高瀬隼子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ小説家デビューしたばかりの主人公を描いた「うるさいこの音の全部」と、その主人公が芥川賞を受賞したその後を描いた「明日、ここは静か」の2作が入っている本。
高瀬さんの本大好き。
好きなポイントは、登場人物の心の機微が、本当に細かいところまで描かれているところ。
特に、ネガティブな感情とか、嫌なやつに対してそれが発揮されている気がする。
たとえば主人公がうじうじ余計なことまで考えすぎてしまうところとか、友達が約束に絶対遅刻してくるところとか、主人公がインタビューで嘘つきまくってもう戻れないところまできちゃってるところとか。
ひとつひとつのシーンはそこまでダメージ大きくないけど、小さな小さなトゲの -
Posted by ブクログ
心が踊るような読書ではなかったけど、作家と作品の関係性について考えさせられて面白かった!!やっぱ読者はどうしても作品自体が作者の思考だって思いがちだけど、勿論そういう部分はあると思うけど全部が全部そうだって決めつけて考えるのは辞めた方がいいな。海外で太宰治とか村上春樹が女性軽視した思考を持ってるって非難されてるのも、作品の中の思考や言動が実際に作者が思っていることややりたいことだって信じちゃってるからだろうな。この本が高瀬さんの実体験かどうかは分からないけど、作家ならではの苦悩をよく表していて、同じ人間なんだなって親近感が湧いた。もっと好きになった。
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Posted by ブクログ
突然、風呂に入らなくなった夫。
「風呂に入らない」という行為だけ見ると、大したことではないというか大袈裟なことでもないけど、社会や日常の中にある"当たり前"をしない(出来ない?)ことの異常性みたいなものを感じた。たったそれだけのことで、いわゆる"普通"からは大きく離脱してしまう。
夫がそんな状態になっても妻・衣津実は割と落ち着いていて、そうなったことの原因や、何かの病気ではないのか?ということは案じながらも、あまり深くまで踏み込んだりはしなかった。「それって冷たくないか?」と感じることすらあるが、そもそもこの夫婦の関係はドライというか合理的というか、む -
購入済み
小説の読書体験として最も興奮する瞬間は、登場人物と融合したときだと思う。著者が主人公とする人物はいつもなにかしら「呪い」のようなものを持っていて、一見するとマイノリティ側に見える。けれど、主人公と融合した人間が著者以外に、少なくともここにもうひとりいる。それならば他にもいるのではないかと、そう思えるだけで少しほっとする。