高瀬隼子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
何だったんだろう
2人の平和を祈る気持ちには、
強制を求める気持ちには、
何があったんだろう
『"ひとりで大丈夫"なんて言わないで』
とてもはるかに強い言葉だと思ったのに
最後まで彼女の核となる部分がわからなかった
分からなかったのはきっと彼女も分かっていないからなのかな
昔、思いつきで熱帯魚を飼ったことがあった
なかなかに面倒で、でもいろいろ工夫しながら調べながら環境をつくっていったけど、何匹か死んだ。
死んだ魚を近くの公園に埋めようかと思ったけど、これって不法投棄だよなと思って、結局キッチンペーパーに包んでゴミ箱に捨てた。
ホームセンターに行けば熱帯魚は安くで売ってて、また買い足してを繰り返していたけど、次第に餌やりが2日に1回、3日に1回になり、水槽も汚れていき、中で熱帯魚が泳いでるかどうかも分からなくなっていた。
そして最後の一匹が死んで、水槽を綺麗に洗って砂利とかは適当に処理して、片付けた。
そのとき、なぜかホッとしたのだった。
飼いながら、捨てた。
生きたままを捨てるのは倫理的にどうかと思い(己を見つめる己の視線に見つからないように)飼い続けたけど、核の核は"どうでもよかった"のかもしれない。
彼女の話でも。
愛と倫理はよく似ていて、よく分からなくなるね
みんな愛だの思いやりだの言い過ぎて、それがスタンダードになっちゃって、もはやそれがないのが異常だと見られてしまって、あの人は倫理的におかしいと思われちゃって、だからそう見られないように取り繕って、もはや自分に対しても取り繕って、自分自身でも本音が分からなくなって、残るのは空虚。
そもそも愛は永きの土壌に芽生えるものであって、
ふとやってきた余所者が摘み取れるものではない。
こんな空虚でも残酷でも、生きてしまえる。
生きてしまえる器用さがある。強さを持っている。
だから多分逃げても逃げなくても生きてしまえる。
しかし生きる強さを持たない人もいる。
そんな弱い人間が許せない。
逃げたその先に生温い再生があって美談にしてしまう弱さが許せない。
逃げてもいい。
だけど逃げた先でちゃんと血を流してほしい。
彼女は、幸せの象徴みたいな古い民家での田舎生活の中でそう思ったのかもしれない。
でもきっと彼自身も苦しかったはず。
後輩に水を浴びせられてからずっと苦しかったと思う。
彼女視点でしか物語は語られなかったけど、彼の優しい性格からすると、あえてその苦しさを彼女に見せなかったともいえる。
それが誤解の悲劇を生むのだから、本当どうにもならなくて救いがない。
せめて、助けてって言えたなら。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ解説にもあったが、とても不思議な恋愛小説だと感じた。
「他人の評価を聞いて自分にとっての好きな人の評価が揺らいでしまう女性」「かつてバレンタインを毎年渡してくれるだけの女性が頭に残る男性」「ロマンチックな愛の言葉によって感情が自らの手を離れることを恐れる女性」「一方的な好意をぶつける危険ではないが迷惑な男性を手放したくはない女性」「歳の差婚が発覚した上司への尊敬が冷めるのを感じながらも自らも歳下の女性との将来を考える男性」
人間は群れの中で孤立しないよう社会性を身につけ、同時に優れた遺伝子を持つ相手と交配し自らの遺伝子を残すように進化してきた。だから恋愛は周りの目を気にしながらビクビクしながらも、同時に異性の重力に惹かれていってしまうことが起きる。
異性として魅力を感じなかった相手には、恋愛関係を拒絶しつつも社会から阻害されないよう、形式だけの情けをかけることもある。それをしなかったことに自意識が罪悪感を覚えることもある。
興味のない異性のアプローチは嫌悪感を覚えることもあれば、危険性が低いと認知している状況では気持ちを弄ぶことを楽しむことさえある。
矛盾に満ちた恋愛の中のもやもやしたものを、つぶさに観察きて細やかに描いているからこそ、ページを次々とめくってしまうような小説。
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Posted by ブクログ
DARMA GRAND PRIXみたいに
世間を思いっきり皮肉っている小説。
相手の女性は責任や重圧に弱く、すぐに体調を崩す。なんらかの理由をつけて会社を休み、1人だけ残業もしない。さらに申し訳なさそうに手作りお菓子を持ってきて周りに理解されようと努めている。
この無性にイライラする女には既視感がある人も多いのではないだろうか。いじめてしまいたくなるような人に。主人公の男は彼女の作ったケーキをぐちゃぐちゃにして彼女のテーブルに置く。それほど彼女を理解できていない。
にもかかわらずこの2人は付き合う。その矛盾を完全に否定できないことがもどかしくてしょうがない。
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Posted by ブクログ
★5以上。読んで良かった。サクサク読めるし共感多め。
いい子、真面目な人ほど疲弊する。(いい子、真面目を演じている人も含め)
印象的なシーンはP45前後、P65前後、P128前後。
「自分の中には心が二つあるのだと思う。裏と表という単純なものではなくて」
「心はどうしてこんなにばらばらなんだろう」
「一定期間の接近と離反の繰り返し」
「他人に興味を持って話を聞く方法が分からない」
「いい子の反対は悪い子じゃない、やな子だ」などなど。
警察官の言葉も印象的でした。
お供えも、末永い幸せもおもしろかった。高瀬さんは人間のうわべじゃない感情を捉え表現するのが上手なんだな。他のも読んでみようと思った。 -
Posted by ブクログ
収録されている3篇とも分かり味が深すぎた。
「いい子」であることが当たり前で、それが正しいことだと信じて生きてきたけれど、社会で生きていると割に合わないことが多すぎる。私が正しいはずなのに、ちゃんとしているはずなのに、なんでちゃんとしていない人の方がいい思いをすることが多いのだろう、と心のどこかで常に感じていたことがこの小説を読んでぶあっと一気に思い起こされたような感覚。
表題作もとても良かったけれど、個人的には「末永い幸せ」がとても良かった。私自身友人や親族の結婚式に出るたびに増幅していたイライラやモヤモヤとした思いや、友人から結婚式にお誘いが来るたびに湧く「へーこの子も結婚式あげるんだー」という自分の結婚式というものに対する冷笑的な感性をすべて言葉にした上で、さらにもう2段くらい上を行っているような表現の嵐に、正直言って心酔した。