華やかに作家デビューするはずが、自分以外の人があれよあれよと変化していき巻き込まれていく。変化があったのは自分のはずなのに、周囲が変わってしまったように感じられる。手の平を返したかのように態度を変える人もいれば勝手に期待して勝手に失望して勝手に離れていく人もいて、その渦の中で苦しい表情を見せないようにして何とか息継ぎしている感じ。頭の中の自分と作家の自分とが同時に存在して本当の自分が分からなくなる感覚の描写がリアルで、劇中劇みたいに「これも高瀬さんの体験談かも…」というメタ視点になってみたりした。
高瀬隼子さんの作品の中でも特に好きかもしれない。 -
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ネタバレ読後に思ったのは、【この話好きだなぁ】だった。タイトルからは、ほっこり系を思わせられたが、全然違うし、「現実ってこうだよね!」「こういう人いるよね!」と思いつつ、「あれ?自分はこの中だったらどの人物に当たるんだ?」なんて考えたりもして面白かった。
一穂さんの解説を読むと、さらに頷けた。
しかし、二谷の【食】に対しての考えは、【食】に恨みがあるのか?と思わせるものがある。【食】の在り方は個人でバラバラでいいのに、強制されるのが嫌なのだろうか?【食】ぐらい弱い立場でいさせて欲しいという心の現れか?
芦川さんをよりモンスターに仕立てたのは藤さんと原田さんだと思う。ああいった人たちが1番やっかい。持ち -
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ごはんほっこりストーリーでないことを知った上で読むことができた。そうであると知らなかったら、読むことはなかったかもしれない為、知れて良かったと思う。
芦川さんのことがすごく苦手。自分が弱い存在であることを自覚しながら、その権利を堂々と振りかざす姿。更には、罪滅ぼしのようにお菓子を皆に振る舞う。仕事を早めに切り上げた時間を使って作ったものを。同様に、彼女に対してそうするのが正しいと言わんばかりに作られる会社の雰囲気も苦手。ただ、自分も同じ場に居合わせると雰囲気に合わせ、適当な行動をとってしまいそうで嫌になる。社会に適応するというのはこういった行動に違和感を持たないようにすることなのかと少し嫌な気 -
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うわあこんな職場やりづらいな。
誰が悪いとかって言うよりはそれぞれの価値観って言うか、ちょっと立場弱かったり能力低い人を前にしたときどんな風な扱いをするのか、たしかに「嫌い」というのはなんか違う、でも苦手。できれば関わりたくない。
芦川さんはまさしくそんな感じの人。
私がもし同じ職場にいたらサッとお菓子を受け取ってそれ以上も以下もないような関係性を維持できるように努めちゃうかもしれない。
平均より少しデキが悪い人、それを理解して先回りして守ろうとする周りの空気、そのしわ寄せが他の人にいくところとか、なんて描写がリアルなんだろう。読んでてもどかしい、こんなにむず痒くなるような書き方、すごい。
あ -
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みんな一癖あってまともな恋愛できないのも肯定できる気がした。
【花束の夜】
自信が無いと自信がある人に好意を持つし、振り回されるんだなって思った。花束いいな。
【お返し】
思春期の小さな思い出はずっと心に残るのかと思った。
【新しい恋愛】
マッチングアプリをやってても心が動かされないのに現実では割とすぐ動かされるから新しい恋愛に共感した。この人と現実で会ってたら好きだったろうなって人もアプリにはいる、僕はロマンチックに自然な出会いから恋愛したいと思った。
【あしたの待ち合わせ】
好きじゃない人からの好意は高揚感より安心感なのかな。実らない片想いはずっと心に残る感じもある。
【いくつも数える】
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ネタバレ◾️record memo
駅や街中で人にぶつかられることがあると話した時、大地は信じられないという顔をして、実際に疑っているような声色で「おれ、ぶつかられたことないよ」と言った。何言っているんだろうこの人、と思った。大地は中学から大学卒業までバレーボールをしていたという。百八十センチ以上ある身長、腕にも足にも筋肉がそれと見てわかるようについている体。そんなものに誰もぶつかりに行くわけがない。と、そこまで考えて、なんだわたしやっぱりこいつならいいやって選別されてぶつかられてたんだな、と今更のように気付いたのだった。分かっていたけど、分かっていないことにしていたような。それで、わたしもよけるの -
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恋愛小説として素晴らしいと思います。
私が思うに一般的に読み物は、しばしば起承転結に進みます。しかし恋愛小説にはその形にハマらないこともあり、この作品もまた、感情移入できる感情の情景や登場人物達の関係性を次第に読み解いていくことを基礎として、先の読めない不安定さと、それとは逆にその不安定さをバランスよく紡がれていく様が読み取れます。そして登場人物達がそれぞれ衝動を駆り立てられる様がこの作品には描かれています。
もちろん、人それぞれなのでどうしてそんな選択をしてしまったのだろう。と、思わせる登場人物もいますが、それも“恋愛”らしさとして私の中では落とし所についています。
新しい恋愛。とは、誰 -
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私は共感の嵐だった。
普段心の中にどろどろと溜まっていく“言えないこと”を言語化してもらったような気分。
表題作の彼女は私だ。
「ぶつかったる」って思うしこっちばかりがいつも避けて「割に合わない」と思う。
歩きスマホをすれば、前を見てなければ、みんなお前を避けてくれると思うな、甘えんな、期待すんなよって思う。
来世は絶対高身長で体格のいい強面の男に生まれ変わりたい。
女ってだけで舐められて、ぶつかられて、舌打ちされて、そんな思いばかり。
このどうしようもない感情を分かってもらえたような嬉しさと同時に、醜い自分を見せられたような感覚。
時々、芯の突いた言葉で刺してくる鋭さ。
彼女は私だ、また読み